13.
侍女と女官のためのスペースは部屋の端に作られた。
元々ある家具よりは格を落としてはいるが、期間限定でも王女の自室に置くためそれなりの物がそろえられているようで、女官は恐縮しきりだった。
普段は飾り気のない、機能最優先のデスクとチェアがあるだけで、休憩室にお茶用テーブルはあるものの、休憩室までは遠いし、ティーセットもそちらにあり、中々お茶もできないらしい。
自分は寝ているから、仕事をしてもよいと言うと、二人は反論せずに自らの場所へ行き、各々の仕事を始めた。
侍女には何かあればすぐに呼ぶように再三、念を押されたが。
筆頭侍女に言われていたのだろう、同室に人がいることは避けられないが、できる限り私の意に沿おうとしてくれる心遣いがとてもうれしかった。
・・・・・・・
ベッドに横になり、目をつぶる。
眠たいわけではないが、メモも取れないこの状況では目をつぶって考えることが一番頭の中をまとめられるような気がした。
まず、女神様に会ったこと。
これはもう事実として受け入れるしかないだろう。
さっさとあきらめることにした。
次に前世の記憶。
この記憶に関しては今まで思い出さなかったことが不思議なくらい、自分になじんでいた。
意識的に考えると胸が痛むが、過去に自分の魂に起こったこととわかっていても、一枚フィルターをかけたように他人事のようだった。
――でも、あれは。あの、中央神殿は……
背筋がヒヤリとする。
中央神殿は何度も見たことがあるし、先の洗礼式でも訪れた。
ただし、王女である私は貴族街からの中央神殿しか見たことがない。
おそらく平民街から見るとまた違った見え方をするのだろうから、同じものとは言えない。
けれど我が国の中央神殿は国内外でとても有名で特徴的なものだった。
中央神殿は数百年以上前にお告げによって建設された、とされている。
設計図もすでになく、補修も部分的なもので、基礎からの修繕等は一度もない。
内壁は真白なのに外壁は下から上へ、白からクリーム色にグラデーションしている。
だがそれは色を塗ったものではなく、石自体に色がついているようで、これまで色の塗りなおしがされたことはないという。
国一番の神殿である中央神殿は、いつも磨き上げられ、雲の色とはまた違うクリーム色が青空に映えてとても美しいのである。
それも全面同じグラデーションになっていて、色の違いは寸分もないらしい。
この四面の色が同色なのは、王家と神殿と国民が同格であるという平等性、そして神が私たちに寄り添ってくださっているということを表しているらしい。
美しく、不思議な中央神殿はもちろん多くの書類や絵画に残されており、王城の中にも飾られている。
王家としては神殿と平等と言われているのは面白くはないのだろうが、当時は神殿の権威が今よりも強く、王ですら神殿の言いなりであった時代もあるらしい。
時を経て、お告げの数も減り、神殿の権威が右肩下がりに落ちていくと、王家は権力を取り戻していった。
それと同時に聖典にも王家の干渉があり、改変されたと噂されているが、事実は定かではない。
だが、時を経ると同時に、かつての記録は失われていっているし、その当時の権力者にとって不都合なことは隠されているのは想像に難くない。
そのせいなのか、お告げを受けた者の記録も嫌に簡潔であったり、偏ったものであったりしていて、あまり参考になることは残されていなかった。
それはそうだろう。時代や人によっては神の代理者として王家を超える権力を欲しいままにしたようだし。
って違う、違う。
現実逃避していた思考を現実に引き戻す。
そう、あの中央神殿は見たことがある。
何度も行ったことがあるため、当たり前なのだが、そうではない。
私は貴族街からではないあの外壁を見たことがあるのだ。




