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【完結済み】破壊神のしもべはまったり待機中 ~女神様がほぼ仕事しないので、俺ものんびり異世界青春スローライフすることにした~  作者: 夢ノ庵
第2章 砂漠の魔法国家で貴族するのに必要なのは、お金とかより魔力の様です。

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第13話 俺とアリアさんで差が付いた風魔法 そして圧巻の土魔法……使いの方かな、ドジっ子過ぎて圧巻。

 そして3講目。風魔法。

 メイド魔導師ガンマさんによる魔法講義は、30分ごとにそれぞれに対応するという、1対1教育だった。


「ではまず、ノガゥア卿からでーす。フロアに下りてきて下さいねー♪」


 ガンマさんは、随分と陽気そうなキャラのメイドさんだ。丁度日本のメイド像にピッタリはまりそうな感じの。

 フロアに一足先に下りて、こちらに向いて手を振って、にこにこしている。楽しい講義でありますように。


「じゃ、お先に行ってくるね」

「気をつけてね、風魔法は攻撃魔法だと鋭いのが多いからね!」


 アリアさんの忠告を背に受け、俺は足早にフロアへと向かった。


 フロアへ下り立った、すると、


「はいノガゥア卿遅ーい、罰として3本行きまーす、死ぬ気で避けましょう♪」


 えっ、と俺が問う間もなく、魔法名詠唱が入る。ヤバっ、何が来るの。


[トリ・エアロカッター]


 身構えている俺の両頬と髪の毛の一部に、ビシッと音が響く。髪がハラハラと落ちる。

 頬に手を触れると、べったりと血が付いてきた。痛みすら無い……う、動く間も当然無いんですけど。


「はーいこれが風魔法の一番典型的な攻撃魔法[エアロカッター]の複数派生版ねー」

「その、エアロカッターって……」

「空気を後押しする速度に差を付ける事によって、真空の刃を生み出して、それを相手にねじ込む。すると、スパッと♪」


 スパッとー、と気楽そうに言ってくれるが、これ、自動発動な絶対結界以外で防ぐの、無理じゃね?

 俺の頭の中に、傷まみれ・血まみれの俺がフロアに倒れている姿が浮かぶ。いやいやこんなリアリティー、要らない。


「が、ガンマさん。これ避けられる物なの?」

「ん? 死ぬ気で避ければー、避けられるよー?」

「今の、もし中途半端に避けてたら、俺って……」


 ちょっと指先で首筋を触る。刃がズレて当たってたら……


「大丈夫! 縦位置は固定してたから、変にジャンプしなければそれは無かった!」

「いやいや、必死になって飛ぶことだってあるじゃん! ジャンプしてたなら?!」

「うんっ、こう……」


 ガンマさんは指先で、首筋を前から後ろにさっと払って見せた。しかも満面の笑みだ。

 この講義、超ヤバいんでは……?


「今のは身体で味わってもらったけど~、今度は壁に打つからよく見ててね♪」

「は、はい」


 ガンマさんの、可愛さを完全にSっ気に振り切ったような笑みが怖すぎて身体が硬直してしまう。

 と、ともかく見よう。見てなかったりしたら、またエアロカッターの餌食にされかねない……


「はい行くよー、[エアロカッター]」


 魔法名詠唱が終わった瞬間に、壁がザシュッと音を立てている……様に見える。

 詠唱から到達までの時間が短すぎて、これ、詠唱されたら一巻の終わりじゃないかとしか思えん。


「どう? 見てみて、防げそう?」


 俺は縮み上がった身体と心で、思い切り首を横に振る。


「そうだよねぇ~、風魔法の刃は早いからねぇ~。でもぉ、弱点がない訳ではないの。ベータっ」

「はいねー、[フォグ・フィールド]!」


 と、突如周りが濃霧に満たされる。


「こういう~、重たい空気の中だとねぇ~? いくよーノガゥア卿?」


 え、行くよーって、また?!


[エアロカッター]


 俺は何処かを切られるのを覚悟しつつ目を見張った。

 すると今度は、明らかにさっきよりも速度の遅い「刃」がすね目掛けて低く飛んでくるのが見えた。

 俺は飛んだ。その真下を刃が通り過ぎて行き、着地。第二「()」は無い。


「そうそう、良い感じ~。じゃ、もう少し増やすよー」


[ダブル・エアロカッター]


 さっきと同じ、ゆっくりした刃が直進してくる。狙いを見定めるのは大変だが、それさえ出来れば、避けられる!

