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ギィ……という音を響かせ、礼拝堂への扉が閉まった。
完全に扉が閉まってしまうと、痛いくらいの静寂が訪れた。
「父様、反則です」
涙がこぼれないように耐えながら、父様を見る。
少しにらんでしまったのは仕方ないと思う。泣きそうな顔も、誰にも見られていないと信じたい。
父様は余裕あり気に笑んでから、大神官の待つ祭壇へと歩いていく。
母様と共に父様の後を追っていく。
祭壇の上には緋色の布が敷かれ、その上に私の両腕では抱えられないほど大きなゴブレットが置かれていた。
このゴブレットの中に今朝、聖泉から汲んできた聖水が入っている。
父様、母様と共に一礼すると、好々爺の笑みを浮かべた大神官の話が始まった。
「本日は、七歳となられたことを心よりお祝いいたします。お生まれになられた時もお会いいたしました、ああ、三歳頃でしたかな、数日高熱が続かれた時も、神に祈りを捧げさせていただきました。あの時はそれはもう、大変で……」
私、何を聞かされているんだろう。ずっと微笑んでいる、表情筋が限界です。さっきまでの感動の涙を返してほしい。もうカラカラです。
その後もあの時はどうだ、この時はこれだけ神に祈りました。等々、続いていく。
何が言いたいのか分からなかったが、黙って笑顔で聞いているふりをしていた。
一通り話し終わって満足したのか、大神官はやっと話を切り上げた。
あの大きなゴブレットからどうやって聖水を垂らすのかについてずっと真剣に悩んでいたのだが、正解は至極簡単で、大神官の懐から手のひらサイズの同デザインのゴブレットが出てきたときは「それはずるい」と呟いてしまった。
大神官は小サイズのゴブレットに聖水を汲むと、祭壇の上に上がるよう私に声をかけた。
ゆっくりと祭壇に上がり、大神官の前に跪くと「この国の一員となられたことを祝福致します」という言葉と共にはらはらと聖水が降ってくる。
意外と少ない量ではあったが、これで洗礼は完了したらしい。
あっけないなぁと思いながら立ち上がると、奥の祈り場へ向かうよう指示がなされた。
ここからは父様も母様も入れない。祈り場へは誰も連れず、一人で向かう。
大神官も共には入らず、礼拝堂で待っているようだ。
礼拝堂に入る前にくるりと回り、一礼すると父様と母様はしっかりとうなずいてくれた。
祈り場へのドアは自分で開閉するらしい。
子どもには少し重い扉を何とか押し開け中に入る。
色のない真っ白な空間に一筋の光が差すのは何とも幻想的で、見とれてしまった。
部屋の中央に幾何学文様のような円形のものがある。おそらくここで祈るのだろう。
(これ、魔法陣みたい。ファンタジーだ)
そんなことを考えながら跪き、目をつぶる。
両手を円の中につくと、目をつぶっているのにちらちらと何かが見える。
ゆっくりと目を開くと、目の前に両手に乗るくらいの光の玉があった。
よくわからないまま思わず両手を伸ばし、そっと包みこもうと光に触れる。
その瞬間――光が弾けた。