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ゼロの創世記  作者: hayabusa_zero
第1章 出会い別れ、そして旅立ち ~アンカーの街編~
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10.フレアボウ掃討作戦 迎撃編

 僕たちが襲撃地点に駆け付けると、柵は大きく壊されていた。隙間から入り込んだフレアボウたちは一塊になって、紫色の炎を纏うと近くの小屋へと突進していく。その衝撃で、小さな小屋はあっという間に倒壊してしまった。

「うわぁ、なんて威力だ……」

「あ、あれを今から討伐するんだよね…?」

「心配するな。確かにあの突進は脅威だが、距離を詰めれば突進は封じられる……とはいえ、アイツら全員ブレイク化してやがるな?」

 突進の破壊力に、思わず足がすくんでしまった。ふと横で大剣を構えるタクミの姿を見ると、彼の顔も強張っていた。

「第一射、総員放てェ!」

 突進が止まった隙を見計らって、村人たちの矢がフレアボウの群れへと降り注ぐ。矢を受けたフレアボウたちは先程よりも炎の勢いを強くして、こちらに向かって突進してくる。その勢いは身体中に矢が刺さってもなお、先程の突進より素早く感じた。

「ブモォォォォッッッ!!!」

「まずいぞ、回避ィー!」

 左右に転がるように突進を避けた村人たちに、フレアボウも散開して追撃を仕掛けてくる。乱戦状態となった僕たちは、フレアボウの素早い動きに翻弄されるばかりであった。

「マズいな…こうなったら1度退いて態勢を立て直すしかねえ!」

 タクミは苦々しく叫ぶ。実際乱戦により弓を封じられた上、炎を纏って突進するフレアボウにカウンターを叩き込むことは至難の業であった。何とか僕と数人の村人はフレアボウの追撃を振り切り、荒い息を吐きながら群れの方を見やった。

「クソッ、動きが速すぎる…!」

「それに炎を纏っていて、近づけねえぞ!」

「何とか動きを封じられれば……」

 そんなことを呟く村人たちの声を聞きながら、僕は周囲を見渡した。そしてあるものに気が付いた僕は、彼らに近づいて耳打ちした。

「あの、作戦があるんですけど……」


「おらァァァァァッッッ!!」

 フレアボウの突進を躱しつつ、俺は大剣でカウンターを叩き込もうとした。しかし、アイツらが纏っている炎のせいで近づけず、斬撃はわずかに横腹を掠めるだけにとどまった。

 アイツら、どうやら近接戦で俺たちを消耗させる作戦に出やがったな? ブレイク化している影響か、知性が高くて統率が取れてやがる…

「ブグルルル……」

「こうなったら、我慢比べといこうじゃねえか」

 そう言って不敵な笑みを浮かべてみたが、踏ん張りの効かない畑の土の上での戦闘は、想像以上に体力を消費させられる。突進を掠って火傷した右腕を押さえながら、ふらつく足に渇を入れてフレアボウを睨む。睨まれたフレアボウも身体を前に傾け、今まさに突進を繰り出さんと言ったそのときだった。

「ブモッ?!」

 横から放たれた矢がフレアボウの首筋を射抜く。俺たちが顔を向けると、高台にレイが立っており、その近くで数人の村人が弓を構えていた。急所を狙った1射に激高したフレアボウたちが、村人たちめがけて突進していくが、彼らは微動だにしない。

「逃げろォォォ!!!」

 フレアボウの突進がレイたちの目前に迫ったとき、アイツはニヤリと笑うと、後ろへと飛んだ。思わず顔を背けようとしたが、その後に聞こえてきたのは水飛沫の音と、フレアボウの驚いたような声だった。その声に、その場にいた全員が動きを止め、声がした方を振り向いていた。

「あの場所は、大きな水路が流れて……!」

「フレアボウの脅威は、炎とスピード。水路に落とせれば、そのどちらも封印できる…!!」

「水だ! 総員、水辺に移動するぞ!」

 戦況としては些細な変化だが、村人たちの士気は大きく上がった。シイも、今までは畑への被害を恐れて自重していた水魔法の大技を惜しみなく使い、フレアボウの群れを水球に閉じ込める。動きを制限されたフレアボウたちは1頭、また1頭と少しずつ討伐されていった。

「ブモッ、ブモゥゥゥ!」

「見ろ! フレアボウ共が逃げていくぞ!」

 群れの3割ほどを討伐したところで、群れの中で一際大きな個体が雄叫びを上げた。そのまま壊れた柵を潜って逃げ出すと、他のフレアボウもその後を追って東の森へと姿を消した。その様子を見て、荒らされた畑の中、村人たちの勝鬨が辺りに響き渡る。

「あれが群れのボスか……やけに知能が高いのが厄介だな…」

「…あのフレアボウの瞳……」

 逃げていくフレアボウを見て、対策に頭を抱えていると、隣で脱力しきったシイが呟いた。

「…どうした? 何か気が付いたのか?」

 俺がそう問いかけると、シイは俺の瞳を見ながら言葉を続けた。

「…左右で、瞳の色が違った。あれは……義眼…?」

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