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【完結済み】破壊神のしもべはまったり待機中 ~女神様がほぼ仕事しないので、俺ものんびり異世界青春スローライフすることにした~  作者: 夢ノ庵
第3章 英雄外遊編 ~ローリスからおそとへ出てみましょう~

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第33話 床に這う サリアクシュナを見つめる王の瞳は 哀しそう。

 兵士たちは、捕縛用なのか持っていた縄で足首をキツく縛り、止血していた。

 あの方法で止血すると、切断面の縫合とか出来なくなると思うが、まぁそんな医療技術も無いので関係無いか。


 部屋に入っていた半分の兵士は、国王の後ろに控えた。槍部隊がメインだな。

 残りの半分は、足首を失ったサリアクシュナを半分囲む位に陣取っている。こちらは剣を抜いている兵士も多い。


「サリアクシュナ……お前は最初から、儂を籠絡させるつもりで、あの日、あの道に立っていたのか」


 王の声が少し悲しそうな、少し辛そうな声をしている。

 同情は出来ないが、今まで信じていた存在がいきなりサキュバスでした、ではショックも大きいんだろう。


「はん、あたしは魔王様から、この国を、潰す様にって、仰せつかって来たのさ、あんたを、どうこうしたのは、単なるついでさ」


 サキュバス・サリアクシュナの息が荒い。

 それもそうだろう、止血されているとは言え、足首吹っ飛ばされてるんだ。痛みも相当だろう。


「魔王か……魔王領含め、魔族との折衝は、三国同盟の枠組みで全てエルクレアが担当しているはずでは無いのか? 何故オーフェンに直接、魔族であるお前が来た」

「フン、そんな事も分かってないんだね人間は。エルクレア国は、もう魔族領。表向き魔族との紛争を演じているけどね」

「なっ! エルクレアは、もう既に落ちたと言うのか?!」

「あーそーゆーこーと。だから次はオーフェン。もう私ら魔族の進軍を止める事が出来る国なんて無いと、思ったんだけどね……ローリスか、クソッ」


 ん? 俺?

 サリアクシュナのキツい視線が俺に突き刺さる。まさに鬼の形相で俺を睨んでいる。


「あんたさえいなければ……」

「いやいや、あんたが壁から出てこなきゃ良かったんじゃないの?」

「うぐ、く、ううう、こんちくしょうー!」


 俺まで落とそうとしたのが、裏目に出た形だな。

 ん? 魔族……? ちょっと待て、過激派っぽい話だったアッサス将軍って、実は魔族だとかそういう笑えんオチは無いだろうな?!


「おいサリアクシュナっ、一つ聞くぞ。俺の大事な仲間に関わる話なんだ、答えろ」


 俺の問いかけに、サリアクシュナは目を背けて口を結んで答えた。


「答えないつもりか? ならいい、俺も俺で、鬼になる」


 俺は腰の短剣を抜いた。そう、この短剣、別に魔法剣にしなくても、金属剣より切れる刃がある。

 俺は一歩一歩近付いていって、サリアクシュナにそのキラキラ光る刃を見せびらかす様にした。


「何処が良い? しっぽ? 角? 顔?」

「う、ううう、あたしを尋問する気なのかあんた、それでも英雄か!」

「俺、英雄だけど、仲間の方が大切だから。英雄の名誉とか、どうでも良い」


 言っててかなりえげつない言葉だなとは思った。真実思っている事には違いないが。


「じゃ返答が無いから、しっぽを割いてみようか」


 と俺がしゃがんだら


「分かった! 答えるから!」

「それはありがたい」


 サリアクシュナの赤い顔の顔色が薄らいだ。人間で言う『青くなる』ってところだろうか。


「アッサス将軍は、あんたと同じように魔族なの? 潜んでて、今になって蜂起したとか?」

「アッサス将軍? 誰だよそれ」

「しらを切るというなら」

「ひっ、ほ、本当に知らないんだって!」


 俺が短剣をひらひらさせたら、引きつった顔で答えた。

 となると、アッサス将軍が魔族、というオチは、無いのか、または、このサキュバスは知らないだけなのか。


「儂からも問うて良いか、サリアクシュナ」

「はん、もーどーでもいい。何でも答えてやるから言えよ」


 ここから尋問が始まるのか。俺、別にいなくても良くない?


「陛下。サリアクシュナの尋問は、俺にもローリスにもあまり関係無いと思います。大使館の方が心配ですので、下がらせて頂いても良いですか?」

「うん? あぁ……そうだな、サリアクシュナと儂との問題は、英雄には無縁の事。今日は御苦労だった、成果たる成果が、これとはな」


 オーフェン王はぐったりした様子でうなだれている。

 俺は、そんな王に頭を下げて、兵士さん達の間を縫って、部屋を出た。



 ***



 俺は、焦っている。何かが起こっているのは間違いない。

 塔の8階から見えた大使館は、壁に囲まれ、その壁に黒い炎が吹き付けられていた。

 その門からは、続々と、以前俺を助けてくれた骸骨剣士達が出陣していっている。

 大使館前の道は、骸骨剣士で既に一杯だ。その軍列は、ズンズン西の方へと道を進んでいる。


「あっ、英雄閣下! 大変な事になりましたね」

「ええ、大変なのは現在も進行中です、アレ、見えますよね」

「え? 何です、あの壁と、ん?! スケルトンの大軍?!」

「アレは俺達ローリスの防衛部隊です。時間が惜しい、この塔の一番上はどうなってます?!」

「9階は、監視廠になっております」

「開けられる窓はありますか、そこは」

「窓はなく、そのまま外に手は出せますが」

「案内して下さい!!」


 俺の頭の中は、もう沸騰寸前立った。

 敵が強い事、アルファのフェリクシアさんですら命を落としかねない危険な戦いであること。

 最初から知っていた。けれど、俺は俺の戦いがあった。


 その戦いは、予想もしない形で終幕を迎えた。

 後は俺も、大使館の戦いに合流するだけだ!


