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あなたと私の不思議なこうかん日記  作者: なおぽん
第二章 ふたつの旅支度
7/10

第七夜 夢について

 ここに来てから眠っている時に、やたらと夢を見るようになった。内容はほとんど覚えていない。でも、確実に分かるのは、その夢にさやひーがいないということだ。この夢は、まるで私からさやひーを忘れさせようとしているようだった。

 一年も一緒に居たさやひーは私の一部を超え、一人の人として認識していたのだろう。そのため、さやひーに会えない今は少しさびしい。

 心の支えを失ったように。

 でも、私はあの時より強くなっていた。

 再び自死の道を歩もうとは思わなかった。いや、思うことはあった。しかし、思ってもあの時みたいに、自死に惹かれる気持ちは浮かばなかった。

 もう、さやひーには迷惑をかけたくないから。


***


 放課後、私はサークル室に向かった。

「久しぶりだね」

 お嬢様サークルの先輩が扉を開けるなり、声をかけてきた。

 先輩の久しぶりという言葉に引っかかった。さやひーはサークルには顔を出していなかったのだろうか。

「久しぶりです」

「君とは……久しぶりということだよ」

 君……。もしかして、先輩は私の身に起きていたことに気付たのか。

 確かに、さやひーは私の一部とはいえ、性格は全然違ったし、外の世界で私と同じ交友関係を持っていれば、少しづつでもバレてしまう危険性があった。ついにバレてしまったのだろうか。

 しかし、みやちゃんにはさやひーがドストライクでバレる気もなかったのは唯一の不思議だった。逆に今の私がみやちゃんに関係を持てば持つほど危ない気がする。

「それって……」

「っていうのは冗談で、この前はありがとうね。古本巡りに付き合ってくれて。その時に買った魔導書? に生物の真の姿を見せる魔法があって、ほら足元、紙に魔法陣書いてみたんだ。ちなみにさっきのセリフは私のオリジナル」

 よかった。バレてはいないようだった。それより、お嬢様要素はどこにいったんだろう。

「魔導書とか好きなんですか?」

「そりゃもちろん、魔法かっこいいじゃん。そして、お嬢様とも切っても切れない縁があるんだよ。ささ、ここに座って、話そ……う?」

「……」

 肩が少し重たくなった。ちょうど女性の手が肩にのった程度の重さだった。

 呼吸をする声が耳元に聞こえる。

「あれ? うん? あ、おはよう。さや」

 なつかしい声が聞こえた。

 真っ白な世界でのみ聞いていた彼女の声だ。

 声のする方に顔を向けると、所々透明なさやひーがいた。

「ふ、ふたり⁉ いる……?」

「お、おはよう。さやひー!」

 先輩とは裏腹に、喜びに満ちた声が出てしまった。

「え、ふ、ふたりいるんだけど」

「さやひー最近どうしてたの?」

「ずっと君の中に居たよ」

「居てくれたんだね」

 顔が熱くなってきた。

「会えて嬉しい。あのね、私、さやひーがしていたみたいに夢で会える。そうなのかなって思っていたのに、会えなくて……私、寂しかった」

「ごめんね、さや。私がそんなことを思わせていたらダメだね」

「そんなことないよ」

 涙が溢れた。たったの数日ぶりだというのに。心の寂しさは大きかった。でも、嬉しさはその数倍大きかった。

「ど、どういうこと?」

 さやひーは私の心の支えになっていた。今ここに居るのもさやひーのおかげ。

 だから、そんなこと言わないで。

「さやひーは私の支え、だから、だから、そんなこと言わないで」

 溢れる感情で声がはっきり出ない。

「分かった」

 暖かさに体が包まれる。

 もう、離したくない。

「え、だから、どうなってるの!」

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