 俺は両方の肩口を狙われてるのが分かったので、思い切って地面に這うように伏せた。小さく「ヒュン」と音がして、刃は通り過ぎた様だった。


「おー頑張ってる頑張ってる♪ コツは摑めたかな?」

「な、何とか。そのゆっくりの方ならば……」

「風魔法は、コンディション次第なの♪ 乾燥した、埃の無い空気が一番ね。でも、必ずしもそうは行かない。だから、最強って訳じゃ無い。

 でも、コンディションさえ整えば、暗殺なんかに最高よ♪ 気付いたら首が落ちてるからっ。あなたもその餌食にならない様に、ね?」


 ニコッと、してるんだが……どうにもこの人の前にいると、いびり殺されるのが頭に浮かんでしまう。苦手なタイプだ。


「じゃちょっと時間短いけど、アリアさんと交代~、はいノガゥア卿はご退出くださーい」


 俺は足早にその場から「逃げ出した」。明らかな強者の前で、ビビる俺。地球の時と全く同じだ。

 アリアさんがどういう目に遭わされるのか……余りに酷い様だったら、どんな魔法を使ってでも干渉しよう。


「はーいアリアさんご到着~、定刻ピッタリ、優等生です♪」


 ……って、俺と随分扱い違うな?

 アリアさんが危険な目に遭ったなら……と思いつつ遠い席で構えていたんだが、霧の中から普通に女子トークの様な話し声と、あははと、楽しそうな笑い声を響かせている。

 えーと、あれ? さっきまでのSっ気モリモリのガンマさんは何処へ?


 と思っていると、魔法名詠唱の様なフレーズが。思わず力が入る。


[エリア・エアーブロウ]


 この席まで届く強風が吹いてきて、霧のフィールドは一気に払われた。アリアさんとガンマさんの姿が、フロア中央に見える。

 二人の様子は、まるで仲良し女子2名、と言う感じ。この短時間で何を話したのか知らないが、随分距離が近い。


 そこからは、風魔法についての「楽しそうな実習」が、目の先の方で行われていた。

 アリアさんが「これだと洗濯物乾く」とか、「あーお皿乾かすのに良いかも」とか。攻撃魔法何処行った?

 そんな『生活実習』みたいなのがしばらく続いて、ジリリリ、とベルが鳴った。



 ***


 休み時間。アリアさんに聞いてみた。


「ねぇアリアさん、ガンマさんといきなり仲良さそうだったけど、元から知り合いとか?」

「えっ、そんなことないよ? お話し出来たのは今日が初めてかな?」

「なんか凄く和気あいあいとしてたから、どうやったらそうなるのかなって思ってさ」

「ああ、それは……」


 と、アリアさんが俺から目を逸らす。アレ?


「アリアさん?」

「んー、ごめんそれはちょっと女同士の秘密って事で!」

「えっ、ちょっとショック」

「んーごめんね、言ったら言ったで、もっとショックだと思うから……」


 アリアさんの、何だか可哀想なものを見る目が痛い!!

 ガンマさんに何を吹き込まれて……いや、そんな考え方してたら、また熱湯風呂の刑にされる!

 ここは男として、堂々としていないと……うん、聞かない。聞かないことにするっ。


 と、ジリリリ、とベルが鳴り、次の『地獄』の到来を知らせた。


 ***



「えーとぉ、私デルタって言います、土魔法特化魔導師です」

「ちょっとデルター、そのセリフは最初の自己紹介のセリフでしょ」


 第一声早々、ベータさんからヤジが飛ぶ。


「あ、間違っちゃったぁ。あの、今日は、お二人に、えーとなんだっけ?」

「今日は教練。今はあなたの時間」


 次いで、アルファさんからもツッコミが入る。


「そうでしたぁ、今日は教練として集まってもらったので、土魔法の講座をしたいと思いまーす」

「講座ってあなた、相手はどちらも上級魔導師クラスよ? 生活講座みたいな言い方合わないわよ♪」


「あれぇ、何だかアウェイ感が強いですぅ」


 ……と、言われてもな。こっちに視線を振られても、何とも言いようが無い。


「それじゃあ取りあえず、土魔法自体がマイナーなので、今回はその結果から見てもらいまぁーす」


 席に座ったまま、フロアに手をかざすデルタさん。


[ビルドアップ・ヒュージコンテンツ]


 詠唱は、失敗したのか、何も生じさせない。

 ん? だが何故か、デルタさん以外の全てのメイドさん達は、突っ込まないどころか焦った様な顔で荷物に飛びついた。

 次の瞬間。下から突き上げる様な大地震に見舞われた。いや、地震ではないと分かったのはその後だが。


 思い切りひっくり返されて地面に背中から落ちる。更に地面が大きくうねり、俺はフライパンの上の豆の様に、地面を飛び跳ねることになった。


 何とか地震が落ち着いて……一息ついてフロアを見ると、フロア目一杯に土色の巨大な建造物が建っていた。

 何という規模。この地震の様なうねり・地響きがあったその一瞬で、3階建てのマンションの様な物が建っている。なんつー大規模な魔法だ……。


「土魔法ってこんな感じですぅー、分かってもらえたら、講座は終了です、お疲れ様でしたー」

「おいおい、終わろうとしてんじゃないよ。まだ55分あるよあんたの時間っ」


 ベータが真っ先に、再びツッコミを入れた。

 いやいや、冷静にツッコミ入れられる余裕があるのが凄い……コレを知ってるからなのか?

