表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】破壊神のしもべはまったり待機中 ~女神様がほぼ仕事しないので、俺ものんびり異世界青春スローライフすることにした~  作者: 夢ノ庵
第2章 砂漠の魔法国家で貴族するのに必要なのは、お金とかより魔力の様です。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/303

第80話 第2章エピローグ4 国王陛下の置き土産がちょっとした家宝レベルな件

 

「しかし驚きましたな、女神様が顕現(けんげん)なさるとは」

「驚きましたけど……あのタイミングで、あのセリフでってのはちょっと……」


 再び控え室。

 帰りに支障ない服を用意すると陛下が言っていた通り、ちょっとよそ行きな感じの、良い服が籠に入れてあった。


「俺が驚いたのは、顕現されたのもそうですけど、皆に声、聞こえてたじゃないですか」

「その様子でございましたな。女神様から名指しされた様なものの貴族院長の、慌てた声たるや」


 と、はっはっはっ、と愉快そうに笑うヒューさん。政敵多いのかな。


「まぁ院長の件はさておき……陛下にも御声が届いていたのでしょうな。陛下の目線を追っておりましたが」

「女神様、姿を表すと、そこにいる人には声が聞こえるのかなぁ。まっ、また疑問に思えたら聞こうかな。とにかく着替えちゃいますね」

「脱いだ物はそのままで結構でございます。いずれにしても洗いますので」


 俺は控え室ソファーの裏に回って、籠持ってこそこそと着替え。

 ちょっと良い服なだけあって、普段着の「紐で締める」のがベルトだったり、生地も目が詰んでいる。


 と、唐突にドアがノックされる。


「ち、ちょっと待ってくださいー! 今、着替えの真っ最中なので!」


 ヤバいヤバい、半分パンツ出した状態を、さっきまであれだけ格好つけた新郎が晒す訳にはいかない。

 急いで服を着る。ベルト、良し。ボタン、良し。うん、OK。


「どうぞー」

「失礼、ノガゥア卿」


 扉が開き、入ってきたのは見知らぬ人だった。50代後半位だろうか、いや60代か……その位。

 ただ、その声は確かに聞いた。花の誓いの時の、あの人だ。貴族院の院長閣下。

 独特の文様――ツタ文様にも見える――の、胴までの上着を着けた、痩せ型の男性だ。


「貴族院長閣下」


 ……って呼ぶのが正しいんだよな? 確信は持てないが、ともかく呼び掛けてみた。


「ノガゥア卿。此度は良き日であったな、改めてお祝い申し上げる」

「あ、ありがとうございます。花の誓いの時も、ありがとうございました」

「いやいや……立場上、色々役回りが就く事が多いが、バーシウムの花での花の誓いとは、私も良い経験をさせてもらった。少し良いか?」

「院長閣下。わたしは退場した方が宜しいですかな?」

「ヒュー閣下。私は別にお前を敵視はしてないぞ? あざ笑われる謂れも無いはずだがなぁ」

「これは失礼。いずれにしても、シューッヘ様にお話しがあるご様子ですな。わたしは退室致します」


 あざ笑われる謂れ? ヒューさんデカい声で笑ってたから、廊下まで聞こえたのかな。

 ヒューさんは俺に軽くペコッてしてから、部屋を出て行った。


 何せ、部屋が今日は狭い。

 前はソファーが3つあったしテーブルもあったが、今日はソファー1つ残して全部どけられて、衣装置き場になっている。


「ノガゥア英雄閣下。外交使節団の話は、ヒューから聞いているか?」


 ソファーに腰を落としながら、院長閣下が尋ねてくる。


「は、はい。詳細にどうこうと言うよりは、そうなった、という程度の話ですが」

「私は貴族院長だが、軍務卿に知古がいてな。少しきな臭い話を聞いておるのだ」

「きな臭い話?」


 俺も、話が何だか怪しい方向に進み出しそうなので、ソファーに、院長閣下の近くに座った。

 院長閣下が、スッと頭を寄せて来る。俺も頭を寄せ、小声で会話出来る位置になる。


「曰く『オーフェン国王は外交使節団を利用してローリスを落とす画策をしておる』と。単なる与太話やも知れんが」

「その詳細とかは分からないんですか?」

「全く分からん。だから与太話の可能性もあるのだ。または、その様な噂で警戒させておいて、単に通商交渉を有利に進めたいとかな。色々考えられる」

「にしても、その話を何故俺に? 通商交渉も、いや外交自体だって俺初めてで、多分単なるお荷物ですよ?」

「対オーフェンではな。貴殿の魔法と魔法力については、陛下から伺っている。恐らく、最大戦力だ。故に、英雄がローリスを離れた間隙に攻める、という事やも知れん」


 まぁ確かに……俺の魔法力は、数値だとショボいが7,000年前基準のそれは結構凄い模様だ。

 俺としては難なく出来る[アジャスト]の連続発動も、フェリクシアさんとても俺のようには出来ないみたいに言ってたしな。


「でも、ローリスって地理的に凄く攻めづらいじゃないですか。それにその……イリアドームも……」

「言いたいのは『陛下の目』か? アレも弱点があってな、定点6箇所のみ、そして視野が狭く、広域監視に向かぬのだ」

「な、なるほど……その、もし万が一起こる、軍務卿の方が心配される最悪のシナリオとは……?」

「既にオーフェン軍が遠巻きに包囲・隠蔽待機していて、外交使節団がオーフェンに着いた時点で挙兵、全方位より攻める、というものだ」

「全方位……ローリスの主戦力は確か魔導師ですよね。範囲魔法的なもので何とかなりませんか」

「短期間は何とかなるだろう。それと、都市全体結界の張れるイリアドームが落ちなければ、これも何とかなる。だが、イリアドームは完全に中側の施設で、防御がまるで無い。歩兵1人が飛び込んで、手持ち爆弾1つ投げれば、簡単に落ちる」