「9階です、どうぞ」


 開けてくれた扉から出ると、1畳ほどのスペースがあり、塔の先端の下、という感じの場所だった。

 四方向全てが、窓枠だけの窓。つまりここから矢を射たりする為の構造なんだろう。


「えっ、ちょっ、英雄閣下!!」


 俺はその窓枠に足を掛け、左右の手で枠を掴み、方向と狙いを定めた。


「飛翔!」


 グッと足先の、ワイバーンブーツに力を籠め、飛んだ。

 風が凄い勢いで俺の耳をかすめていく。地面はみるみる近付く。

 方向、間違いなし。砂壁も越え、大使館の屋根まで数メートルの所で、


「着地!」


 身体をぐっと反って、立ち姿勢になる。ふわっと、ショックもなく着地が出来た。


「おう、英雄閣下。遅いお付きで」

「すいません、国王の愛妾がサキュバスって魔族だったとかいう意味不明な結論で帰ってきました」

「こっちも似たようなもんだな。虫型の魔族の先制は防げたが、敵兵が純粋魔族のアンデッドだそうだ」

「うわぁ……あっちもこっちも酷いな、他のみんなは?」

「イオタはそこで骸骨生成中、デルタはあっちで様子見、見かけないからアルファは中だろう」

「ありがとうございます、将軍! 将軍も随分撃ちまくったみたいですね」


 屋根の上が、薬莢だらけ。

 これ踏んで着地してたら転んでたな。


「敵兵が魔族なんてのじゃなきゃ、コイツだけで終えられたんだがな、はは」


 と、重機関銃をポンポンと叩いている。

 俺は将軍に頭を下げ、更に軽く飛翔をして大使館入り口側に降りた。

 近くを、続々と骸骨剣士が進んでいく。右も左も骸骨だらけ。凄いな。


 大使館の扉を開くと、


 ……ってあれ。随分平和そうだな。

 アリアさん、フェリクシアさん、大使さんでお茶飲んでる。


「あっ、シューッヘ君!」

「ご主人様、お戻りか」

「みんな、お疲れ。俺も、うん、疲れた」


 すぐお茶を用意する、と言って、フェリクシアさんが席を立った。


「えーと……戦闘は、どう? って言うのも変だけど」

「幸い、大使館の中は変わらず平和よ。あたしが手出ししても絶対邪魔になるだけだしね」


 ちょっとさみしそうにアリアさんが言う。

 まぁ確かに、グレーディッド3人が全力傾ける戦いに首突っ込むのは、危ないとしか言い様はないな。


「ご主人様、出がらしで悪いが、じっくり蒸らしてる時間が惜しいのでな」


 と、アリアさんの横にお茶を置いたフェリクシアさんが、椅子をそこに寄せてくれた。


「ともかく戦況を報告する」



 フェリクシアさんから聞いた戦況は、俺の想像を遙かに超えたものだった。



「魔族、か……俺の方も、王の愛妾がサキュバスって魔族だった。ただその魔族は、アッサス将軍の事は知らなかったみたい」

「アッサス将軍。今回の出兵に出てこない事はないと思うが、歩兵・騎馬兵には該当する者はいなさそうだ。魔導師隊の結界防壁が厚く、突破出来ていない状況でもあるから、魔導師なのかも知れない」


 あんだけの弾丸を叩き込んで、更にあれだけとんでもない数の骸骨剣士を送り込んで、それでもなお落ちない魔導師部隊か。

 どんなタイプの魔導師がいるか分からないが、可能なら接敵は避けたいよな。今は骸骨剣士での接敵だから本隊に害は無いが……


 ……てか、何のために今、俺達戦ってるんだ?


「……ねぇ、フェリクシアさん。この戦、逃げちゃダメなの?」

「逃げる?」


 フェリクシアさんは怪訝そうだ。


「うん。国王の愛妾に魔族、国内にも魔族、でしょ? 対オーフェン、って言うより、対魔族戦になってるじゃん。退いても、それ程問題無いような気がするんだけど」


 と、フェリクシアさんの目線が、迷いを含みながらも床を向いた。


「アリアさんはどう思う?」

「もし逃げるとしても、国の交渉してる人たちを置き去りには出来ないよ」

「あぁ、それはそうか。どうにかして回収して逃げられれば良いんだけど」

「名案では無い力業に過ぎないが、交渉団を回収すれば良いのだろう? 戦線を骸骨部隊に維持させつつ我々は脱出、大使も含めて。そのまま交渉団がいる王城に寄り彼らを回収。

 その足でオーフェンから逃げれば、追ってくる者はいまい。但し、その後のオーフェンが廃墟になる可能性は高いが」


 フェリクシアさんの、最後の一言がグサッと刺さる。

 あれだけ栄えていて、人々も幸せそうだったオーフェンが、滅ぶ。

 人々はきっと蹂躙され、もしかすると全部アンデッドにされてとか……


「う、ううーん、そうか。オーフェンは今攻めてきてる敵の犠牲になる、訳か。うーん……困ったな、困ってる時間も無いけど」

「女神様に伺ってみたら? 何かヒントになるかも知れないわよ?」


 困った時の女神様頼み。毎回こればっかりだな、女神様すいません。

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