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【完結済み】破壊神のしもべはまったり待機中 ~女神様がほぼ仕事しないので、俺ものんびり異世界青春スローライフすることにした~  作者: 夢ノ庵
第3章 英雄外遊編 ~ローリスからおそとへ出てみましょう~

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第46話 大罪人の刑執行は、実質ほとんど無限長。

 俺は石像に手が届く距離まで歩みを進め、仁王立ちでもってヌメルスを見下ろした。

 うん、まさに恐怖が象徴されている石像だ。芸術的とも言える。もしこれが彫られた石像ならば。


 実際には、悪人とは言えヌメルスの断末魔の顔、という訳だ。死に顔、死んだ顔。

 人の死がそこにあると思うと、あまり見ていて気分の良いものでも無い。

 座して縄を打たれ、見る者が不安になるほどの恐怖の表情。しかも、完全に死んではいないんだよな、痛み感じるとか言うし。


 もうこれは、とっとと金属に変えて、全て終わりにしよう。

 見てるとそれだけで、色々考えてしまう。


 ヌメルスに手を伸ばし、目を閉じた。


「……古代魔法[物質転換]」


 俺は敢えて古代魔法と前置きして魔法名詠唱をした。


 ヌメルス、お前が色んな意味で負けた相手は、古代魔法の使い手だったんだよ。どだい敵う者じゃなかったんだよ。

 我らが女神様に銃口なんて向けやがって、しかも実際に発砲までして。女神様にお怪我が無かったから良かったようなものの……



 んっ、いかんいかん。集中せねば。金属板、金属板……

 俺は自宅の魔導金属板を懸命に思い浮かべつつ、魔力をぐっと籠めた。



 しかし……アレだな。

 何で自宅の金属板は、真っ平らじゃないんだろう?

 ステンレスの加工品の様な、鏡面加工にすらなるような加工技術が無いとか?

 いやでも、鏡はあった。アレ? 鏡は金属加工じゃなくて化学だっけ?

 あっ! いかんいかん。今は魔法の行使中。まだ仕上がった感触は無い。

 意外と物体が大きいと時間も掛かるのだ。

 まぶたに力を籠めて強く閉じ、よし、これで、集中、集中……



 ……でもなぁ。ヌメルスも、弾丸は何を使ったんだ? 鉛? それともタングステン?

 俺は実際に戦闘になったシーンには出くわしていないが、一番最初に打ち抜いたのは騎兵だと聞いた。少なくともプレートアーマー程度は身につけていただろう。

 プレートアーマーは、アレは多分鉄製だよなぁ。いや、アルミとかなのかな。でも電気精錬の技術は絶対無いから、アルミを獲得するのは無理、かなぁ。

 アルミじゃなかったら、なんだろ、もう少し軽金属寄りで、それで丈夫な金属。真鍮? いや色違うしな。銀? 高く付きそうだし。

 はっ! ダメダメ、集中集中、金属板金属板……



 ……とは言っても、自宅の金属板、ミスリル混なんだよな。ミスリルって元素記号なんだろ。Msとか? いや雰囲気で決めるもんじゃないしな。

 元素は陽子の数で決まるんじゃなかったっけ? すると、1番から順番に全部ある地球の元素と、この世界の元素に差は無いはず。

 けれど、この世界にはミスリルという未知の元素が存在する。ただ、今まで過ごしてきて、ミスリル混、つまり合金は目にしたり触ったりしたが。

 純ミスリル、って奴に出会った事が無いんだよな。自宅の壁も1.5%合金だし。実は単に魔力が無いから判断付かないだけで、地球にもある金属なのか?

 そう。俺は今そのミスリル混の金属板の事しか考えちゃいけないのに俺は、うぅ。


「ご主人様、これは意図的にやっておられるのか?」


 へっ?


