表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロの創世記  作者: hayabusa_zero
第2章 反省会と祝勝会 ~ラクター到着編~
23/47

2.情報の取引って、何だか格好いい

「ではまずこちらから……まず、魔物の数についてお伺いしても?」

 皆で紅茶を飲んで一息ついた頃、ラズリはおもむろに切り出した。シイはこくりと頷いて、小さく息を吸った。

「ここ最近、魔物の討伐数自体にはあまり変化が無い。ただ、ブレイク化した魔物の討伐数が多い。恐らくは、先の事件の残党」

「成程…暫く混乱は続きそうですね。その他に、街の周辺で何か事件があったりは?」

「街の東側の街道で、ブレイク化したゴブリンの残党が目撃されているけれど、それ以外では特には」

「そうですか…」

 ラズリは胸元から取り出した手帳に、メモ書きを走らせながらシイの話に耳を傾けている。

 しかし、情報か……確かに情報を得る手段は非常に少ないし、その有無が生死を分けることも痛感している。先の事件の時も、村を襲う魔物の情報がもっと詳しく伝わっていれば、あんな危険な冒険はしなくて済んだかもしれない。どんな情報でも仕入れておくことで、色々なところで有利に働きそうだ…

「…となると、近々大規模な討伐隊が結成されるかもしれませんね…。うむ、ありがとうございます。私からは以上ですね。それでは、貴女達はどんな情報をお望みですか?」

「ん、とりあえずはラクターまでの道中と、街の様子が知りたい」

「あと、出来れば王都の事も知りたいです。…と言っても、僕たちが王都に行くのはしばらく後になるかもしれませんけど…」

「…ふむふむ。それではまず道中の話ですが、この先の街道沿いで子連れのラウドベアーが出たという情報があります。地図で言うと…このあたりですね」

 シーシャが机の上に地図を広げると、ラズリは指先である1点を指し示した。そこは現在地と目的の宿場街との間にある森だった。

「ラウドベアー…しかも子連れ……」

「私たちは森の南側を迂回してきましたが、スモールリザードやはぐれのウィンドウルフと何度か遭遇しました。恐らくラウドベアーから逃げてきた魔物達かと」

「その程度なら大丈夫そう……レイ、私たちも森の南を迂回していった方が良いと思う。とは言え、時間的に街に着く頃には陽が沈んでそうだけど…」

「仕方ない。街へは寄らずに、途中で野宿してラクターの街を目指そう。そうすれば、明日の夜にはこっちの街で休めるだろうし」

 かくして、僕たちは森の南を迂回することが決まった。2杯目の紅茶を1口飲むと、ラズリは次の話を切り出した。

「ラクターでは、春野菜が豊作だったそうですね。夏野菜の生育も順調だと聞きましたから、恐らく今年は畑関係の仕事には困らないでしょうね。それに今年は集まっている冒険者の数が少ないそうですから、報酬の額も上がっているでしょう」

「それなら…収穫祭まで滞在しても良いかも」

「収穫祭?」

 僕の疑問に、リーシェが小声で補足した。

「毎年夏の終わりごろに開かれる、有名な祭りだよ。みんなで蜂蜜酒を飲みながら、土地を守る賢者に感謝する祭りなんだって。国王陛下も毎年参加しているんだよ」

「へぇ~、それは楽しそうだね」

「…と言っても、今は陛下が体調を崩されているそうで、例年通りに開催できるか分からないと聞きましたが……その場合は王太子殿下がいらっしゃるかもしれませんね。昨年に成人の儀を迎えられましたし」

 などとにこやかに談笑していたラズリであったが、2杯目の紅茶を飲み干すと、急に険しい顔をした。

「…最後に、これは貴女方にはあまり関係のない話になるかもしれませんが…」

 そう呟くと、彼は王都の南側にある都市を指さした。

「…最近、ゲイトル周辺で深刻な不況が続いているようです」

「ゲイトル…って、サウストエンドの貿易拠点だったはずでは…?」

「ええ。何でも領主のギスター伯爵が、レーキンからの輸入量を大幅に増やし続けているそうで、市場は安くて高品質なレーキン製の道具が独占状態。そのせいで、ゲイトル周辺の職人たちは物が売れなくなっているんだとか」

「…あれ、輸送コストを考えたら、周辺の村から仕入れたほうが安いんじゃ?」

「あぁ、サウストエンドとレーキンの間にあるブレイシュ海峡は、クラーケンなどの危険な魔物が居ないんですよ。なので元々両国の間に交易船のルートがあったんですが、近年は交易船の数がどんどん増えているそうで…」

「なるほど。安定して大量に交易できるから、その分輸送コストが下がっているのか……それで、ギスター伯爵は安定した交易ルートを重視している、と」

「そのようです」

 ラズリはそう言うと、大きく息を吐いた。

「最近は魔道具の他に、食料などの輸入量も増えているそうです。このまま物が売れない状態が深刻化すると、周辺の職人や村人の間で暴動が起こるかもしれません…くれぐれもご注意を」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