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【完結済み】破壊神のしもべはまったり待機中 ~女神様がほぼ仕事しないので、俺ものんびり異世界青春スローライフすることにした~  作者: 夢ノ庵
第2章 砂漠の魔法国家で貴族するのに必要なのは、お金とかより魔力の様です。

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第2話 強制的に参加させられた脱出ゲーム。賭け金は命なのか? 俺とヒューさんの覚悟。

 

 閉じ込められた?

 え? ホントに?


「ヒューさん、それ本当に、真面目に言ってます?」

「はい。冗談事では申しておりません」


 見ると、確かにヒューさんの顔が幾らか青い。

 これはマジの様だ。やはり黒い布にはそれなりの意味があったのか……


 まぁとは言え、ここがデスルームという訳でもあるまい。

 実際、見る限り何も無い空間で、死体も無ければ骨も無い。

 もし閉じ込められて死ぬ結末なら、最低1人の死体は残る。最後の片付けに入った人の骨が。


 いやそれ以前に、ここから外に何か出す、という機能が何かしら使えなければ、片付けも出来ない。死体は溜まる一方だ。


 その肝心な死体も何も無く、かつ、空気も快適だ。地上の部屋より幾分涼しいが、凍える程では無い。


 さてどうしたものか。この屋敷を作った人間は、パズル好きだったのか?

 いなくなるならパズルの解法を書いておいて欲しいものだが、まぁ付き合わされる訳だ。強制的に。


「シューッヘ様、落ち着いておられますな」


 と言うヒューさんの声も落ち着いている。


「ええ。この屋敷を建てた人は、パズル好きだったんでしょうね。解法くらい置いといて欲しかったですけど」

「パズル……でございますか?」

「はい。俺はそう捉えています。ここが出口の無い死のトラップだと考えるには、おかしな点が多すぎるので」

「わたしとしては、シューッヘ様がお取り乱しにならなかったことが、最も幸いにございました」


 え? 俺?


