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【完結済み】破壊神のしもべはまったり待機中 ~女神様がほぼ仕事しないので、俺ものんびり異世界青春スローライフすることにした~  作者: 夢ノ庵
第3章 英雄外遊編 ~ローリスからおそとへ出てみましょう~

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第19話 実務者打ち合わせ会 ~相変わらず俺は王様にかなわない~


「今回の外交使節団であるが、事務方諸氏にとってはまたとない交渉の機会だ。我が国の国益を最大限伸ばせるよう、大胆な提案をし、相手に揺さぶりを掛け、最良の結果を得てくれ。それからシューッヘ」

「は、はいっ!」

「ははっ、緊張する必要は無い。お前の役目は、オーフェン王を悔しがらせる事だ。ただそれも、別に成功しても失敗しても構わない。『お前が捨てた人間にはこんなに価値があったぞ』と、堂々と自慢をぶちかましてやれ」


陛下はにんまり笑って、指で『思い描いているオーフェン王』をつついているのか、指で何度も虚空を突いた。


「王様、質問をしても良いですか?」

「ああ、何でも聞いてこい」

「ありがとうございます。自慢をして良い、という事ですが、俺が魔導水晶を掘り当てた事も、して良い自慢に入りますか?」


女神様からは、魔導水晶の事が話の中心になるかのような事を教わっている。

陛下がNGをもし出せば、俺から言う事はなくなる代わりに、女神様の御言葉は絶対だから、オーフェン王が言ってくるんだろう。


「魔導水晶の件か。まだ他国には知られていないとは思うが、それも、単なるうぬぼれかも知れぬ。魔導水晶を主題として自慢することも許す。ただ、恥も外聞もないのがオーフェン王だから、あまりあからさまに自慢するとオーフェン国領地で魔導水晶を掘らされるぞ? さすがにそれは、王として許す訳にはいかん」

