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【完結済み】破壊神のしもべはまったり待機中 ~女神様がほぼ仕事しないので、俺ものんびり異世界青春スローライフすることにした~  作者: 夢ノ庵
第2章 砂漠の魔法国家で貴族するのに必要なのは、お金とかより魔力の様です。

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第23話 いよいよ領地へ ~人員の割り当ても、現地乗り入れもスムースに~

 

 朝10時少々。既に俺の部屋に、全メンバーが集まっている。


 ヒューさん。

 博識で、昔の事にも詳しい。鉱山の経緯なども知る、知恵袋であると同時に、魔法も弩級である。


 アリアさん。

 俺の好きな人。見てて安らぐ。話して楽しい。時折難しい事を振ってくるので頭の体操にもなる。


 フライスさん。

 御者さんのイメージがやはり強いんだが、謎の精霊魔法を何の振りもなく使って馬車を繰る猛者。折れたナイフ、どうしたのかな。


 そして、新しい仲間、フェリクシアさん。

 元々はアルファさんだったが、俺を仕留めてしまったが故に捕縛され、その後釈放されるもグレーディッドを剥奪された、ちょっと可哀想な人。

 ただ、本来のと言うか、表向きな仕事であるメイド業が好きらしく、俺の新しい屋敷のメイドさんとして雇う予定。今日1日はトライアル雇用だ。


 と、ここで心配になるのが女性同士の相性問題。

 俺とフェリクシアさんはあくまで主従関係だけれど、嫉妬する女子がいても不思議では無いパターンだ。

 アリアさんがそういう面で嫉妬深かったりすると、今後の採掘にはフェリクシアさんを連れて行けない、と悩んでいた。


 が、ふたを開けてみたら心配する必要は無いようにも思えた。アリアさんとフェリクシアさんは、さっきから和気あいあいと会話に花を咲かせている。

 ……これが実はアリアさんのフェイク笑顔で……とかだったら、もう俺の分かる領域では無いな。そうでない事を祈りたい。


 因みに、どこまでもメイドが好きなのか、フェリクシアさんは王宮メイドとはまた別のメイド服を着ている。私物??


