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ゼロの創世記  作者: hayabusa_zero
第1章 出会い別れ、そして旅立ち ~アンカーの街編~
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12.フレアボウ掃討作戦 調査編

 その後僕たちは屋敷の中にある客室に案内され、戦闘と長旅の疲れでふらふらになった僕たちは食事もそこそこに眠りについた。

 そして翌朝、部屋で集まって朝食を食べていると、眠たげな眼を擦りながらタクミが部屋へと入ってきた。

「ふわぁ~、おはようさん……」

「おはようございます…って、随分眠そうですね……」

「あ~、昨夜の会議が随分と長引いてな…どうもああいう堅苦しいのは苦手なんだよ……あ~沁みるぜぇ」

 そう言いつつタクミは席に座ると、シイが取り分けたスープを飲んでほっと息を吐いた。


「…で、今後の予定なんだが」

 皆が食事を終えて一息ついた頃、タクミは話を切り出した。

「あの襲撃が人為的である可能性があるってことで、俺たちの仕事はフレアボウ襲撃の原因調査になった。その後はおそらく増援…場合によっちゃ兵士も集めて魔物の掃討って流れだな」

「わかった。調査はいつ出発する?」

「できれば今すぐにでもって話だが…体調は?」

「ん、問題ない」

「そうか、じゃあさっさと準備して出発しよう」

 僕とリーシェもシイの言葉に続いて首肯する。その言葉を聞いて、タクミは支度のために席を立った。

「…ところでこの問題、解決までどれくらいかかるんだろう…?」

「ん? あぁ、そうだな……」

 部屋の外へ歩いていたタクミは、僕の呟きを聞いて立ち止まった。腕を組んで首を捻りながら、おもむろに口を開く。

「…半月……いや、早くて1カ月って所だな」

「え? そ、そんなに時間がかかるの…?!」

「それだけ厄介なことになりそうだしな。こういった大規模な討伐任務は解決まで2~3カ月かかることもざらにあるからな」

「そ、だから私たち冒険者が普段から魔物を間引いている」

「…そう考えたら、冒険者って大切な仕事なんですね」

「村のためにも、早く解決できるよう頑張らないと…」

 決意を固めた僕たちに、タクミとシイは顔をほころばせた。

「まぁそう気張る必要はねえよ。無理して怪我しちゃ元も子もねえからな」

「少しずつ、できることをしながら強くなればいい」

「…それもそうですね」

 思わず照れ笑いを浮かべたところで、「さ、準備するぞ」というタクミの合図とともに各々準備に取り掛かる事となった。


「で、まず何から調査します?」

 装備を整え、畑を東に向かって歩く道すがら、僕はタクミに問いかけた。

「まずは昨日戦った場所まで行くぞ。その後は足跡を追って、フレアボウの巣穴を見つけようと思う」

「…もし黒幕がいるとしたら、その近くにいるのかな…?」

「さあな。同じ場所にいるかもしれねぇし、遠くに逃げちまってる可能性もある。少なくとも周辺はくまなく調査する必要があるだろうな」

「襲撃に備えて、罠を仕掛けている可能性もある。絶対に離れたらダメ」

「わ、分かりました…」

 シイの言葉に身を引き締めたところで、昨日フレアボウと戦った畑までたどり着いた。足跡を追いながら、壊された柵をくぐって森の中へと踏み入る。シイは前方で罠の確認をしつつ、タクミは後ろで魔物の襲撃を警戒している。

 獣道は途中で合流と分岐を繰り返しつつ、森の奥へ奥へと続いている。2時間ほど歩き続けたところで小休止し、携帯食料を齧っているとタクミが小声で呟いた。

「しっかし、やけに静かだな。魔物はおろか、鳥の鳴き声1つしねぇのは…」

「ん、流石におかしい」

「…つまり、他の動物が全員逃げ出したってコト…?」

「…少なくとも、『何かがある』ってことは確かだな」

 その後の調査はより一層口数が少なくなった。緊張感からか、いつもよりも時間がたつのが遅く感じる。そのまま時間の感覚が麻痺してきたところで、シイがふと足を止めた。どうやら前方が崖になっているようで、シイは僕らに手招きをする。

「うわっ……何だ…これ?!」

 身体を伏せつつ4人で慎重に崖下をのぞくと、そこには小さな廃村があった。大半の建物は柱が朽ちて倒壊しており、その間を昨日戦ったフレアボウや紫色の肌をした人物などが徘徊している。その腹部には魔方陣が刻まれており、不気味な紫色の光を放っていた。

「あの紫色の種族って…ゴブリン、ですよね……?」

「あぁ、だがこんな光景は見たことがねぇ…」

 リーシェの問いかけに、隣でのぞき込んでいたタクミは真っ青な顔で頷いた。村人を全員魔物に入れ替えたような、おぞましい光景に冷や汗が流れる。

「まさか全員ブレイク化してるっていうのか…?! それにどうして異なる魔物同士、ましてやブレイク化してるやつらが共存してるんだ!?」

 タクミは小声でそう叫ぶ。普段無表情なシイも顔を引きつらせており、リーシェは恐怖に震えているようだった。

「とにかく、一度退いて対策を練るべき」

「あ、あぁそうだな…ここにいたら見つかるかもしれねぇ、離れるぞ」

「そうでs…ぬわっ?!」

 起き上がってこの場を離れようと腕に力を込めたその時、手元が崩れて崖下へと転がり落ちる…!

「危ねぇ!」

 とっさにタクミが足を掴んで転落こそは免れたものの、一連の騒動で魔物たちがざわめきだす。

「テキシュウ! テキシュウ!!」

「マズい、気付かれたぞ! 走って逃げろ!!」

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