「はい。魔導水晶はあくまでローリスの為に。不心得者な俺ですが、そこは一応心得ております」

「そうか、ならばこれ以上注意を重ねる必要はあるまい。存分に悔しがらせてやれ」


と、また陛下はにまりとたくらみ顔な笑顔を見せる。


「旅程の説明は済んでいるか、ワントガルド」

「事務方は周知しておりますが、そこの英雄はまだ知らぬかも知れません」

「おい誰か、旅程を説明してやってくれ。そうだな、スバル、頼めるか?」

「はい、国王陛下」


スバルさん、さすが警備を担当するだけあって、旅程の細かい所まで把握していた。

7日間掛けてオーフェン入りし、帰りも7日間掛けてローリスに戻る。それぞれ別の宿場町を通る。

という所までは以前も聞いていたが、最初の7日間は割と直線の、ローリス=オーフェン間でメインとなる宿場町を通るとの事だった。

帰りの7日間は、どちらかと言うとオーフェン属領に近い立ち位置を鮮明にしている宿場町を通る。多少警備が厚くなる旨伝えられた。


「えーと……7日間って結構ゆっくりな感じがしますが、どうなんですか? 俺、地理とか分からなくて。すいません」

「英雄閣下の仰る通りで、本来この距離であれば3日、遅くて4日で通り過ぎる距離です。かなりゆっくりの進行になります」

「その間、ずっと馬車の中、ですか? 降りたり、馬車と並走したりは許されますか?」

「馬車始め全体のスピードがかなり遅いですので、馬車を降りて頂いて歩きでも丁度良いほどです。そのように進んで頂いても構いません」


歩いたり、馬車に乗ったり。いやこれかなりスローな旅路だな。


「宿場町では、以前そこの経済を活性化させるという話を聞いたのですが、それは具体的には?」

「それは財務も兼ねます私から説明致します。端的に言えば、宿場町でどんちゃん騒ぎでございます」


通商担当のライン・クライスさんが説明を加えてくれた。


「どんちゃん騒ぎ? こう、高い飲み物を頼むとか、高い部屋に泊まるとかですか?」

「はい、その通りです。勿論英雄閣下には、最上級の部屋に泊まって頂きます」

「な、なんか申し訳ないですね。俺別に、何か成果とか出せそうにもない役回りなのに」

「この度の遠征の主役・主賓は、他でもない英雄閣下です。どうぞ大手を振って、最高級の飲み物でも食べ物でも、好きなだけご注文ください」

「シューッヘ。無駄遣いの様に思うかも知れんが、経済政策の一つでもあり、かつその地域の好感度を上げる策でもある。どんどん上物を頼むように」


陛下にまで念押しされてしまった。俺はただ頷くだけだ。


「それと、今回は英雄が主役であるので、それを喰ってしまう可能性がある者は列に加えない。ヒュー、お前だ」

「左様ですか。シューッヘ様のご活躍をこの目で見られると楽しみにしておりましたが……」

「お前が加わっては、誰が元首代理のローブを着るのか分からないだろうが。今回はシューッヘがそれを着けるのだから、お前は遠慮せい」

「ははっ。陛下のお心のままに」


ヒューさんが使節団を外れる。これも、女神様の御言葉通りだ。


こうなると……女神様の御言葉が余計不安になってくる。

『俺が居ない間に』アリアさんとフェリクシアさんが戦闘に巻き込まれる。

ただ、それを言っても信じてはもらえないだろうし、女神様の名前を出して言うのも、外交交渉の邪魔になるだろう。


「……俺自身のスケジュールはどうなっていますか? オーフェンに入ってからですが。晩餐会とオーフェン王との会談があるのは聞いていますが、他には何も無いのですか?」

「英雄閣下のお仕事は、まさに今仰った2つに集約されます。オーフェン王との会談は儀礼的に進めば良いのですが、あの王ですから正直何を言い出すか分かりません」

「王様、オーフェン王との会談の時、譲っちゃいけないラインはありますか? さっき仰った魔導水晶の件以外に」

「譲れぬラインか。さすがにオーフェン王も、英雄の一存で決められる事で攻めてくるだろうから、例えばオーフェンへの移住とかな。家族一同迎えると言われても、応じてくれるなよ?」

