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ゼロの創世記  作者: hayabusa_zero
第2章 反省会と祝勝会 ~ラクター到着編~
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4.雨の馬車防衛線

 僕たちが光った場所に近づくと、そこではコの字型に停まった馬車の周囲に何かが群がっていた。馬車の上には灯りを持った人影がおり、必死に魔法を放って応戦しているようだ。リーシェが周囲を火球で照らすと、漆黒の狼の群れと、大鎌を持った赤い長髪の女性が対峙しているのが見えた。

「ルルル…グルワァッ!」

「…危ない!!」

 その時、僕らの背後からの奇襲に女性が叫ぶ。飛び退きつつシイは氷弾で反撃、僕はナイフで切りかかるが、即座に距離を取られて攻撃は空を切る。

「私たちも加勢しますか!?」

 馬車に駆け寄りながらリーシェが声をかけると、彼女は周囲の狼をけん制して叫んだ。

「助かる! 襲って来てんのはシャドーウルフとインテリオウル。数は分からん!」

「そちらの人数は?」

「まだ戦えるのはあたしと魔法職が1人。奥にオーナーと怪我人が居るから、治癒魔法使える奴が居たら向かってくれ!」

「了解。リーシェは奥で怪我人の手当て。私とレイは魔物を追い払う」

「「はい!」」

 返事をするや否やリーシェは馬車の裏へと向かい、僕とシイは大鎌使いの女性へ駆け寄った。

「私たちはこっちに加勢する」

「あいよ、2人ともナイフ使いとは珍しいね。馬車はあたしが見とくから、遊撃を頼めるかい?」

「了解。レイ、私がけん制するから、臆せず群れの中に突っ込んで」

 そう言ってシイは数個の氷弾を作ると、近くの狼に向かって放った。氷弾の一つが後脚に当たり、怯んだところに突っ込んで首筋を切り裂く。そんな調子で数体のダークウルフを倒し、群れの中央に躍り出たところで宙から漆黒の魔力弾が降り注ぐ。

「っ!! 下がって!」

 気が付いた時には目の前に漆黒の魔力弾が迫ってきていた。咄嗟に飛び退こうと足に力を込めると、急に周囲の動きが遅くなったような気がした。この感覚は、あの時マルフィクと戦った時の…

「…ッラァ!!」

 身体を捻って魔力弾を避ける。その時、木の上に漆黒のフクロウが隠れているのが見えた。咄嗟に左手で石を拾うと、後ろ手で投げつける。石はフクロウに命中し、ばさりと地面に落ちていった。

「……ッ…今のは…?」

「レイ、大丈夫?!」

 体勢を崩して倒れたところに、シイが駆けつけて周囲にけん制する。シイの手を取って立ち上がると、シイは驚いた様子で詰め寄ってきた。

「今、身体強化魔法を使ったよね? いつ覚えたの?」

「分からない。咄嗟に避けようとしたら、急に周りの景色が遅くなって…」

 しどろもどろに説明しようとすると、周囲の狼がにじり寄ってきた。

「とにかく今は追い払うのが先。さっきのやつ、使える?」

「やってみます!」

 短く息を吐き、両足に力を込めると、周囲の景色が遅くなる感覚がある。飛びついてくる狼の突撃を避け、首筋にカウンターを叩き込む。左足に噛みついてくる狼を振り上げた右足で蹴りつけ、追撃しようとしたところで頭上から魔力弾が襲い掛かってくる。咄嗟にナイフで魔力弾を受け流したところで、シイが叫ぶ。

「下がって!」

 振り返ると、シイは周囲に氷塊を浮かべていた。咄嗟に脇に避けると、シイは最後の狼に向かって氷弾を放ち、見事に狼の頭部を撃ち抜いた。

「これでシャドーウルフは最後。後は…」

 シイは樹上に目を向けると、樹上に向かって氷弾を掃射した。フクロウたちは氷弾から逃れるように飛び去って行く。その様子を警戒しながら見送ると、僕たちはほっと息を吐いた。

「お疲れ、レイ」

「シイもお疲れ。これで危険は去った…?!」

 そう言って馬車に戻ろうとした刹那、周囲からチュンチュンという小鳥の鳴き声が聞こえてきた。ぎょっとして周囲を見ると、小さな漆黒の小鳥が倒した魔物の死骸に群がり始めた。

「魔物の数が多いと思ったら、ナイトバードに目をつけられていたのか」

「ナイトバード?」

「この小鳥の魔物の名前。周囲の魔物を鳴き声で引き付けては、獲物を襲わせる厄介な魔物」

「うわぁ…」

 敵対的生ものを呼び寄せ、相手にけしかける…前世のゲーム用語で、確かトレインとかいう迷惑行為だったはずだ。それを狩猟手段に用いるという生態に冷や汗を流しつつ、死骸に群がるナイトバードたちを追い払い、僕らは馬車へと戻ることにした。

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