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ゼロの創世記  作者: hayabusa_zero
第2章 反省会と祝勝会 ~ラクター到着編~
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14.反省会と祝勝会

「……だから簡潔に言うと、今回のような大規模な作戦行動では個人の勝手な行動が周りに迷惑をかける。それは作戦の失敗につながるし、犠牲を増やすことにもなる。…分かった?」

「「はい……」」

 治療院で怪我の手当てを受け、ベッドで休んでいる僕はリーシェと共にシイから説教を受けていた。集団での掃討作戦は初めてだったとはいえ、勝手な行動で迷惑をかけてしまったなと反省していると、扉をノックしてアスタロットが部屋に入ってきた。

「怪我の具合はどうだい?」

「アスタロットさん……すみませんでした、迷惑をかけて…」

「あぁ、確かに君たちの行ったことは命令違反かもしれないな。…とはいえあの馬鹿冒険者共を救うことができたし、君たちの攪乱のお陰で本隊の負傷者は予想より大分少なくなったそうだ。その事は誇ってもよいと思うぞ」

 アスタロットに謝罪すると、彼女は特に気にするそぶりもなくそう言った。むしろ落ち込む僕らを励ますように、アスタロットは僕らの肩をポンと叩く。ニカッとした彼女の笑顔に、僕たちもつられて微笑んだ。

「塀を超えて魔物が侵入してくることは稀なんだが、今回はあの数だ。それを大きな犠牲もなく討伐できたということで、兵士たちはお祭り騒ぎでな。あちこちで祝勝会が開かれているらしい」

「…そんな騒ぎになってるんですか?」

「ああ。私も騎士隊長達に誘われたが、生憎私は賑やかな席は苦手でな。祝うなら自分が直接指揮をした者達と祝いたいと言って逃げてきたのさ。…と言うことで、もし怪我の具合が悪くなければ、一緒に飲みにいかないか?」

「ええっ?! それって、騎士隊長さんから変な恨み買ったりしませんか…?」

 突然の提案に僕はたじろき、リーシェは戸惑いの声を上げる。

「何、私の性格は皆に知れ渡っていることだし、彼らの招待も形式的なものだから心配はいらないよ」

「…そう? それなら是非お相伴にあずかろう」

 苦笑いを浮かべつつアスタロットがそう言うと、それまで平然と会話を聞いていたシイが口を開いた。

「二人はどうする? 隊長が悪いなら無理はしない方がいい」

「わたし、あんまりお酒は得意ではないですけど、それでも良いのなら…」

「構わないよ。一緒に食事を楽しめれば十分さ」

 こうして僕らたちはアスタロットと共に、夜の歓楽街へと向かうのであった。


 歓楽街へ向かう途中、背後から何者かに呼び止められた。

「あ、アスタロットさ~ん!」

 振り向くと、夕焼け空をセキレイが飛んでくる姿が見えた。彼女はひらりと着陸してアスタロットの胸に飛びつく、キラキラとした目でアスタロットを見つめた。

「無事でよかった! 今から打ち上げですか?」

「やあセキレイ。そうだけど、良ければ来るかい?」

「いいんですか?! わ~い!」

「ああ。君たちも構わないだろう?」

 アスタロットの言葉に首肯し、僕らは小さな歓楽街のはずれにある小さな酒場へと入った。店内は食事時だというのに閑散としており、カウンターでは壮年の店主がグラスを磨いていた。雰囲気的にはバーに近い店なのだろうか。

「いらっしゃいませ…おや、アスタロット様でしたか。お連れがいるとは珍しいですね」

「お邪魔するよマスター。今日は彼らとささやかな祝勝会でもと思ってね」

「左様ですか。今椅子をご用意しますので、空いているテーブルでお待ちください」

 店主は奥から机の高さほどある丸椅子を取り出すと、セキレイの前へと置いた。彼女は丸椅子の上によじ登ると、その上にちょこんと座った。

「わたしたちはニンゲンと違って手が無いから、足を使って物を持つしかないからね~」

 その様子をまじまじと見ていた僕に、セキレイはひらひらと翼を振った。

「他所から来たニンゲンは『はしたない奴らだ』な~んて言ったりもするのに、あなたたちはそんなこと言わないのね」

「そりゃあ、人間だって場所によって文化や習慣が違うんだから、種族が違えば当然の事かなぁと…」

「へぇ~、なかなか面白いニンゲンね! ねぇねぇ、あなたたちのお話、色々聞かせて?」

「そんなに話せることもないけど….。代わりに、ハーピィの生活についても教えてよ」

「もちろんいいよ~!」

 と、そんな話をしている内にアスタロットが頼んでいた料理と飲み物が運ばれてきた。各々酒やジュースを注いだグラスを手に(セキレイは足に)した所で、アスタロットが乾杯の音頭をとる。

「それでは、壁内に現れた魔物の大群の討伐を祝し、乾杯!」

「「「「乾杯~!」」」」

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