「はい、それはもちろん。ローリスは気に入ってますので。他の何かがあったら、『俺の一存では決められません』で突っぱねて良いですか?」

「そうだな。微妙な線の事柄であれば『持ち帰り検討する』と回答し、即答は避けてくれ。トップ会談での決定は、覆しようがないからな。よく気をつけていてくれ」


俺は陛下の目を見てしっかり頷いた。


「あっ、もう一つ良いですか?」


思いついたかの様に。出来るだけ自然さを意識して。


「構わぬ。申してみよ」

「オーフェンの国内の治安はどうですか? 路地裏に入ったら危ないとか、表通りでも危ない所があるとか」

「オーフェンは、市民街区がマーケットと融合するように作られていて、マーケットの警備がそのまま街区の警備になっている。故に、治安は問題無い」

「俺達もその市民街区に寝泊まりするんですか?」

「いや、ローリスの大使館があるので、寝泊まりはそこになる。何か懸念があるのか?」

「懸念という訳では……何せ初めての外国ですので、少々不安なんです。そこの警備も万全ですか?」

「お前さんの滞在中は、ローリス軍が警備を担当する。普段とは段違いの警備になるので、安全性は問題無い」


問題無い、か……そうだよな、陛下は当然そう思うよな。

まさか、俺とオーフェン王が会談している真っ最中に、誰だか知らないが賊が攻めてくるなんて……信じろという方が無理だよな。


「……シューッヘ。何か胸にあるな?」


陛下の、少しトーンを落としたお言葉に、俺は思わず目を見開いてしまい、硬直してしまった。


「シューッヘは相変わらず、誤魔化しやウソは苦手だな。それが魅力と言えばそうだが、ワシにまで隠そうとしているのは、何だ?」


静かだがドスの利いた声。こ、これ以上は、誤魔化す事は出来ない……


「女神様の……予言的な御言葉です」


俺がそう言った瞬間、陛下も含め場の空気が一瞬で凍り付いた。


「ペルナ様が、シューッヘに何か仰ったのか? それは、今回の外遊に支障が出るほどのことか?」


俺は黙って頷いた。そして、俺不在の時に戦闘が起こる事を告げた。


場はざわついた。官僚の方々は、信じがたい、それはさすがに無い、という論調だ。

それに対して、黙っているのは陛下と、ワントガルド宰相閣下。お互いに目線を合わせている。

二人とも、女神様の『お怒り』をその身で味わっている。だからこそ、信憑性への信頼が官僚の人たちとは一段違うようだ。


「分かった。シューッヘ、詳細を教えてくれ」

「はい。俺がオーフェン王との会談でいない時、駆け付けられない時に、襲撃が発生します。対応出来るのはフェリクシアさんとアリアさんだけ。但し女神様からは、グレーディッドのデルタさんとイオタさんの2名がいれば有利だ、という事を言われています」

「ワントガルド、その両名に随行命令を。メイドが3人に増えたところで、オーフェンが警戒することはないだろう。シューッヘ、襲撃の規模は分かるか?」

「規模は分かりませんが、『アルファ』のフェリクシアさんが命を落としかねない程、とは聞いています。もちろん、アリアさんも」

「『アルファ』が、か……通常兵を幾ら増員したところで、無駄死にに終わりそうだな。ワントガルド、誰ぞ助力になりそうな者はおらんか。予備役でも構わん」

「予備役まで視野に入れますと、機械化兵団長のヌメルスに、ふんだんに兵器を持たせて対抗させるのが最強かとは思います」

「ヌメルスか……あいつはワシの言う事も聞かぬ頑固者だからな、出兵に応じてくれるか分からぬが……善処はしよう。シューッヘ、襲撃自体は、確実なのだな?」

「女神様がはっきり仰っていたことなので、確実だと考えています。規模・敵兵の構成が分からないのがネックですが」

「ヌメルスが応じてくれれば、魔法兵だろうが重装兵だろうが、兵種を問わず討ち滅ぼすのは容易だ。応じてくれるか、が一番の問題だな」


陛下の視線が、マジだ。殺すぞ、って目をしている。怖いな。

それもそうか、俺が国王と話しているその最中を狙っての襲撃。卑怯極まりない。


「しかしオーフェン王め……何が目的だ? 英雄不在のタイミングで大使館を攻めるなどすれば、外交関係が破綻するのは目に見えておろうに」

「あの、王様。もしかするとですけど、実力のある賊、かも知れません。オーフェン王は知ってか知らずか、そこは分かりませんが、賊の仕業であればオーフェンは知らなかった、で済んでしまいますし」

「つくづく厄介だな。シューッヘ。お前が会談に向かった後は、大使館警備の一般兵は下げる。無駄死にさせる訳にいかないからな。すまんが承知しておいてくれ」

「それはもちろん。フェリクシアさんが苦戦する相手だとしたら、普通の兵士さんじゃ歯が立たないですし」


と、陛下が大きく溜息を吐いた。


「気楽な外交のはずが、とんでもない隠し球が出て来たもんだ。かと言って、事務方の交渉の為にも、この外遊は止められん。シューッヘの仲間達の健闘を祈るほか無い。すまぬな」

「フェリクシアさんも、女神様から新しい魔法を賜っていますし、きっと十分戦えると思います。ヌメルス将軍の参戦があれば、尚更良いかもですね、どういう戦い方されるのか知らないですけれど」

「うむ。ヌメルスが用いる魔導兵器は、対魔法結界などを軽々打ち破る。もし参戦してくれれば、相応の働きはしてくれるだろう。……シューッヘも気が気でないとは思うが、オーフェン王との会談に集中してくれ」

「はい。俺は俺の役目を果たすよう、努力します」


重い空気の漂うまま、その日の打ち合わせは散会となった。


いつもありがとうございます。ご評価、本当にとてもありがたいです。

より一層頑張りますので、是非この機に「ブックマーク」といいねのご検討をお願い致しますm(__)m

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