 さっきもメイドさん達は、一斉に荷物の保護に動いた。これだけ大規模に揺れるとなれば、荷物もただでは済まないだろう。


「じゃあ、内覧会でもしますかぁ~?」

「しなきゃいけないのは、解説だと思うわよ♪」

「あぁ、解説……私の一番苦手な」

「建築以外の全部が、一番苦手ってあなたいつも言ってる」


 内輪もめとまでは言わないが、デルタさんの行動に他の人のギアが嚙み合っていない感じがする。

 かと言って俺がとやかく言える次元の話では無いから、見守るしか無いんだが……


「じゃあ、解説は端折って、実際に触って見る会、って事でー、行きましょう!」


 デルタさんが席から立ち上がるなり駆け下りていく。危なげなステップだなと思ってた矢先、


「ひゃん!」


 デルタさんは最後の段を踏み外して転んだ。

 うーん、グレーディッドの基準に、戦闘評価とかは無いのかな? 単に魔力の使い方だけだろうか。

 味方にあんなうっかりさん的な人物がいては、戦いの時には困りそうな気がするが……


「お二人ともー、下りてきて下さいねーっ」


 デルタさんが呼ぶので、俺はアリアさんと共に、巨大な建物が建つフロア部分へと足早に下りた。


「うわぁ……本当に建物が建ってるわ」


 アリアさんが建物の角をコツコツ叩きながら言った。

 俺も建物に触ってみるが、これが魔法による物だと、言われない限り分からない。立派な土作りの建造物だ。

 しかも、魔法製だからと言って何かおかしい所がある訳ではない。堅牢な建て方の、土作りのマンション、という感じの外観。


 デルタさんの声は、既に建物の中からしている。俺とアリアさんは顔を見合わせたが、入ってみることにした。


 中に入ると、なるほど土魔法で作ったならではの、建造物としての中途半端さはあった。

 例えば、階段はあるんだが手すりは無い。部屋はあるがドアは無い。窓枠はあっても窓ガラスは無い。

 土で作れる限りには精巧に作ってあるのだが、土以外が必要な所に、部材が入っていない感じだ。


「皆さーん、こちらのお部屋に集合ですー」


 と、上のフロアから声がした。こちらと言われてもフロアが違うので何処なのか分からんが、ともかく階段を昇る。


「あっ、こっちですこっちー」


 階段を昇りきると、右側の部屋から声がする。声のする方へと進む。

 そこには、デルタさんが待っていた。


「デルタさん、この建物随分立派ですね、一瞬で作ったとは思えない位に」

「えへへ、立派ですかぁ?」

「凄いと思います、デルタさん。これが土魔法の力ですか」


 アリアさんがデルタさんに迫っている。


「土魔法はぁ、知られていないだけで、しっかり使えれば凄いんです。『無から有を生む』魔法として、一番魔法っぽいですしっ」


 ……魔法の世界の住人に、「魔法っぽい」という発想があるとは思わなかった。

 やはり「ぽい」「ぽくない」は、たとえ魔法が当たり前の世界であっても、存在する模様だ。

 俺なんかからすると、今日の魔法教練はどれも「魔法っぽい」ものばかりで、どれも一様に凄いものばかりだった。


「もしアリアさんが土魔法を使うとしたら、どう使いますー?」

「えっ? うーんと……薪で火を入れる釜を作りますかねぇ。その位しかアイデアが無くて」

「ピザ作るみたいな釜ですか? こうしますー」


 と、デルタさんが両手を下から上へふわっと上げた。すると、いきなり床からメリメリっと土の、ピザに丁度良さそうな釜が出てきた。

 今、魔法の詠唱無かったよね? 今の何?


「あ、詠唱を忘れましたー、[ビルド・スモールコンテンツ]」

「い、いや今更言っても」


 今度は俺がツッコミか。

 既にそのスモールコンテンツとやらに当たるピザ釜は、もう目の前に完成している。当然、魔法名詠唱をしても、変化するものでも無かった。

 しかし、完全無詠唱でも、出来る人は出来るのか。俺だけなのかと思った、別に女神様の特別って訳では無いのか。


「あ、あ、今の詠唱忘れは、忘れて下さいー、でないと後でカッパさんに怒られるぅ」

「カッパさん?」


 頭の中に浮かんだのは水性のきゅうり好きのアレだが、そうでは無かろう。ギリシャ文字の方のカッパだ。

 カッパと名乗っていたのは、確かメイド長さん。あのおばさまも、怒らすと怖いんだろうな。何せ、この人らのトップなんだし。



もし「面白かった!」「楽しかった!」など拙作が楽しめましたならば、

是非 評価 ポイント ブクマ コメントなど、私に分かる形で教えて下さい。


皆様からのフィードバックほどモチベーションが上がるものはございません。

どうかご協力のほど、よろしくお願い致しますm(__)m

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