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【完結済み】破壊神のしもべはまったり待機中 ~女神様がほぼ仕事しないので、俺ものんびり異世界青春スローライフすることにした~  作者: 夢ノ庵
第2章 砂漠の魔法国家で貴族するのに必要なのは、お金とかより魔力の様です。

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第52話 王様も顧客だった バルトリア工房の商売について

 王様は、頬杖付いて冠外して、リラックス。外した冠はワントガルド宰相閣下が受け取っている。


「ワシも、あの工房には少々度肝を抜かれた過去がある。普通、ワシの王位継承祝いに献上となれば、請求書は来ないだろう?」

「そうですね。献上品に請求書と言うのは、ちょっと……」

「それをしてくるのがあの工房だ。国王からもしっかり徴収する、さすがにワシもバルトリアを呼び出したがな」

「呼び出された結果、どうなりましたか? 請求書の取り下げとか……?」

「いや、『陛下の向こう30年必要な家具を差し上げました、価格はサービスをしております』と。強気でなぁ」


 いやいや、いやいやいやいや。

 陛下に、しかもその王位のお祝いに、請求書付き? どこまで非常識なんだあの工房。


「それで王様は、バルトリア工房には、何かお仕置きというか、なさったのですか?」

「いや、あそこまで強気に、30年で必要な家具を出していると言われると、それはそれで試してみたくなってな。

 実際今15年程だが、無駄になった家具は一つとして無い。全て結局、何かしらに使っており、良い具合に古びて味も出ている。

 故にワシも、あの工房は先を見通して顧客にまとめて買わせる、頑固ドワーフのお節介工房だと思う様にしておる」


 頑固ドワーフの、『お節介』工房か。となると、今回アリアさんが買ってきた物も全て、必要な物なのか。

 確かに、今はまだアリアさんは正式に奥さんでは無いけれど、貴族との関わりで行けば程なくドレスは必要になる。

 イスも、詳細は聞いていないが、値段からしてきっと良い物なんだろう。それこそ俺も欲しくなるかも知れない。

 そう考えれば、まず店に来たアリアさんに勧めて、そこから居住者全員が納得して買いに来る、という流れは、アリなのかも知れない。


「王様。確かに王様の仰るとおり、アリアさんが買ってきたリストを見る限り、必要と言えば必要なものばかりでした」

「ワシには『向こう30年』と言ってよこしたが、まぁ子爵であれば向こう5年位か? その位で必要な物ばかりだろう」

「うーん……5年どころでは無くて、1~2年の内には必要になりそうな物ばかりです。お節介、と言えばお節介ですね……」

「そうだ。請求書まで来るから度肝を抜かれるが、恐らくそれぞれの格に合わせた物を、必要な量勧めているはずだ」


 アリアさんが注文した物の『格』はさすがに分からないが、リビングにミール材テーブルを入れる俺の屋敷だから、相応となると他も高そうだ。

 そこは……ちょっと伺っておいた方が良いかも知れないな。


「あの王様……実は、屋敷が特殊だったため、リビングテーブルがミール材を使う事になりまして」

「ミール材か。それはそれ随分と珍しい物を使う、ミール材がそんなに気に入ったのか?」

「いえ、ミスリルを含む外壁で包まれた俺の屋敷だと、ミール材で無いと耐えられないそうです」

「……ちょっと待て。ミスリルが、どう使われているって?」


 おっと、陛下ですらこの反応か。ミスリルはよほど稀少な金属らしい。


「外壁が、鋳物の様な鉄で出来ているのですが、女神様の仰るに、全てミスリル1.5%含有の鉄だそうです」

「ミスリル鉄、しかも1.5%か。ふぅ、惜しかったな、お前さんが買ってなければ、王家で購入して解体して資材にしたかった位だ」

「ミスリルって、そんなに稀少なんですか?」


 俺もさすがに疑問に思った。陛下すら『解体して資材にしたかった』と仰る価値とは、一体。


「ミスリルは、量にもよるが稀少だ。例えば魔法剣士部隊を作るに、100クーレム程の1%含有鉄があると、簡単な魔導剣が100本作れる」

「100本も。魔導剣とやらのスペックが分かってないので、俺には相変わらずピンと来ませんが……」


 1クーレムが大体1キログラムだから……確かに壁を解体すればその位は余裕で取れそうだ。


「先日お前さんが撃退してくれた謀反人が持っていたサーベル。あれが2%ミスリルの魔導剣だ。2%まであると、使用者の魔導力関係無い魔導剣が作れる」

「はぁ……つまり、仮に100クーレムの1%ミスリルを、濃度上げて『簡単じゃない魔導剣50本』にするならば、あのヤバい剣が50本も出来る、と」

「そうだ。ワシに向けて振るいおったが、本来であったらワシも、斬撃の波動を受けて死んでたか、良くて数ヶ月は伏せる事になっただろう」

「そ、そんなに厄介な代物だったんですか、あの闇属性っぽいサーベル」

「あぁ。多数の敵が王城に攻め込んだ際、一振りで一網打尽にする為に配備してあった物だからな、それ位の力はある」


 うーん。俺、ともかく頑張って陛下に波動が行かない様に結界張ったけれど、間に合ってマジで良かったパターンか。

 数ヶ月王様が伏せってしまったら、国政も何もかも混乱必至だろう。


「まぁ、話をバルトリア工房に戻すぞ。あの工房は、お節介で色々買わせてくるが、無駄遣いになる事が無い。

 故に、此度は随分一度に買って、一見すると無駄遣いの様に思えるやも知れんが、いずれ必ず役立つ家具だ。

 支出額は大きいが、胸を張って支払って良い。勿論英雄費勘定でな」


「そ、その英雄費なんですが。あの……ホントにそんなに、使って大丈夫なんですか?