 でもって俺が加わり、このグループのメンバーは揃う、という訳だ。

 総員5名。実に小規模な「鉱夫部隊」である。


「さてシューッヘ様、これで面々は揃いましたな。お考えの作戦を、どうぞご披露下さい」

「そんな大層な代物でもないんだけどな」


 ヒューさんがあまりに(うやうや)しく言うもんだからちょっと萎縮してしまうが、作戦は考えておいた。


「まず今日の目的・目標は、鉱山の土質や岩石類の探索を主とします。初日から成果は期待しません」


 俺が言い始めると、すぐに他のメンバーの視線が俺に集まる。

 いや、ホントに大した作戦じゃないから恥ずかしいんだが……


「手法としては、アリアさんが使える掘削系魔法を用いて100番坑道の壁や床を破壊し、性質を調べます」

「了解、私の割り当てね」

「うん。前言ってた掘削系魔法、俺の指示に従ってだけど、ガンガン掘ってもらうよ。

 それと、併せて各人がそれぞれ、魔導水晶に対して魔力を使ってみたり吸い上げてみたりして、魔導水晶に慣れてもらいます。

 俺とヒューさんは既に魔導水晶の性質を少しは把握しているけど、アリアさん・フライスさんはまだとして、フェリクシアさんはどう?」

「私も魔導水晶については、特に採掘後・製品化前の物は、触ったこともない。原石に触れる機会が与えられるのは、ありがたいことです」


 フェリクシアさんは朝一からこの調子で、随分と堅苦しい。

 もう少し普通に接したいんだが、未だに距離感が摑めない俺だ。

 まぁ、トライアル雇用とか理由付けしつつ、もう本採用を決め込んでいるのだが、だからこそもう少し砕けた感じになりたいのだがなぁ。


「概ね、今日の作戦はこの位です。初日なので、城塞都市外の気候に慣れる、という点も含めて、13時頃帰着を目処と考えています」


 ここまで話して、俺は各自に質問を求めた。

 最初に手を上げてくれたのはフライスさんだった。


「シューッヘ様。私は主に何を致しましょう。魔導水晶に慣れる部分だけでは、皆様より安楽に過ぎて申し訳ない様に思います」

「安心して下さいフライスさん。俺とヒューさんとフライスさんの『男衆3人組」には漏れなく、『土砂運び』という雑用の力仕事が待ってます」

「えーっシューッヘ君、ヒューさんにまで土砂運び出させるつもりなの? 腰やられちゃうよ?」

「……だ、そうですが、言われたヒューさんとしては、若さや如何に?」

「まだ若い者には負けん、などとはさすがに申せませんが、身体強化魔法が使えますので足を引っ張る事は無いかと」


 ヒューさんが苦笑しつつ答えている。


 そう。頭数が少ない関係で、どうしても『凄い駒を雑用に使う』シーンが出てくる。飛車で歩しか取らない的な。

 今回で言えば、土砂は不要な『歩』だ。掘れば掘った分発生するし、取り除かないと採掘自体も進まない。

 一応女子には、出来るだけ泥まみれになる現場は避けて割り当てたかったが、掘削魔法はアリアさんしか今日の所は手持ちしていない。

 全員野球とか言うスローガンを掲げてたのは誰だっけ、テレビでそんなこと言ってた人が昔いたな。


「それでヒューさん、朝一に唐突にお願いした土のう袋は、手に入りましたか?」

「ひとまず王宮備え付けの、防災用土のう袋を借り受けました。明後日までには返却が必要ですが、今日の仕事が終わった後、ノガゥア家専用の物を準備致します」

「ありがとうございます。フライスさん、馬の調子はどうですか。全行程ほぼ砂ですが」

「並の馬では顎を上げてしまうので、強靱馬を用意しました。鉱山で何か掘り当てそれを積み込むことも可能な、馬力のある馬たちです」

「了解です。フェリクシアさんは、今回は『手伝えそうな所を手伝う』フリーのポジションと思って下さい」

「心得ました」

「アリアさん。今回の掘削部分のメインは、アリアさんだよ。何とか今日中に俺も掘削魔法覚えて、明日からは手伝える様にするね」

「ずっと掘削でも、あたしは別に良いよ? むしろ掘るだけで、掘り出し土砂を考えなくて良いなら、凄く単純で、楽な位よ」

「それは頼もしいや。じゃ、出発は15分後。馬車はどこに付けてますか?」

「外砂漠に一番近い、城塞都市裏門出た所の日陰に停めてあります。そのまま北上するだけなので、ルートも大丈夫です」

「じゃ、ここを15分後に()つとして、フライスさんは先に馬たちの所へ行って、準備をお願いします」

「分かりました。ではお先に失礼します」


 フライスさんが丁寧に頭を下げてから出て行く。


「えーっと……さっき言った通り、魔導水晶への慣れを、と思うんだけど、ヒューさん持ってきてくれた?」

「勿論でございます。大して重い物でもありませんので、ローブのポケットに入れてございます」


 ヒューさんがポケットに手を入れ、そこからチラッと魔導水晶を見せた。紫色。今は魔導水晶の中身は空か。


「ここで見物会を始めちゃうと終わりが見えないので、現地で。あと思いつきだけど、現地には着き次第、俺がアジャストを使おうと思います」

「なんと。シューッヘ様、いくら鉱山内が暑かろうとは申しましても、アジャストまで使わずとも、冷風程度は簡単に送れますが」

「いえ、魔導水晶探しの為には、俺の魔力が多少は減ってないと困ると思うんですよ。それなので、魔力を捨てる代わりの活用法です」


