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【完結済み】破壊神のしもべはまったり待機中 ~女神様がほぼ仕事しないので、俺ものんびり異世界青春スローライフすることにした~  作者: 夢ノ庵
第2章 砂漠の魔法国家で貴族するのに必要なのは、お金とかより魔力の様です。

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第9話 風呂から上がったら、明日の行事予定が入ってきたでござる。

 ヒューさんから風呂責めの刑? を受けて、その夜。ようやく火照りも抜けた、その頃だった。

 俺の部屋をノックする人がいる。誰だろ、と思いドアを開けてみると、メイドさんとヒューさんだった。


「お加減はいかがでございますか、シューッヘ様」

「幸い、ようやく湯あたりも何とかなったみたいです。もう二度と勘弁ですが」


 思い出すと、嫌な気分と言うより俺自身の女々しさの方が、今では恥ずかしい。

 アリアさんの覚悟。もしあそこで俺が嫌だと言ったら、一生修道院。それすら覚悟して、俺の前に立ってくれた。

 それなのに、アリアさんの気持ちがどうの、純粋に俺を思ってくれてないとかいじけて。今思えば恥ずかしい。


「お目が醒めたようでございますから、再度あのような荒行は要りませぬでしょう。


 時に本日は、先日頼まれていた内祝いの菓子をメイド支度室付けで届けましたところ、

 メイド長の方からご挨拶申し上げたいと、その様な話にてお迎えに上がりました。

 王宮メイド達は少々特殊な立場にありますので、アリアも同席させて学ばせようと思います」


 うん? メイドさんが特殊な立場だからアリアさんが何か学べるの?

 うーん、ちょっとよく分からない。行きがてらで良いか、聞いてみよう。


「シューッヘ様、すぐに出られますか? もうアリアもメイド支度室にて待ち構えております」

「す、すぐ出られます!」


 アリアさんの事を言われると俺は弱い。惚れた弱みとかいう言葉は聞いた事がある、まさにそれ。



 そうして部屋を出てメイド支度室に向かう。同じフロアの西端と東端であるが、王宮自体が広いのでそこそこ距離はある。


「ねぇヒューさん。王宮のメイドさんから、アリアが学べる事って何です? お客さんの迎え方とか?」

「確かに、それもまた学ばせた方が良いかも知れませんな。アリアは街の娘ゆえ、貴族の妻として人を迎えるだけの知恵があるかどうか」


 どうやら、俺が指摘したポイントはメインではないらしい。

 ん? 今貴族の妻が云々って言ったか。うーん、もう婚礼準備なの? まだ心の準備出来てないよ?


「アリアにしろシューッヘ様にしろ、学びはあるであろうと思うております。主題は『魔法』にございます」

「魔法? ですか? メイドさんって言うと……遅刻した朝に、シャイン、って魔法使ってたのは、見ましたけど」

「それだけの内容と範囲でしたら、アリアもシューッヘ様も呼びつけは致しません。内祝いも今回ほどに上等にもしません」


 う、内祝いに何を渡したんだろう? 文化が分からないのでヒューさんに任せたんだが……何かついでの事まで付いてくる模様。

 魔法のことであれば、俺も確かに知りたい。魔法の行使は何となく感覚で出来るように思っているが、それだけでは無いのかも知れないし。


「まもなくですな。メイド長から挨拶があるでしょうが、適宜お受け下さい。本題は私の方から申します」


 それは助かる。というかそうしてもらわないと、そもそも『メイドさん=魔法』の等式が、やっぱり頭の中で結びつかない。

 と、メイド支度室のドアが開いてメイド長さんが出てくる。一人だけ恰幅(かっぷく)が良いので、この人だけは認識出来ている。


「ノガゥア卿、この度は大変結構な賜り物を頂き、誠にありがとうございました」


 ノガゥア……「卿」。初めて言われる呼び名だ。小説でしか聞いた事が無い呼称。まさか自分がそう言われる日が来るとは……。

 ただ今回は俺自身は品物選定に関わっていなくて何を贈ったのか知らないので、曖昧に笑顔で誤魔化す。THE・日本人スマイル!


「本日は私たちの本所属についての話と伺っております」

「シューッヘ様に代わって、わたしから改めて。本日はまず、そこにいる我が娘、アリア共々、シューッヘ様に王宮メイドの本質を教えてあげてもらいたい」

「かしこまりました」


 と、ヒューさんに手招きされたのでメイド支度室に入る。アリアさんも横に来てくれたので、ちょっと目配せしてみた。

 中は飲食店の厨房の様に、幾つもの金属の戸棚があり、また食器棚は食器棚で随分高いものが幾つか並ぶ。

 この部屋に入るのは初めてだが、思ってたよりも広い。それでいて相当な量の物、見える限りグラス類が多いが、後はアレは……コンロなのかな? 横に鍋も吊してある。


「ノガゥア卿はこちらにお入りになるのは初めてでいらっしゃいますね」

「あ、はい初めてです。入口辺りまでは来たことはありますが、中までは」

「ここが、王宮付メイドとしての主な仕事部屋にございます。ですが本来、私たちの所属は別にございます。さあみんな並んで頂戴」


 メイド長さんの掛け声で、それまで壁際に集まっていた9人のメイドさんが、支度室の中央に横一列に並んだ。


「私たちの本所属は、近衛隊・魔法師団特殊工作部隊。いずれにしても、本来の名を隠し、コードネームで動きます」


 ニコッと微笑むメイド長さんであったが……肩書きが随分不穏。

 特殊工作部隊? しかも魔法師団って事は、全員魔導師ってことか?


