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【完結済み】破壊神のしもべはまったり待機中 ~女神様がほぼ仕事しないので、俺ものんびり異世界青春スローライフすることにした~  作者: 夢ノ庵
第2章 砂漠の魔法国家で貴族するのに必要なのは、お金とかより魔力の様です。

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第3話 脱出ゲームのその先に ~答えはすぐ近くにある!~

 俺はヒューさん験担ぎでもって、3と決めた。

 何故3か? ヒューさんがペルナ様に捧げたメダルの剣の本数、房になるリボンの枚数がいずれも「3」だったから。


 それだけかって? それだけさ。人間最後の覚悟は、何にでもすがるものだ。


 俺は暗闇の中を、十字は踏まないように、対角の位置になる3に向かい、思い切り、光る3つの丸を踏みつけた。



 瞬間、視界は暗転した。足下を見る。真っ暗だ。

 俺の予定通りなら、今俺は「3」フロアに居て、近くの足下に3つ丸の照明スイッチがあるはずだ。


[エンライト]


 カッと光が全域を照らす。うん、問題無い、足下の丸は「3」だ。

 踏む。照明が付いた。あ、俺今から出てくんだった、もう一回踏んで、照明を消し、エンライトも消した。

 俺のエンライトは短時間でも強い光なので、蓄光素材がよく光っている。


 光っている「1」に、俺は途方もない疲れを感じつつ近づき、踏んだ。



 パッと周りは開けて、庭に出た。外の光がまぶしく、そして懐かしい……

 そうだ、ヒューさんは? 無事に出られているはずだけど……


 俺は建物の中に入った。おお涼しくて快適。こりゃ暮らすには良物件だわ。

 いやいや、まずヒューさんだ。呼んでみよう。


「ヒューさーん、いますかー」


 すると、2階から、馴染みの声が聞こえた。

 ヨカッタァァァ、俺のミス、ゼロ! 臆病設計者に完全勝利だ!