「うーん……対策は? そこまで最悪のシナリオが見えていれば、何か対策が出来るのでは?」

「それこそ対策の要は貴殿だ。使節団に、無論隠密だが大型空間転移のスクロールを持たせる。いざという時には、英雄を単身でもローリスに戻す」

「す、すいません、スクロールって?」

「分かりやすく言えば、『使い捨ての魔法道具』だ。ただそれも転移スクロールともなると、作るのも簡単で無い。魔導水晶をかなり大量に砕いて、ペンキと混ぜて魔法陣を描くので、魔導研究所の連中は青くなってたな」


 ……楽しいオーフェン観光旅行のつもりが、どうにも気が抜けない話になってきた。

 ヒューさんも、恐らく察知していない。軍系からの、極秘情報なんだろう。


 荒唐無稽と言えば、言える。あの猛烈に暑い砂漠の中、長期間、大量の兵を隠蔽しつつ置く。条件が厳しすぎる。

 例えば1箇所に密集していれば、俺の[アジャスト]じゃないがそういった魔法で暑さをしのいで待機も出来ようが、全方位は……


「院長閣下、お話しは分かりました。ただ、あくまで参考程度に聞いておきます。全方位に兵を置く、というのがあまりに現実離れしています」

「私もそう思う。いつの時代も、おかしな噂は立つものだ。これが単なる噂で終わり、貴殿らのオーフェン使節訪問が無事済む事を祈る」


 そう言って、院長閣下は立ち上がった。俺も立ち上がり、扉に向けて歩いて行く閣下に頭を深く下げた。



 ***



 帰りは歩きだった。でも、アリアさんと手を繋いで坂を下って、もうニッコニコ気分である。

 屋敷に帰ると、フェリクシアさんが表に立って待っていた。


「おかえりなさいませ、ご主人様、奥様」

「アレ? 呼び方変えたの?」

「ああ。別に深い意味は無いんだが、より一般的な方が対外的にも良かろうと思ってな」


 フェリクシアさんが扉を開けてくれるので中に入る。

 と、ホールのテーブルに、小さい木箱が置いてあった。


「陛下とご主人様達が行かれてから、兵士からこれをと、預かっているぞ」

「あの木箱?」

「そうだ。開けてはいない」


 と、なると、開けるのは俺の仕事だよな。木箱に近づき、蓋を取る。


 中には、液体の中身が入った瓶が2つ。そこそこ小ぶりな瓶で、日本規格で言えば250cc位の大きさ感だ。

 片方は透明、片方は……何色って言うんだろ、青色系だけど、不思議な色をしている。

 日本でも見かける様な細い紙くずの様な緩衝材の上にふわりと乗せられているあたり、きっと高価な物なんだろう。

 それと何故か、瓶の長さほどのガラス棒1本、箱の端に入っていた。なんだろ?


 ラベルは……あれ読めない。地名とかなのかな、女神様翻訳が効いてない感じで、字の区切りも分からない感じだ。


「フェリクシアさん、これ俺読めないんだけど、中身何?」

「どれ、ん? なっ!!」


 フェリクシアさんが叫んだ。


「え? どうかした?」

「これは……エリクサーとマギ・エリクサーのセットだ。古代文字でわざわざ書いてあるので、読めないのも当然だ」

「エリクサーは初めて聞くなぁ、マギ・エリクサーは使った事あるけど」

「何ぃ?! ご主人は、マギ・エリクサーを、ご、御自身にか? 誰か他人にか?!」

「使ったってのは語弊があったか、使ってもらった、だな。以前、ヒューさんにぶっかけられた」

「なんと……これだけで国が建つ程の価値だぞ、この2つは」

「あー、そう言えばフライスさんがそんな事言ってたっけな。これ、1回の適量とかってあるの?」

「私も詳しい訳ではないんだが、通常の怪我や病気であれば1滴2滴で良いと言われている。実際試した者の話が無く、あくまで伝聞だが」


 なるほど、1滴をすくい取る為のガラス棒1本、な訳か。


「うーん、万能常備薬、って感じかな?」

「エリクサーを常備薬とお考えになるご主人様の豪胆さには恐れ入る」


 フェリクシアさんの顔が驚いたまま固まっているので、取りあえず蓋を閉める事にした。


「えーと、保存方法とか、フェリクシアさん分かる?」

「保存は、暗所常温保存で構わない。しかし割ったら一大事だな……」


 おぉ? 家事については絶対の自信を持っていそうなフェリクシアさんが箱に掛ける手が、もの凄く恐る恐るだ。


「エリクサーは、キッチンの入口の戸棚の、最下段の一番奥に入れておく。万が一を考えて、余裕がある時であれば、私を呼んで欲しい」

「余裕がある時? 何かするの?」

「物が物だから、柔軟抱擁結界で垂れ落ちる分も回収する。もちろん瓶自体も保護する」

「なんか気軽には使えない感じだね、疲れとかに使っちゃ、やっぱダメ?」

「いや、これの宛名人はご主人様だ。奥様共々、使いたい時に使えば良い。永遠死蔵していても、それはそれで意味が無い」


 それもそうか。「我がノガゥア家の800年前からの家宝で……」みたいなのにするよりは、俺たちの世代で活かして使おう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