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ゼロの創世記  作者: hayabusa_zero
第1章 出会い別れ、そして旅立ち ~アンカーの街編~
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11.フレアボウ掃討作戦 解析編

 水路に落ちたフレアボウは身体を包んでいた炎のオーラを失い、突然のことに慌てふためいていた。僕は暴れるフレアボウの背に飛び乗り、首筋をナイフで切り裂いた。こうして僕たちがフレアボウを仕留めたことをきっかけに形勢は逆転。無事にフレアボウを追い払うことができた。

「や、やっと終わった……」

 村人たちの勝鬨が響き渡る中、疲れてへたり込んだ僕の元へタクミが駆け寄ってきた。

「やったな、レイ! いい戦略だったぞ」

「はぁ…はぁ……僕でも、役に立てたなら、良かった…です……」

 タクミはポーチからポーションの小瓶を2つ取り出すと、片方を僕に投げ渡してきた。受け取って中身を飲み干すと、身体中の痛みが和らいでいった。

「ふぅ……ところで、リーシェとシイは?」

「リーシェなら向こうで怪我人の手当てをしてるぜ。シイは…っと、あそこでぶっ倒れてやがる」

「ほんとだ……大丈夫ですか~?」

 タクミが指さす方を見てみると、畑の片隅で大の字になって仰向けに倒れているシイの姿が見えた。呼びかけてみると、右手を頼りなさげにひらひらと振って答えた。

「…魔法…使いすぎた……少ししたら…起こして……」

「全くアイツは……俺はこの後、討伐したフレアボウの解体を手伝うつもりだが、レイはどうする? 一緒に来るか?」

「あー…もう少し休んでから……」

「そうか、じゃあ俺は向こうに行ってくるから、何かあったら呼べよ」

 そう言うと、タクミは村人たちの手によって集められたフレアボウの亡骸の山へと駆けて行った。


 何度か深呼吸しているうちに、身体の痛みは大分治まってきたので、裏手で怪我人の治療をしているリーシェの元へと向かった。治癒魔法の連続行使でぐったりしているリーシェと共に怪我人の手当てをしていると、タクミとシイが気難しい表情で歩み寄ってきた。

「あれ? もう解体は終わったんですか?」

「いや、それがな……とにかく、実際に見てもらったほうが早い」

 歯切れの悪いタクミの回答に、僕たちは手当を他の村人に任せてタクミの後を追う。タクミは仰向けに転がされたフレアボウの亡骸の前にしゃがむと、腹部をくるくると指差した。

「ほら、ここだ。よく見てみろ」

「ここ…ですか? 特に何もなさそうだけど…」

「あっ、リーシェ、ここ…」

 僕は腹部にうっすらと見える傷跡を指でなぞった。体毛に隠れて分かりづらいが、円形の大きな傷で、中央には幾何学的な模様が…

「これって……魔法陣…?」

「ああ、恐らくな。俺も中々目にする機会が無いから、どんな効果なのか詳しくは分からねぇが…」

「…高位の契約魔法の可能性が高い。非常に複雑だから、束縛力も相当なものだったはず」

「つまり……あのフレアボウ達は、操られてたってこと…?!」

 リーシェの悲痛な叫びに、タクミがおもむろに頷く。

「そんな……確かに魔物は人間にとって脅威だけど、こんなことって……」

 やるせない気持ちが伝染していく中、項垂れた彼女はそっと呟いた。皆言葉を選ぶ中、タクミは険しい顔で口を開いた。

「世界ってもんは、大体そういうもんだ。コイツらの生きる意味を知っている奴がいるとするならば、そいつは神か黒幕くらいだろうな」

「黒幕……」

 そうだ。この事件の黒幕は一体どんな人物なのだろうか。相手は恐らく魔術に長けた人物だろう。村を襲ったフレアボウのように、大量の魔物を操って僕らに仕向けてくるかもしれない。僕らが戦って、はたして勝ち目はあるのだろうか…?

「とにかく、明日にでも東の森に調査に行くことになるだろうな」

「恐らく、とても危険な調査になる。レイとリーシェは、村に残って待機……」

「いや、僕もついていきます。少しでも役に立てるなら…ですが」

「……守ってやる保証はできないぞ?」

「覚悟の上です」

 僕が頷くと、タクミはフッと笑って肩を叩いた。続いてリーシェの方を向くと、心配そうに声をかけた。

「…リーシェ、おまえさんは戦闘向きじゃねぇ。来るってんなら助かるが、無理はしなくていいぞ?」

「……私も行きます。フレアボウたちをこんなことにした黒幕のことは、無視できませんから」

 リーシェは最初は戸惑いを浮かべていたが、やがて覚悟の決まったような声で顔をあげた。タクミも「分かった」と答えると、一転して面倒臭そうな表情で溜息を吐いた。

「まさかこんなことになるとはな……今夜は夜通し村長たちと会議だろうな~。あぁメンドクセェ…」

「仕方ない、これは予想外の事態」

「まぁな……おまえさんたちは先に戻って休んでな。俺はしばらく会議続きだろうからな。クッソメンドクセェけど…」

「あはは……頑張ってくださいね…?」

 リーシェの苦笑いにやる気なく手を振りながら、タクミは村人たちの元へと歩いて行った。

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