24.
私事ですが、第三子を出産いたしました。更新ペースはなるべく変えたくないですが、予告なしに更新が途絶える可能性もあります。ご理解いただけると幸いです。
わぁ……!
真っ暗な視界に感嘆の声が響いた。
勇気を振り絞り目を開けると、あたり一面に光の粒が降り注いでいた。
火球を打ち出したはずなのにどういうことだろう。父様を見上げるとあっけにとられていて呆然としている。
仕方ないので、皇后陛下を見ると、「これは、また」と唇が紡いでいた。
小さな声で「とにかく、今は笑顔で手を振りなさい」という皇后陛下の声にはっと我に返ると、父様にも聞こえたのだろう、さっと私を抱き上げて、皆に見えるようにしてくださった。
よくわからないが、とにかく笑顔を浮かべ、手をふることに専念する。
「おめでとうございます!」
「王女様!」
「聖女様……!」
そんな声を耳が拾った瞬間、先程の父様の不機嫌の理由が分かった気がする。
きっと聖女という呼び名が神殿の所属とされるため、私に聖女という呼び名を付けたくなかったのだろう。
でも、きっともう手遅れだ。
集まった国民たちは「聖女様、ばんざい」という声に統一されつつある。
これでは王城側がどう反論したところで、国民の間での呼び名は聖女になってしまうだろう。
正直、聖女なんていう大それた呼び方はやめていただきたい。
姫様、王女様であれば物心ついたときにはそう呼ばれていたので耐性はついているが。
貼り付けた笑みの父様に抱えられながら、バルコニーを後にする。
閉じた窓の向こうから、国民たちの興奮している声がいつまでも聞こえていた。
・・・・・・・
午後の休憩は母様と二人だけの予定だったが、急遽、父様と皇后陛下、ユリウス兄様も加わることとなった。
話をまとめると、先程の魔力のお披露目では、私の指先から三メートル強の火球が飛び出し、太陽の如く燃え、ある程度の高さまで昇るとはじけて火の粉のようになり、燃え広がるかと人々が恐怖したが火は燃え移ることなく光の粉となりあたり一面に揺らめいていた、という事らしい。
うん。わけがわからない。
私はできれば以前と同じ火球を出す予定だったのに、この間より大きい上、光の粉となるなど意味不明である。
またしても状況がわからないので、うんうんうなっていると、バルコニーの下で警備に当たっていた者たちからの証言が届いた。
概ね先の報告とは変わらなかったが、見逃せない追加情報があった。
あの光の粉は祝福だと人々に広がっている事。
そして、私は聖女として浸透してしまったという事だ。
・・・・・・・
「何はともあれ、魔力のお披露目、お疲れ様。大成功、以上よ。アイリス、あなたの価値は間違いなく上がったし、あなたの価値が上がるということは王家の価値も上がるということだもの。きっと大丈夫よ」
静まり返った室内に響いたのは、凛とした皇后陛下のお声だ。
この時ほど王位継承権のない女に産まれて良かったと思ったことはない。
皇后陛下は優しい顔を作ってはいるが、優しい顔を作っていた。
たとえ男に生まれていたとしても、私の性格では王位を継ぎたくないと思っていただろうから、継承権を放棄しただろうが。
いや、でも、その場合は放棄などできないのかもしれない。
女神の祝福を受けた皇位継承権を持つ者。王にふさわしい以外の何者でもない。
私だって私のことでなければ、祝福を持つ王位継承権のある者が王位に就くべきだと考えただろう。
ぶるりと寒気がし、体中に嫌な汗が吹き出して来るのが分かる。
きっと皇后陛下も私が女だから笑顔を作っていられたのだ。
男性優位のこの世界ではあるが、本当に女の子に産まれて良かったと痛感した。
「ふぅ……。じゃあ夜会の準備をしようか。あまり時間もない。女性陣は準備に時間もかかるだろう。この件も今、時間のない中で話し合ってもきっといい解決策は出てこない。終わってからまた、ゆっくり話そう」
ため息一つで苛立ちを隠した父様がそう告げると、各々夜会の準備に奔走することとなった。