 俺はヒューさんの声がした方へと進む。さっきはリビング左手の階段を上がったが、右側から声はした。

 右側の階段を昇る。こっちの階段は、よく見ると真ん中に絨毯が引いてあった痕跡がある。線がうっすら。


「ヒューさん、どこですー」


 呼んでみると、返答は随分奥から聞こえてきた。ズンズン進んで、一番奥の突き当たりのドアを開けてみる。


 いた。

 ヒューさん、無事に居た。


 良かった……


 そう思った時、俺の膝は支えを失ったように崩れた。


「大丈夫でございますかシューッヘ様!!」


 辛うじて手を床に付いて、突っ伏すのだけは避けられた。そこにヒューさんが駆けつけ、肩を支えてくれた。


「謎解きは、しばらくもう良いです……」

「左様ですな。わたしも寿命が確実に数年縮みましたわい」


 二人して、大きな溜息。

 そして、二人して、その溜息をクスクス笑う。


「シューッヘ様の名推理のおかげさまで、わたしはすぐ地上に出られましたが、シューッヘ様は随分と掛かられましたな。どうされました」

「言ったらきっと怒りますよ、ヒューさん」

「なんですもったいぶって。怒るかも知れませんが、生煮え気分は嫌ですな」

「ははっ、生煮え……それもしばらく要らないや。実はヒューさんに『2』を推した時点では、決して100%安全、では無かったんですよ」

「ほう、それで、その続きは」

「えっ。それだけです。安全っぽく言ってたのに、安全じゃないかも知れない選択肢を押しつけたので……」


 言うと、ヒューさんが豪快にはっはっはと、歯まで見せて笑っていた。


「あれ? 怒らせちゃうと思ったんですが」

「怒るはずもございません。シューッヘ様は、二人が同時に助かる方法を、必死で考えてくださった。助かったのは、結果論です。

 万が一助からなかったとしても、わたしは恨み言を言うつもりなど微塵もございません」


 はは、ヒューさんらしいや。


「俺も最後の2つに絞れた時に、ヒューさんに助けてもらったんですよ」

「ほう? わたしがお助けしたと?」

「えぇ、ヒューさんが女神様に捧げたメダル。アレの表にあった剣の数が3本。飾り布の数が3枚。だから『3だぁ』って。もう勢いです」


 と、俺も笑う。勢いだってさ、今考えれば合理性の欠片もないじゃん。


「女神様への……ん? 恐れながらシューッヘ様」

「はい?」

「あの時……女神様に答えを伺えば早かったのでは?」


 ……


 …………


 ドサッ。俺はわざと床に倒れ込んだ。


「シューッヘ様?!」

「俺、ムチャクチャ頭使ったのに……そんな簡単な答えの取り方があったなんて……うぅ」


 泣きそう。因みに聞いてみよう。


「女神様、女神様。聞こえますか女神様」


 俺は突っ伏したままで顔だけ上げて、顎は床に付けて、言葉に出した。

 ヒューさんも「聞こえる人」なので、ここは気にせず普通な声と言葉で話す。


『聞こえるし見てたけど……あんた、バカ?』

「ガーン、開口一番女神様にバカ扱いされてる!」

『そりゃだってねぇ……幾らなんだって、死人が出るような設備がある物件、普通に売り出すと思う?』

「なるほど、さすがにございますな女神様は」

『ヒュー。気付かないアンタもアンタよ。何の為に年取ってんの? 2人揃ってバカよ。バカバカ』

「これは手厳しい」


 と、ヒューさん苦笑いをしつつ、腰を下げて祈る様な格好になった。


「ペルナ様。因みに地下は如何様な仕組みになっておりましたのでしょうか。地下までは人間見えぬもので、教えて頂きたく」


『地下は4階層あるわ。そこはあんたたちの予想通りね。転移の魔法陣は、建設された当初は普通に、1フロアずつ上がったり下りたりだったわね。

 最後の所有者、当時遊び好きな男爵として有名だったんだけど、王様を招いて、脱出ゲームをしようって話になったのよ。それで、仕様変更よ。

 実際国王、あんたが忠誠を誓った前王だけど、遊びに来て。いたく気に入ったとみえて、その貴族に古語で興奮・高揚を意味する言葉である

「エクサルシス」という姓を新たに授け、併せて陞爵させエクサルシス侯爵になったわ。あの国王、この遊びをよっぽど気に入ったみたいね』


「なんと、エテルノハルノ2世陛下がお楽しみになられた、遊興施設だったのでございますか?!」

『元々は屋敷よ普通にね。でも、地下の魔法的改装だけで見事に莫大な富を得た貴族として、実はひっそりだけど語り継がれてるわ』

「エクサルシス侯爵家に、そんな秘密があったとは……わたしが陛下に出会う前の話ですか?」

『そうね。だからあんたも知らないのは当然と言えば当然だけど』


 ほほう、実際『脱出ゲーム』専用に転移魔法陣とかを組んであった訳か。そりゃ簡単じゃない訳だ。

 俺は何とか脱力感から立ち直り、その部屋を眺めた。主寝室のようで、随分広く、ベッドの跡の様な擦れが床にある。


「女神様、俺がここに住むの賛成ですか」

『意味がよく分かんないんだけど。何が言いたいの?』

「あれ、てっきり女神様の言葉って無線波みたいなものかと……鉄壁に遮られません?」

『あんた分かってないわねぇ。異世界に、次元スライドさせて人を飛ばせる女神が、無線みたいな単調な仕組みで見たり話したりしてると思う?

 第一、無線波だったらなんで今、鉄壁の中のあんたは私としゃべれてんのよ。あんた高性能受信機なの? やっぱりバカでしょ』


 がーん、またバカ扱いされた。バカじゃないもん!