「それは、どういう?」

「戦場で四方を囲まれる、洞窟で入口が崩落する。出口が無くなる場面というのは、戦闘にしろ冒険にしろ、意外に付き物でございます。

 その際、誰が一番足を引っ張るかと申せば、冷静さを失った仲間です。叫んでみたり、自暴自棄になって魔法を乱打したり。

 そういう者がいると、どうしてもやむを得ず、他の仲間を救うため・自分を守る為に、その者を始末せねばならんこともございます」


 それは、確かに。錯乱した味方というのは非常に厄介だ。


「シューッヘ様は、まずどうなさいますか」

「俺さっき、足下にあった5つの円がまとまった図形を踏んだんです。そしたら照明が付いて。

 としたら、例えば4つ、3つと円の数が減っていくとか、逆に増えていくとか、そういう可能性とか。

 または全然別で、入口の空調機のパネルみたいに、何処かに魔力を流すとか。色々、やれるとこからやってみます。

 ヒューさんは、どう考えますか?」


 俺の考えが必ず当たる訳でも無いのは当たり前。

 これだけ色々言ったけれど、キルゾーンですね、という結論だってあり得る。


「わたしとしては……この空間にも空調機の魔法風が確実に届いている以上、この状態での人の滞在は織り込み済みと考えます。

 その上でどうしたら出られるかは、または出られない空間だとして強引に出るのであれば、という辺り、少々お時間を頂きます」


 俺が頷くと、ヒューさんが床にどさっと腰を下ろして、何やら唱えだした。

 ん、嫌な予感。過去のシーンがサーッと頭の中を流れていく。


「ヒューさん、まだあまり大きな魔法には頼らないで下さい。本当にどうしようもなくなった時まで、まだ待機して下さい」

「分かりました。では魔法自体は組まず、準備に留めます」


 ふぅ、危なかったかも。前の反魔法みたいに、俺の為なら何でも、本当に命捨ててでも何でもしてしまう人だから。


「さぁて……ゲーム自体は始まってるのか、それとも実はまだスタート前なのか」


 俺は部屋の中を歩き出した。




 ***



 広い地下空間を歩き回った結果。



 まず、新たに発見できたもの。


 4、3、2個の円が、まとまってる記号それぞれ1つずつ。小さな魔法陣かも知れない。

 部屋の多分中心点に、小さな十字マーク。これも魔法陣かも知れないので、丸ともども、ひとまず触れてない。


 部屋の角には、複数の線が引いてあった。正三角形を作る線が5本。

 つまり、部屋の角を頂点とする合同な正三角形が出来るように、かなり小さなスペースだがくっきりした太めの黒線が5本描かれている。

 これが部屋の四つ角全てに同じように記されている。同様に魔法陣の可能性を考慮し、触れず。



 次に、発見できたこと。


 最初に俺が不用意に踏んづけた5つの丸。即ち俺たちが転移して来た場所は、部屋の真ん中ではない。

 部屋の中心からすると、斜めに、部屋の角に向けて半分歩いた所だった。

 他の4、3、2個の丸も同じく、中心から部屋の角に向けて歩いて行く丁度半分の所にある。


 つまり、この部屋は大きく4分割して考える事が出来る。それが意味を成すかは分からないが。

 十字を部屋の中心に、時計回りに5のスペース、4のスペース、3のスペース、2のスペース。

 これで1があれば、カウントダウンで脱出なのかと思うが、1つ孤立した円は、探したが無かった。



 これらから、俺は、脱出できる見込みは立ったと考えた。ただ、問題は残る。


 もし万が一、この空間が一人だけ入ることを想定して作られた、お一人様専用地下室だった場合だ。

 万が一そうだったら、俺の推理は全部崩れ、新しくここに死体が2体でこの屋敷は見事に事故物件になる。


 そして、推理が当たっていたとしても、次に問題になるのはヒューさんだ。

 初手を打った後でどう動いてもらうか。制作者的NGがあるかないかで変わる。

 あとは微妙な所で、魔法での転移に於ける絶対条件。これは単に俺が無知なだけだ。


 取りあえず、初手は確定した。そして、俺は得られた全てと推理をヒューさんに伝えた。



「なるほど。それだと一部屋全てを利用してもまだまだ利用範囲は広いですな。設計者・使用者の立場に立たれたお考えかと」


 と、ヒューさんは評した。

 実際にこれで脱出出来るかは、やってみなけりゃ分からないのが現実だ。取説ないんだもん。


 ただ、ヒントと思えるものはあったから、その解釈が間違ってたり、そもそもヒントじゃない誤解だったりしなければ、俺たちは生還出来る。


「じゃヒューさん、最初のテストから入ります」

「はい。仰った『念のため』に備え、位置を移します」


 ヒューさんが、2つ丸のすぐ近くに移動する。

 俺は自信を持って、中心の十字を踏んだ。




「どうやら推理はそのままご名答の様です。足下の2つの円が、消失致しました」


 俺が考えたのは、こうだ。

 まずそもそも「地下室」とだけ考えていた。違う、もしここが「地下5階」または「5番地下室」だったら?