 ヒューさんの見立てだと、子爵領地の収める額の5年分には当たる、という話で……」


 不安を抱きながら伺いを立てた俺に、陛下の声はあっけらかんとしていた。


「ワシが常闇のサーベルの斬撃を受けずに済むようにした、王を守った子爵が金を使えぬような国家であったなら、もうそれは国として終わってるだろう」

「……それも、そうですかね」


 あまり実感と言うか、俺自身功績とも思ってない、ラッキーセーフ、みたいな感覚でしかなかったが。

 陛下を守った、死 or 数ヶ月伏せるヤバい斬撃から守った子爵。うん、確かに結構な褒賞はもらっても良い感じに聞こえる。

 しかも陛下は、そういう配下が金を使えない国家は終わってる、という認識。これなら、今回の買い物も、また未来の買い物も、大丈夫だろう。


「王様のお心が聞けて良かったです。また可能であれば、魔導水晶やミスリル、手に入る様なら、献上します」

「まあ、あまり無理をするなよ? 今回の魔導水晶も、まだ使い道というかな、宛先が決まらんのだ」

「宛先?」

「ああ、イリアドームの連中も欲しがるし、軍部も欲しがる。研究班も欲しがるし、王城としてもあるとありがたい。何処に持ち込むべきかで、ひと悶着だ」

「それは、王様もお心休まる時が無くて、お疲れ様です」

「あぁ全くだ。とんでもない功績を上げてくれるのはありがたいのだが、その成果物をどうするかで揉めるからな。次に持ってくるならせめて数ヶ月後にしてくれ」

「わ、分かりました」


 陛下の言い方が、何というか「嬉しいんだが止めてくれ」的な感じなので、俺も思わず吹き出しそうになりながらの応答になった。


「ではな。お前さんの屋敷は面白そうだからな、しっかり整備が出来たら、一度ワシも行ってみたいものだ」

「あ、はいっ。整備が済みましたら、王様をご招待申し上げます」

「そうか、楽しみにしている」


 と陛下が立ち上がったので、俺は片膝を付き床に頭を下げた。



 ***



「王様、怒ってなかったですね」


 謁見の間からの帰り道。定番のよく分からない通路を越えて、もうすぐヒューさんの部屋、という辺り。

 俺が言ったら、ヒューさんも胸をなで下ろす感じで、頷いてくれた。


「そうでしたな。陛下はシューッヘ様のご功績を、大変高く評価なさっておいでのようです」

「功績。今回王様が言ってたのは、常闇のサーベルの件がメインでしたけど、意外と大きいみたいですね、功績として」

「それはそうでございましょう。謀反人がまさに目の前で、王家秘蔵の魔剣を、陛下に向けた。それを完全に防いだのですから、功績としては大きいでしょう」

「とは言え……お金となると功績とは別、になるかなぁと少しヒヤヒヤしてましたけど、ローリスはお金があるっぽいですね」

「ローリスは、他国と比しても金銭に余裕がある国でございます。ただ、国庫金となると、使って良いかどうかは、全て陛下のお胸の内にて」

「今回はその王様の胸の内のお話しが聞けて、これからもある程度は……どの程度かはともかく、お金は自由に出来ると分かったので、良かったです」


 と、ヒューさんがピタッと足を止めた。もう少しでヒューさんの部屋、というちょっと手前。


「どうしました、ヒューさん」

「そう言えば、陛下をお迎えするのであれば、それなりに造作を考えなければ行けませんな」

「あちゃー、また難題が降ってきた……どうします、前の王様みたいに、地下を遊びスペースにしちゃうとか?」

「今上の陛下は、あまり遊びに熱を上げる方では無いので、実用的な方が良いかと思います。ただそれも、シューッヘ様のお気持ち次第です」

「俺の? というと?」

「あくまでシューッヘ様のお屋敷にございますので、どのように陛下をお迎えするかは、シューッヘ様がお決めになれば良い事、という事です」

「なるほど。俺の意見と言うか気持ちが、最優先になるって感じですかね」

「左様にございます。ただその中でも、ミスリルの力を用いた魔導空調などを活かした造作をされると、紹介されるのに良いかとは思いますが」

「んー、その辺りは俺自身知見が無いので、ヒューさんのアドバイスを受けたいですけど、それは良いですか? それともアドバイス禁止?」

「いえ、アドバイスは望まれれば致しますが、あくまでシューッヘ様の色にてお屋敷は染めて頂きたいと存じますので、最低限程度に留めたく」

「了解です。取りあえず、アリアさんには『安心して』って言わないとな。自分を責めてたりしたら、ちょっと可哀想すぎるし」


 と、また歩き出す。というか気持ち足早に俺は歩き出した。アリアさんが気になるからだ。


「あ、ヒューさん。アリアさんの凄い支払い、もう叱らないで下さいよ? 元はと言えばバルトリア工房の『お節介』が原因ですから」

「左様ですが……やはり大きな支出はご当主に伺って為すべきもの。その点では、アリアには非がございます」

「あーもう、ヒューさん。俺が良いって言うんだから良いの。それじゃダメ?」

「まぁ、シューッヘ様がこれで全てよしと仰るのであれば、わたしが口を挟む問題ではございません」

「じゃ、そういうことで。俺としては、アリアさんの泣き顔をあんまり見たくは無いから」

「畏まりました」


 そうして俺は、自分の屋敷へと急いだ。


いつもありがとうございます。ご評価、本当にとてもありがたいです。

より一層頑張りますので、是非この機に「ブックマーク」といいねのご検討をお願い致しますm(__)m

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