表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロの創世記  作者: hayabusa_zero
第2章 反省会と祝勝会 ~ラクター到着編~
22/47

1.旅の始まりと不思議な商人

 アンカーの街から歩き始めて30分後、背後から誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。振り返ると、門の前で分かれたはずのシイが駆け寄ってくる姿が見えた。

「えっ、シイさん?! どうしてここに…?」

「…はあ、はぁ……レイ、リーシェ……そ、その…」

 リーシェが驚きの声を上げると、シイは荒い息を整えながら照れ臭そうに呼びかけてきた。最初は目を泳がせていたが、大きく深呼吸すると急に頭を下げてきた。

「私も…っ、旅に、連れてって…!」

 僕とリーシェは突然のことに目を丸くした。しばらくして、どちらともなく顔を見合わせると、リーシェがおもむろに口を開いた。

「いいよ、ね…? レイ」

「むしろ大歓迎だけども、どうして急に…?」

「そ、その……」

 僕が尋ねると、シイは俯いて言い淀む。彼女は緊張の面持ちで、頬は紅潮しているようにも見える。そんな様子を見てリーシェは何かを悟ったらしく、にやにやと笑いながら間に割って入ってきた。

「ひょっとして、私たちを心配してくれたんですか?」

「え?! そ、そう……2人だけだと、分からないことも多いかなって…」

「そんな…わざわざありがとう。それじゃあ今後ともよろしくお願いします」

「ん、よろしく…」

 緊張のためか動作がぎこちないシイと改めて握手すると、僕らは次の街を目指して旅を再開した。


 アンカーの街からラクターの街までの距離は歩いて3日ほどあり、今日の目標地点は道中にある宿場街だ。

 平野を抜け、丘の上で食事の支度をしていると、向こう側から馬車団が近づいてきた。馬車団は僕らの近くの空き地で歩みを止めると、先頭の馬車のから青髪のシルクハットをかぶった青年が飛び降り、僕らの方へ歩み寄ってきた。

「こんにちは冒険者さん。貴方達はアンカーの街から来たのですか?」

「ええ、そう」

「私はスラグ商会のラズリ・ダイル。もしよろしければ情報の取引は如何ですか?」

「私はシイ、ランクCのⅠクラス。是非とも」

「ほう…とすると後ろにいるのがレイさんとリーシェさんですね?」

「どうして名前を…?」

 名前を言い当てられたことにリーシェが目を丸くすると、ラズリは「はっはっは」と上品に笑った。

「商人にとって情報は命ですからね。ささ、どうぞ。魔物の集団ブレイク化事件を解決した英雄さん方」

 彼はそう言いながら、いつの間にかメイド服姿の従者が用意していたテーブルセットに座るよう促してきた。…おや? よく見ると、赤いメッシュが入った銀髪に隠れて、彼女の首元に何かがついている。

 あれは…首輪……?

「おや、ひょっとして奴隷に興味がおありですかな」

「あっ、いや、ただ首元に何かついてるなぁ~と思って…」

「あぁ成程、確かに近年の奴隷は契約印を身体に刻む場合が多いですからね。シーシャのように首輪付きの奴隷を見るのは初めてでしたか」

 ラズリは静かに紅茶を入れる従者…シーシャに目配せすると、彼女を隣に座らせた。

「シーシャは犯罪奴隷でして、この首輪を外すことが出来ないんですよ。もし間違いが起こったときに、迅速に処分できるように…ね」

「奴隷の首輪は、契約主が念じることで奴隷の首を絞める構造になっている。非人道的だから、今は犯罪奴隷や闇奴隷以外ではほとんど使われてない」

「まぁシーシャ曰く、全くの濡れ衣だそうですが……かといって勝手に外すのも重罪ですからね。彼女には申し訳ないですが、このまま共に旅をしているという訳なんですよ」

「なるほど…不躾な事してすみませんでした」

 僕が頭を下げると、シーシャは静かに首を横に振った。そして紅茶をカップに注ぐと、そっと僕らに差し出してきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