 俺が目を開くと、目の前に金属の像があった。うむ、金属ではある。完成していた。

 金属ではあるのだが、下半身から、どうもステンレス、アルミ、そしてもう一つはよく分からない鈍い銀色をした金属の、異なる銀色テイストの金属像が。


「ひょっとしてシューッヘ君、何かよそ事考えてたり……した?」


 アリアさんが、俺の斜め下からひょこっと顔を出して俺に尋ねる。

 うん、俺、やっちゃった。見事によそ事考えた。結果がまー見事にこれだわ。


「俺、やっちゃった……」


 極小声で口に出すと、自分で自分に追い打ちを掛ける格好になり、余計失敗が自分の中に響く。

 処刑とは言え、腰辺りと首の下辺りとに境界線のある、マルチカラー金属になってる像。ダメだろこれ。

 ただ敢えて俺は俺を褒めたい。これで腰から首までの胴体部分が真鍮だったら、本当にマルチカラーで俺は落ち込んでただろう。

 真鍮回避、ナイス俺。うぅ、ナイスって事にしたい。ううう。


 と、フェリクシアさんがヌメルスに近付いて行って、その真正面に止まった。

 膝を曲げ、金属像の足下からじっくり観察している。


「ご主人様、この一番下の金属はなんだ? 銀でも鉄でも無いようだが」

「それはステンレスって言う……うぅ、なんでステンレスなんて作っちまったんだ俺は」

「すてんれす? 聞いた事が無いな。特殊な金属なのか?」

「錆びない。いや絶対錆びない訳じゃ無いけど、相当錆びにくい」


 像に向かって言葉を発していたフェリクシアさんが、くるっと首をこっちに回した。


「寧ろ銅像より良い仕事をされたな、ご主人様。全てが錆びなければ、魂は抜けないと聞く」

「うぇ、俺ホントに永久保存を作っちゃったのか」


 ステンレスの錆び耐性、金属たわしでこするとかして表面削らない限り、ホントに錆びないからなぁ……

 と、フェリクシアさんはまた像の方に向き直り、今度は膝を伸ばして腰を折って、ヌメルスの腰から上、首より下の、真ん中になる金属に顔を寄せている。

 ヌメルスは座らされた状態でコカトリスボンバーを喰らっているので、腰と言っても高い位置にはない。


「この金属も、どうも見かけた事が無いな。ともかく叩いてみるか」


 フェリクシアさんは真ん中の金属をノックして、それからヌメルスの足下になるステンレスをノックして、最後に頭の金属を同じくノックした。


「この胴体部の金属は、随分軽そうな音がする。これは?」

「それはアルミって言う金属。俺の元いた世界じゃ、すごくありふれた金属なんだけどね……」

「軽い金属というのは武器や防具に向くかも知れないな、剣速も上がることだろう。剛性や耐久性はどうだ?」

「そもそも地球には剣とか盾とか、もうそういう武器防具の世界じゃ無かったから、戦いに耐えられる位丈夫かは、分かんないなぁ」

「そうか。軽くて剛性があり、それでいてしなやかであれば、まさに理想の剣になるだろうに。アルミの性質はどのようなものがあるんだ?」

「これもまた殆ど錆びない。ステンレスもそうだけど、表面を削るとそこから錆びるらしいけどね」

「なるほど。つまりご主人様は、ヌメルスの罪はまさに永久に罰するに値すると考えられたのだな。それ程厳しいお方であったか」

「ちが、……ん、んん! そ、そうだね。女神様に銃口向けたんだから、と、当然の報いだな」


 フェリクシアさんは嫌みで言ってる訳では無さそうだ。

 普通に素で、俺が厳しい対応として、錆びない逃げられない金属に変えた、と思っているようだ。


「そうなの? シューッヘ君。さっきシューッヘ君って」

「しー! そういう事にしておいて……俺のメンタルの為に。うぅ」


 アリアさんに言われると、俺は強くは出られない。ウソもつけない。

 けれど、フェリクシアさんがせっかく誤解してくれているのだから、そういう事にしてしまいたい。


