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二度目の異世界で祝福を  作者: 美紗
22/34

22.

 結果的に大神官は、今回は私の事を諦めてくれたようだ。

 目に宿る熱は未だ気持ちが悪いくらいだが、とりあえず今日のところは引いてくれるらしい。


 とりあえずの危機は去ったようなので、ほっと胸をなでおろす。

 こわばっていた体からも少しずつ力が抜け、少し体が傾いたが、そこは母様がそっと支えてくれたので周りにはバレてはいないだろう。


「皆様、ありがとうございます」


 笑顔を作り、そう言うとやっと周りの緊張が解けたようだ。

 大神官以外は静かだった広間に、ゆっくりと音が戻っていった。


 粉になってしまった魔石をどうするかという問題は残ってはいるが、その後は滞りなく儀式は進んだ。

 結局、私の魔力値は測定不能という結果にはなってしまったけれど。


 そもそも、測定用魔石と言っても魔力を流せば数字が出てくるわけではなく、透明な魔石の中心から光が差す。

 その光の大きさを神官が読み取って、一から二十に分ける、という方法を取っている。

 魔石の中に線などないのに二十ほどに分けるのは大変に気を使う事だと思うのだが、神官たちは当たり前の顔をしてやり遂げてしまう。


 これまでも魔石から光が漏れ、二十以上と分類された者はいるが、魔石が壊れたという記録は未だかつてない、らしい。

 ちなみに直近で二十以上と分類されたのは、目の前で微笑んでいるユリウス兄様――皇太子殿下なのだけれど。

 そしてその前は皇帝陛下である父様だ。こちらもこちらで満足げな顔をしている。誰がどう見ても親バカである。


 ・・・・・・・


 次は貴族たちへの報告会兼正餐だ。

 魔力測定でアクシデントもあり、休憩の時間はあまりない。

 急いで衣装の乱れと、化粧を直し、会場へ向かう。


 私は今日の主役であるので、入場は最後である。

 今日ばかりはいつも皇后陛下のエスコートをする父様も、母様と私のエスコートをしてくれるらしい。


 通常の王族であれば、それでも問題が起きそうなものだが、皇后陛下は快く最後の入場を譲ってくださった。

「たまには息子にエスコートしてもらうわ」

 と、素敵にウインクされていた。


 そうなると王太子にいつもエスコートされている公爵令嬢もエスコートの相手が変わり、その相手も……と雪だるま式に多方面に迷惑がかかってしまう気もするが、その負い目を感じさせない皇后陛下の心遣いに感謝して気づかなかったことにしようと思う。


 その代わり、席次は私が父様と皇后陛下に挟まれるという特殊な状況だ。

 きっと美味しいはずの食事の味はわからないだろう。

 周りは家族で固められているため、細かいマナーはまだお目溢ししてもらえるだろうが、テーブルは一段高いところに作られているため、よく目立つのだ。


 初めての正餐で一番注目される立場に立つとは、なんと神様は意地悪なのだろう。いや、意地悪をするつもりなんて女神様にはまったくないのだろうけれど。

 ともかく、笑顔を貼り付けながら父様の隣で、じっとしていることにする。


「皆、今日は我が娘のために集まってくれてありがとう。紹介しよう、我が娘のアイリスだ。この度の洗礼式で女神様からお告げを受け、祝福された。そして、先程分かったことだが、魔力値は――二十以上であった」


 ざわめきが広がる。祝福のことはもう周知の事実なので、皆聞いているだけだが、魔力値が二十以上あるというのには驚きを隠せないようだ。

 王族と婚姻したとはいえ、魔力値もそれなりに高いとしか言えない第三夫人の子である私の魔力値が、数十年に一度現れるかという二十以上。これ以上の注目は正直遠慮したいのだが、そうもいかないのだろう。


「新しい王族の誕生に祝福を!」


 ざわめきが収まるのを待って父様がそう言ってグラスを傾けると皆が一斉にグラスを掲げた。


 ・・・・・・・


「あまり、アイリスのことを公開されないのですね」


 皇太后陛下が笑いながらそう仰った。


「それは……大切な娘なんだ。あまり見せたくないじゃないか」


「まあ、皇太子のときは自慢したくて仕方がないという風でしたのに」


「正直、この式ももう少し小規模なものにしたかったんだ。見世物にするみたいじゃないか。それに皇太子になるべく教育を施されたユリウスとは違って、今回のアイリスの件は急だったからね。心の準備もまともにできないじゃないか」


「国王陛下、お言葉ですが、私には心の準備をさせてもらった記憶がまるでないのですが」


 至極真面目な顔で、ユリウス兄様が会話に加わり、テーブルが笑いに包まれた。


 周りからの視線は依然として突き刺さっているし、決して居心地も良くはない。マナーだって不安だらけだ。

 でも、家族からの暖かな優しさを感じられたこの食事は決して忘れないだろう。

 周りからわからないように私の食事だけ、食べやすいように細かくされている料理長の気遣いもきっと忘れない。後できっとお礼を言っておこう。

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