32.
なんとか三人育児に慣れつつあります。
できるかぎり更新していきます。
侍女が呼びに来る前に目が覚めてしまった。
本当は侍女が来るまでは、ベッドの中にいないといけないのだが、今日ばかりはじっと待てそうにない。
時計を見ると、起床の時間まではまだ一時間ほどあるようだった。
十五分前くらいに、ベッドに戻ればいいよね?
そうすれば起きていたこともバレないだろうし、皆に迷惑をかけることもない。
本でも読んで落ち着こうとベッドから立ち上がった。
・・・・・・・
「まあ、姫様。おはようございます」
くすくす笑いながら、ケニーが入室してきた。
「起床の準備を交代して正解でしたわ」
笑いながら言うケニーには、感謝しかない。
結局、私は時間を忘れて本に没頭していたのだ。
他の侍女が起こしに来たのなら、とても慌てさせてしまっていたことは確実だ。
「ごめんなさい、ケニー。それと、ありがとう」
「かまいませんよ。もしかしたら、起きていらっしゃるかと思いましたので、交代したのですから」
さすがはケニーである。私のことなどお見通しなのだ。
「さあさ、姫様、ご準備いたしますよ。椅子になさいますか」
もう一度ベッドに戻るのも面倒なので、このまま椅子とテーブルで洗顔を行う。
「今日は少し急いで準備をいたしましょう。最終確認もしていただかなくてはなりませんし、小規模のお茶会とはいえ、姫様の準備は全力で行わなくてはなりませんので」
なんかさらっと怖いことを言われた気がする。
私の準備など、それなりに済ませてはくれないものか。
きっと無理なんだろうな。
洗礼式を受け、人前に出られるようになった私を着飾らせるのが楽しいようだ。
先日も新しいドレスを仕入れるために、一日中着せ替え人形になったところだ。
途中から何着着たのか確認することも諦めたし、最終的に何をどれだけ仕立てているのかもよく覚えていない。
ケニーがきちんと取りまとめてくれていたから、承認だけしたのだ。
デザイナーと仕立て屋には申し訳ないが、あのときの私にきちんと確認する余裕はなかった。
今日の衣装はその時購入した一着のようだ。サイズ合わせが終わって、一番先にこちらに届いたものらしい。
年相応に可愛らしいピンクのドレスは私の髪の色にとても良く映えていて、我ながらとても似合っていた。
――お人形のように可愛らしいわね。
年相応でない私の一部が他人事のようにそう思った。
・・・・・・・
今日は本当に、楽しかった。
皆、名前で呼び合うようになったし、王城に入るのは初めてな子達だから、はじめはとても緊張していたけれど、話し始めたらその緊張はすぐに消し飛んだようだ。
王城のお菓子もとても楽しみにしてくれていたようで、目がキラキラと輝いていた。
作法や話す内容に気を使いすぎないよう、侍女たちも少し遠くに控えてもらったのも良かったようだ。
それにしても街のお菓子屋さんで購入した、というお菓子はとても美味しかった。
手土産を出すのはあまり褒められたことではないのだが、前の話にもあったし、皆で食べたかったから後悔はしていない。
ケニーもマナーが分かっているなら良いと言っていたし。
何より私がマナー違反を犯すことによって、緊張もほぐれたようだった。
最近、私の発言力に驚き、一言発するのにも気をつけていたからだろう。
気負い過ぎない会話はとてもとても楽しかった。
彼女たちの親も野心を覗かせるのでなく、粗相だけはないように、とマナーレッスンを詰め込んだだけのようだ。
口々にマナーの細かさを恨んでいた。
私は最近覚えて、まだまだ目こぼししてもらえる状態だが、彼女たちは王女の茶会ということもあって、徹底的に学び直しをさせられたらしい。
おかげで動きが少し洗練されていた。――反対にぎこちなくなっていたりもしていたのだが。
いい嫁ぎ先が見つかるはず、と笑い合っていた。
その横顔はとても綺麗で、とても眩しくて、直視できなかった。