「ふーむ……この頭の金属も見た事が無い。全てチキュウという星にのみ存在する金属に統一されたのか?」

「えっ? えっと、最後に俺が考えてたのって……」


 何考えてたっけ。確か元素記号がどうのって……そうそう、ミスリルの元素って何よって話だった。

 合金しか触った事がないミスリルだから、実はミスリルって他の金属の別称じゃないか、辺りまで頭の中では進んでたな。


「儂が知る限り……まさかとは正直思うのだが、もしそのまさかであれば、その金属は、純ミスリルやも知れぬ」

「なっ?! 純ミスリルだと?! ミスリルは一度合金にすると分離が出来ない、もう純ミスリルは無いと言われているのに?!」


 オーフェン王とフェリクシアさんが、結構距離があるんだが会話は成立している。

 よく通る太い声・しっかりした声のオーフェン王に、驚きの余り声が大きくなってるフェリクシアさん。

 にしても……純ミスリル。元素記号から考えてたから、出来ちゃったのかな……そんなものなのか、元素って??


『シューッヘちゃん、なかなか冴えた取り合わせをしたわね。面白いわ』

「えー、女神様までそんな事仰る」

『いじわるで言ってる訳じゃないの、このヌメルス像を、更に処罰するのに最適、って言う事ね』

「どういう事ですか? ステンとアルミは錆びないだけで大した金属じゃ無いですし、純ミスリルはよく分からないですし」

『純ミスリルの魔導伝導率は、ほぼ全ての物質を圧倒するわ。つまり、魔法がよく効くのよ。要するに、魔法が相当痛い、ってことね』


 あー……しかもそれが頭、ってのにも、意味があるのか。

 足痛いよりおなか痛い方が辛いし、おなか痛いと頭痛いは拮抗するけど頭の方が俺はキツいと思う。


『最下層をステンレスに仕上げたのも良かったわ。台座とか要らなくて、何処かに置いてもそこが錆びないから』


 な、なるほど。錆びると魂が抜けてしまって懲罰にならない、錆びる金属だと台座は必要だ。

 しかし、あの大罪人を台座に乗せるのも、なんか(しゃく)だな、確かに。


「ご主人様、女神様っ。純ミスリルの部分に、魔法を撃ち込んでみても良いか? こんな機会、そうそう無い。どうかお願い出来ないだろうか?」


 フェリクシアさんの声が、どこか弾んでいる。そうか、純ミスリルってそこまで珍しいものなのか。

 俺は女神様に目を向けた。女神様は微笑んで頷かれた。


「いいよフェリクシアさん、あんまり熱しすぎると金属も溶けるから、程々にねー!」

「あ、ありがとうっ! では、軽いもので……」


 うずうずしている様子が手に取るように分かる。フェリクシアさんすっごくワクワクしてるな、珍しい。


「[フレア・バーナー]!!!」


 フェリクシアさんの手の先から、炎が吹き出した。バーナーというより、火炎放射?


「むっ、[マギ・エンハンス]!!」


 フェリクシアさんが何か新しい魔法を唱えると、炎はより強く吹き出すようになった。

 が……ヌメルスの頭に当たると、その火が吹き消されているかの様に、弱く細くなる。


「これは……ミスリルが魔法を吸収したのか? 魔法強化をしたものでも、平気で吸い尽くすのか!」


 フェリクシアさんは驚いた様子で、一歩あとずさった。


 と。



 ゴトゴト


 ん? なんか、石床の上で誰か椅子でも揺らした?



 ゴトゴトゴトゴト


 うへぇ! ヌメルス像が、う、動いてる!!



 ゴトゴトゴト ゴトゴト ゴト ゴ


 ……と、止まった。なにごと??


『あら素敵、ヌメルスの魂が痛みに耐えかねて像を動かすのね。さすがに意識なんかはないでしょうけど』


 ホ、ホラー!!

30・31日、外伝扱いで、大晦日のお話しをお届けします!

各日3話ずつの配信になります。よいお年をお迎えください。m(__)m

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