「メイドの身分に扮しておりますが、全員が単騎でも部隊を率いても戦える、そのレベルの戦力を有しております」

「ちょっと待って下さい、そんなバリバリの軍人さんが、何故メイドを? メイドさんはメイドさんで別に雇えば良いような……」

「仰る事はごもっともでございます。ただ、メイドが近くに居ても、誰も警戒しないでしょう? まさかメイドが、グレーディッドの魔導師とは思わないでしょうし」


 また微笑むが、今度の微笑みはちょっと裏がありそうな笑みに見える。と言うか、グレーディッドの魔導師って何だろ。


「シューッヘ様。今出て参りました『グレーディッド』とは、我が国で上位30名に当たる魔導師に与えられる、特別な称号にございます」

「えっ、それって……国の最上級レベルの魔導師さんが、メイドさんの中に含まれているってこと?」

「少し違います、ノガゥア卿。私たち全員が、グレーディッドなのです」


 全員。俺も結構驚いたが、一番驚いていそうなのはアリアさんだった。思わずなんだろうが、後退(あとずさ)っている。


「あらあらアリアさん、顔色が悪いわねぇ。何か『おいた』でもする予定でもあった? 私たちはお仕置きも出来ますよ」


 国の最強レベルの魔導師の『お仕置き』。それ、単なる拷問とかじゃないのか?

 アリアさんの顔色を覗いてみると、確かに良くない。

 まぁそりゃ、おいた云々はともかくとして、住んでる部屋のすぐ横に10人も最強魔導師がいたって知ったら、気は落ち着かないだろう。


 と、俺たちの動揺をよそに、メイド長さんは更に続けた。


「そして、それぞれが得意属性に特化したグレーディッドでございます。さぁ、順に自己紹介を」


 促されて、向かって一番左のメイドさんが一歩出る。


「アルファ。火魔法特化魔導師」


 それに続き、ベータ、ガンマ……と一人ずつ、俺にはギリシャ文字に聞こえるコード名? と、特化魔法を述べる。

 少し驚いたのは、回復魔法が含まれているから、どこだかって国の独占になってるはずの聖魔法の特化魔導師がいたことだ。

 もちろん、失伝したという時空魔法は、さすがに含まれていないようだが……


「そして最後、カッパが私。私はオールジャンルなので特化魔法というのは無いのだけど、特に諜報や、逆に防諜は得意ね。そんなところかしら?」


 と、メイド長さんがヒューさんに視線を向ける。ヒューさんは黙って頷いて答えた。


「今まで黙っておりまして、誠に申し訳ありません。シューッヘ様が緊張なさってもいけないと思いまして」

「まぁ確かにびっくりはしましたけど……普段から、いつもずっと、このメイドさん達がメイド業を? なんか軍事的にもったいない気が」

「左様です、シューッヘ様の読みの方が正しゅうございます。この者達が集まるのは、特任ある時のみでございます」

「特任? 特別任務、で良いのかな……? それでその、特別任務とはなんです? もしかして、俺、関係してます?」

「関係も何も、ど真ん中にございます。『英雄シューッヘ様を、他国諜報員から守るため』。これは身体的にも諜報的にも、でございます」

「つまり……俺に誰か襲撃者がいたら撃退する、っていうのと、俺の情報が漏れないようにガードする、っていう2つがメインのお仕事?」

「全く左様にございます」


 言われて、改めてメイドさんを見返す。

 目が合うと、柔らかいニコッとした笑顔が返って……こずにニヤリとするメイドさんもいるが、概ね皆、普通のメイドさんだとしか思えない。

 まぁ、「普通のメイドさん」の基準が日本だから、そもそも基準自体がエンタメ寄りになってるのは否めないのだが。


「そこで明日から4日間、メイド達から魔法講義を受けて頂こうと思い至った訳です」

「このお話しはあくまでここだけのお話しだから、他言無用にして下さいね、ノガゥア卿も、アリアさんも」


 メイド長さんが口元に一本指を立てて、しっ、と鋭い音を立てる。

 メイド服ではあるものの、恰幅の良いおばさまという感じで、更に『この9人』を束ねる人なので、可愛さは無い。むしろ怖いと感じる。


「えーと……魔法の講義って、座学ですか? それとも実技あり?」

「実技ありに決まってるじゃーないっすかー、ノガゥア卿」


 返ってきたのが不敵なニヤリ顔だったメイドさんが、突然割り込み発言してきた。

 腕をポキポキさせてる。おいおい、ここで今ドンパチ始めるつもりなの? ねぇちょっと。


「こーらイオタ、あなたのダメなところよ。不規則発言は控えなさい」

「あーい」


 全然反省した様子もなく手を上げて一歩下がった『イオタ』さん。確か、闇属性だったか。

 光属性ってのはまだ理解出来るし、多分俺の『光自由』も近い領域なんだろうと思う。

 けれど、反対の闇属性ってなんなんだろうな。影の関係? 光が「無い」だけじゃあ、ないんだよなきっと。


「魔法教練は、明日の10時より開始します。教練に使う場所は、私たちメイドがご案内しますので、ここに集まって下さい」


 講義ではなく、教練……言葉が違うだけでもかなり印象が変わる。鬼軍曹とか出てきそうだ。

 明日からは少し厳しい日が続きそうである。俺としてはありがたい反面、先生役が格段に凄い相手だから、完全コテンパンにされそうな嫌な予感に少し怯えた。

いつもありがとうございます。ご評価、本当にとてもありがたいです。

より一層頑張りますので、是非この機に「ブックマーク」といいねのご検討をお願い致しますm(__)m

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