 魔導水晶を見つける俺の作戦。[マジック・ドレイン]で吸い取るのだけれど、俺が満タン状態だと入らないのでは、と思った。

[アジャスト]の1分発動は、少しだけど強めの疲労感があったから、あれ位の魔法を使って魔力を削れば良いと。

 単に魔力放出で捨てても良いんだが、折角なら有効活用したいし。


「なるほど、マジック・ドレインと申されましたかな、あの魔法は。バケツが満水では、新たに水が入ったのに気付きづらいと、そういうことですな?」


 ヒューさんが上手いこと言う。バケツの(たと)えは、俺には思いつかなかった。


「そう、まさにそれです。それと、マジック・ドレインの細かいテストも兼ねているので、事前にかなりしっかり魔力を削っても大丈夫と思ってます」

「うーん、シューッヘ君。あたしちょっと気になることがあるんだけど、良い?」


 小さく手を上げているアリアさん。上目遣いで可愛いったら。

 早くアリアさんとお屋敷で紅茶飲んでまったり過ごす生活を手に入れたい。


 が、今はそんな夢想をしている場合では無い。アリアさんの懸念を聞こう。


「うんアリアさん。何が気になったの?」

「昨日街へ出る前に、ロイース男爵が雇った侵入者がいたんだよね? アジャスト使うと広範囲に響く音が鳴るから、採掘してるのを知らせちゃうようなものだけど大丈夫?」

「基本、いつかはバレるんだし、全く知られないのは結局は無理だろうから、知ってもらう意味も実は兼ねてる。陛下にもアピールになるかなとか」


 城まで音が届くとは思えないが、密偵みたいなのがいたならいたで、掘り方さえ盗まれなければ良い。

 なにせこちとら、王様直々の指令でもって魔導水晶を掘削するんだ。誰から見られても、問題などない。


 と、頭の中で確認をしていると、ふとヒューさんが言った。


「シューッヘ様、アジャストの告知音は、魔法を組む段階で工夫すれば大きくも小さくも、また広くも狭くも出来ます。お考えがおありでしたら、どうぞご相談下さい」

「ありがとう。じゃ、俺も身の回りの物は大丈夫かな……そう言えば俺の着替えとか、フェリクシアさんに用意してもらっちゃったけど、ごめんよくよく考えたら、もうその仕事は終わってたね」

「いえ、ご主人様の御用を仰せつかるのはメイドの変わらぬ仕事。今はもう王宮メイドでは無いですが、ノガゥア家・シューッヘ様つきのメイドです。

 商店等に顔が利きますし、身の回りのお世話であれば慣れもあります。気にせずお任せ下さい。どんどん、私をお使い下さい」


 フェリクシアさんが深々と頭を下げる。


 うーん。この……。つい横に目が言ってしまう。アリアさんに。


 結局気になるのはアリアさんの反応なんだよな。一見何事も無く笑顔なんだけど、本当の笑顔? ちょっと不安がある。

 まぁ今は時間も無いし、胸にヤバい暗黒物質を秘めてたら、絶対何かのタイミングで分かるとは思う。今はとにかく、出発前の確認をしっかりしよう。



 ***



 用意された(ほろ)付きの馬車。馬はシンプルに2頭立て。筋骨隆々の馬が2頭で引くその馬車は、砂漠をまるで物ともしなかった。

 そんな強靱馬の『相変わらず揺れない不思議馬車』に乗ること30分程。山坂になってる部分は多かったので、ちょっとしたジェットコースター。


 いやしかし、砂漠の中を歩くんじゃなくて駆け抜けるって、どんだけパワフルな馬なんだ、強靱馬って。

 それかアレか? これが精霊魔法とやらの力なのか? 10属性魔法だけで手一杯で習得など考えも付かないが、パーティーに1人いると、良いなこれ。


 幌馬車なので結構風が気持ち良く吹いていた。熱風ではあるが、サウナの熱風みたいに乾いた風なので、存外気持ち良い。

 オーフェンからローリスへ来た時の馬車のように箱型とかでは無く、左右も前も幌の隙間から見られる。

 徐々に近付いてくる横にだだっ広い鉱脈が、緊張感を高めてくれる。鉱山は岩山という感じで、苔類が幾らか岩を覆っている。


 鉱脈がかなり大きく見える様になったところからは足下の砂漠は終わっており、サバンナのような乾いた平原になっていた。


「間もなく到着致します、速度を落としますので、お座りになった上で、手近な物におつかまり下さい!」


 御者席からフライスさんの声が飛んだ。

 いよいよ、俺の「領地」に着く。


 ……領地の事を思い出したのはつい今し方なんだが。

 この見える山をほぼ全部所有してるって実感は無い。完全にゼロ。


 領地だけれど、ある意味単なる「工事現場」だな。

 ここから魔導水晶という産物が生めれば、合格点だ。


 今日は初日、慣れもないのでわずかな時間にした。

 無駄を省いて、明日からの本格作業に向けての準備を頑張ろう。


もし「面白かった!」「楽しかった!」など拙作が楽しめましたならば、

是非 評価 ポイント ブクマ コメントなど、私に分かる形で教えて下さい。


皆様からのフィードバックほどモチベーションが上がるものはございません。

どうかご協力のほど、よろしくお願い致しますm(__)m

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