『因みに今あんたが鉄の壁扱いしてるその外壁だけど、単なる鉄じゃないわよ。魔法防御を上げる目的で、結構な量のミスリルが配合されてるわ』

「ミスリル……ヒューさん、鉄とミスリル、混ぜると丈夫になったりするんですか?」

「今はミスリル自体が我が国ではほとんど採掘されませんので、わたしもよく分かりませぬが……」

「女神様すいません、ミスリルの性質、講義してもらって良いですか」

『あらぁ高く付くわよ? 何本かお酒供えなさいよね』

「ヒューさんこの辺に酒屋は?」

「貴族街故、商店は少ないですが、酒とつまみであれば上等なもの『のみ』が揃います」

「とのことです、後で買ってお供えすることを誓いますー」

『あら殊勝なこと。じゃ、ちょっとだけ講義してあげるわ』




 ミスリルは、既存のあらゆる金属とも異なる魔法金属である。魔法金属とは、魔力を内側に貯められる性質を持つ物を言う。

 ミスリルの他に魔法金属としては、この世界では、アダマンタイトが古代に採掘された記録は残るが、博物館級の品物となっている。


 ミスリルは、色・光沢・金属としての堅さは、銀に類似する。但し、それは魔法力を籠めていない場合の、純金属として、である。

 他の金属との合金にする、例えば鉄-ミスリル合金とすると、飛躍的に硬度が高くなり、武器などに最適である。

 鉄-ミスリル合金で作った剣などは良く魔法力を通す上、一部を貯め込む性質があるため、いわゆる魔法剣として使う事が出来る。

 ミスリル合金で最も有用なのは銀-ミスリル合金で、これはアンデッド類への破滅的な武器を作るのに適している。


 なお、一般的な武具であれば、合金中のミスリルの割合は1%以下で十分で、大魔法を用いる魔道具として使う程度に

 魔力のストックが必要な場合でも、ミスリル含有率は10%以下が適当である。




『ちなみにこの家の外壁は、ミスリル1.5%含有よ。買い取って、解体して売れば、一財産になるわね』

「ヒューさん、ミスリル鉄って今でもそんなに高い売値が付くんですか?」

「買い手探しが大変でございますが、軍部であれば……一財産では済まない額面になるでしょう」

『でも、魔力持ちにとっては、過ごしやすい温度に自動調整させたり出来る、とても優秀な外壁よ』

「うん、俺としてはそっちですね。砂漠の国で涼しく過ごせる。最高ですよ。因みに俺って魔力持ちですか?」

『とことんバカね。自分のエンライトの魔法自分で見て、魔力無いと判断するバカはバカ中のバカとしか言えないわ』

「がーん、バカしか頭に入ってこない」


 俺と女神様のやり取りを聞いて、ヒューさんが口を押さえて必死に笑いをこらえている。


「ヒューさぁん、女神様が俺の事バカって言うー」

「く、……くく……それは……」


 ヒューさんに話を振ったが、笑いを止めるのに精一杯みたいで返答が帰ってこない。


『で、結局あんたそこ買うの? そこに住むの?』

「あ、はい買うつもりです。手続きとかよく分かんないですけど」

『じゃ、私の加護を打ち込んどくわ。そうすれば他の人間は買えなくなるし、魔法防御にもなるし』


 加護を打ち込む?

 と、突然全ての壁が光り輝き強い光が上下左右から差した。強いスポットライトを浴びた感じで、ちょっと熱い位だった。


『はい、これで予約済みね。早いとこお酒、よこしなさいよー』


 と、声がフェードアウトしていく。女神様はご退室である。


「ちょっとヒューさん酷いですよそんなに笑うなんてー」

「いやしかし、あれ程女神様が、これでもかとバカバカ仰せになるので……」


 くくく、とやっぱり一生懸命笑いを我慢しているヒューさん。


「取りあえず! 俺このお屋敷にします。屋敷の買い方とか、登記? 登録? の方法とか知らないので、任せていいですか?」

「それは、もちろんにございます。ふぅ……このヒュー、直ちに買い取りの手続きを行って参ります」

「あ、それより先にお酒を。俺も選びに行って良いですか? 近くの酒店ってのも知っておきたいし」

「左様でした、女神様へのご供物を優先にせねば。では、まずは酒屋へとお連れ致します」


 ふう……強制的に巻き込まれた脱出ゲームの果てに、ようやく俺は自分の屋敷を手に入れた。


いつもありがとうございます。ご評価、本当にとてもありがたいです。

より一層頑張りますので、是非この機に「ブックマーク」といいねのご検討をお願い致しますm(__)m

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