 ヒントになったのは、部屋の角の三角形を描く線の数。

 俺が最初に踏んだ円が5個。線の数も5本。ならばともかくここは「5のフロア」だと考えた。


 そこに気付いたところからは一気だった。

 フロアが幾つもあるなら、設計者なら絶対、それぞれのフロアはそれぞれ全幅を、有効活用したいはず。


 移動手段は、それぞれの丸だ。踏むとそれぞれのフロアへ移動する。

 3つ丸なら3のフロアへ、4つなら4へ。


 ただ、踏んだら転移するものが常にあるのは、「うっかり転移」があり得て邪魔だ。

 だから必ずOFFスイッチがあると考えた。

 丸、三角形、それを構成する線、これらはいずれも複数存在する。唯一単数なのが、十字。

 一見すると部屋の中心のマーキングだが、意味がある魔法陣だとすれば、話は変わる。


 俺は十字をOFFスイッチだと決め込んで、まずそれを踏んだ。結果、ヒューさんの足下の円は消えた。



 俺は一応、他の丸や三角の様子も見に行った。想定通り、丸は消えても三角は残る。フロア表示が消えたら困るもんな。

 そして、中央に戻る。そこには、さっきより遙かにうっすらと、新たなマークが浮き出ていた。横線1本に縦線3本。

 ちょっと想定外だが、これも設計者の「誤作動防止」を考えれば、恐らく、というレベルの回答は出る。


 俺はさほど迷わず、その記号を3度踏みつけた。踏みつけた足を上げて見てみると、記号は十字に戻っていた。


「シューッヘ様、再び円が現れました」

「それじゃ、そろそろ外へ出ますか」


 4、3、2。どれを踏んでも、行き先には必ず1つ丸があるはずだ。そこから脱出可能。これが俺の推理。


「じゃ予定通り、ヒューさん、先に地上へ行ってください」

「では、後始末をお任せするのは忍びないですが、お先に失礼致します」


 ヒューさんが足下の2つ丸を踏んだ。その瞬間、ヒューさんは消えた。


 ここからは推論だが、ヒューさんの視点からすると、もし事前に話を通してなかったら、俺が消えた様に見えたことだろう。

 わざわざフロアナンバーを描いておかないといけないくらいだから、各フロアのサイズ等の仕様自体は、完全に同じと見た。


 そして、ヒューさんの転移先には、一つ丸がある。それが出口行きだ。ただ、照明付ける必要があるだろう事は伝えた。



 さて。

 ここからが、最後の長い思案のしどころなんだよな。


 ここの居住者は、外の壁材やら他の貴族と違う前庭・柵付きの建て方やら、病的に臆病だったと見える。

 そういう居住者であれば、誰かに押し入られる可能性は絶対に想定する。そして、そこから安全に逃げおおせる方法も作る。


 もし、居住者が独り者で、お一人様だけが使う地下室だった場合、特定の丸を順に辿っていかないと即死が待ってるとかも、ある。

 万が一そうだったら……ヒューさん、俺も後に続きますので先に死なせてごめんなさい、って言う。あの世で。

 けれど家族持ちなどであれば、子供が迷い込むにしろ何かレクリエーションに使うにしろ、複数名の滞在が想定される。


 俺は、さすがに複数説を取った。順番式デストラップまで仕組むと、それこそ本人が酔ってうっかり、ということすらあり得る。

 あくまでこの地下室群は、「地下という誰も邪魔しない空間で、色々したいことをする為」に設計された、と考えることにした。

 そう考えた上で、居住者の臆病さを加味しなければいけない。



 結果論。


 まず、お一人様専用地下室の線は、幸い完全に消えた。

 いつまで待っても、照明が自動的に落ちないからだ。照明が魔力を消耗する以上、ずっと付けっぱなしはない。

 また、ここの照明は「5」を踏むまでは付かなかった。だから人感センサー的なものである線も既に消えている。



 そこまでは良い。次だ。

 最後に待ち構えるのが、「同じ丸を踏んで良いかどうか」だ。

 ここで居住者の病的臆病さを考える必要がある。



 もし侵入者に追われてここに逃げ込んだとして。次のフロアに転移する前に、侵入者も転移してきたとする。

 もし、同じ丸を踏むこと、即ち同じ行き先に『連続で』2名飛ぶことが許容されると、居住者はいつまでも追われる。


 ここの居住者は、例えばフロア表示を部屋角の線にしたり、移動ポイントを丸だけで表記したりと、初見殺しを狙っている感が強い。

 要するに、知っている人は安全に移動も何も出来るが、知らない人間は即詰む。俺たちだって、5本線・5つ丸からの発想が無ければ、詰んでた。

 想定する侵入者は初見者だ。居住者が地下に逃げ込み、更にいずれかの円で飛ぶ。それを追って同じポイントに立つと……

 フロア内ループくらいだったら、かわいいものだ。その「かわいいもの」で済むかどうかを試すのは、命が賭け金になる。



 初見の侵入者を想定しつつ、家族などが使う事も考える。すると、臆病な主人なりご夫人なりが、例えば3から出て行き、

 それ以外の人は3以外から、というルールは比較的シンプルで、子供でも理解出来る。


 つまり、「ヒューさんが踏んだ『2』は踏まない」。これがまず俺が決めていることだ。

 ではどれを踏むか。

 3、4、5。

 均等に危険性があるように思えるが、実は5だけ、安全性がかなり高いと考えている。



 建物内からの転移地点は、「5」のすぐ近くだった。暗闇でもすぐ踏める。

 とすれば、「5」は照明のONのスイッチだろう。OFFのスイッチも兼ねる……とは思うが、不安が無いではない。


 建物管理を考えれば、何らかの方法で照明は落とす必要がある。30分とか長時間タイマーもあり得るが、ひとまずそれは頭から外す。

 手動でOFFに出来ること、その仕組みが各階共通に出来る仕様であること。これらは両方とも必須条件である、と考える。


 ON側の発想は、比較的シンプルだ。

 この「5」のフロアでは、5つ円を踏んだら照明が付いた。なら仕様として、フロア数の丸を踏んで付けるのが合理的に感じる。

 つまり、「転移する→近くを踏む→照明付く→足下を見る→その丸の数でフロアナンバーが分かる」。綺麗な流れだ。


 OFF側の発想は、条件がある。

 照明の落ちた暗闇の中を、何らかの方法で安全に「移動したいフロアの丸」に歩いて行ける必要がある。


 もし丸まで安全に歩けるのであれば、使用者は照明を消してから出て行く。合理的ではある。

 出来るだけシンプルに考えて、俺はこのフロアの「5」を踏むと、付いてる照明が消えるだけ、と決めつけた。



 で。

 3、4、5のうち、どれを「まず」踏むかとなれば、自説の証明の為に俺は、「5」を踏む。


 リスクの低めなトライアルだ、やろう。


 俺は5つ丸の所まで進んで、踏んだ。

 想定通り、照明が落ちる。

 この状態で、他の丸が見えるかだが……おっ、見える。なんと蓄光素材かっ!

 暗闇に、丸だけ光っている。これなら子供でも安全に他のフロアへ行ける。



 で、その「他のフロア」だ、これがラストクエスチョン。


 3か4か。


 いずれもOKなのか、どちらかはNGなのか。

 ここまでで検討したどの条件を考えても、これは答えが出ない。


 強いて言えば、入口となった三角形は3つだった。

 だから……の後には、OK、NG、どちらの言葉も均等に繫がる。リスクに差が出ない。



 こうなれば、覚悟決めて飛ぶしかない。

 ただ、足がすくむ。何か決めるための、こじつけで良いので材料が欲しい。


 3か、4か。

 俺の中に、ラッキーナンバー的なものは無い。

 もし俺がヒューさんだったら? ヒューさんなら……ヒューさんなら3だ。絶対3を取る。間違いない。


 俺は、ヒューさんを験担ぎ代わりにして、覚悟を決めて3を踏むことにした。


もし「面白かった!」「楽しかった!」など拙作が楽しめましたならば、

是非 評価 ポイント ブクマ コメントなど、私に分かる形で教えて下さい。


皆様からのフィードバックほどモチベーションが上がるものはございません。

どうかご協力のほど、よろしくお願い致しますm(__)m

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