23.巨人との戦い
俺はパーティを見回す。
「……何か策はある?」
「いやぁ……とにかくやるしかねぇ!」
これだけの恐怖を目の当たりにしても、まだ戦う気持ちを失っていないのはすごいことだ。だが勇気と無謀は紙一重、焦ってはいけない。勝算も無しに突撃すれば死者を出すだけだ。考える時間はあるし、その気になれば引き返してじっくり作戦を練ることもできるかもしれない。
さすがに大軍を引き連れてやってくるのは、この狭いダンジョンの移動には時間がかかってその間に士気は下がってしまうし、ボス部屋に入ったらすぐに鉄槌を振り回されて無駄に死者を増やすだけになりそうだ。
アンナの炎の矢はどうだ? だがあの程度の火力では、ある程度の炎に耐えられるあの甲冑には意味が無いだろう。それに亡霊には魔法のダメージも減衰する。油で盛大に燃やしたところで結果はあまり変わりそうにない。
「……油?」
何かを閃いた気がして声がでた。
「いや、いけるかもしれねーぜ!」
「私も今それ考えてた!」
何も言っていないのに俺の考えていたことが伝わっているようだ。各メンバーの役割分担を確認して簡単な作戦会議を行う。俺は兜をかぶりなおしてボス部屋に入っていった。
部屋に入ると巨人は動き出して鉄槌を構える。俺はパーティ全体を奇跡の力で強化し巨人へ突撃した。仲間の足音も俺に続いている。
前進して間合いに入る。その瞬間、巨人はブオォォンとものすごい勢いで鉄槌を振り回した。
予備動作が大きかったので攻撃する軌道は読めていたが、振りがとてつもなく速かった。
攻撃を盾で受け流そうと試みたが、受け流しきれずに盾は粉砕し俺は吹っ飛ばされた。ミシミシと全身に振動が伝わる。
戦士の一人が俺の身体を受け止めてクッションになってくれて壁の激突は免れた。
「リーダー!大丈夫ですかい?!」
「うぐっ……大丈夫!」
俺はすぐに立ち上がって状況を確認する。
アンナは油の入った小瓶を全て巨人に投げつける。戦士たちは鉄槌の間合いに入らないように警戒しながら距離をとっている。予定通りに動いている。
巨人はまたフルスウィングをしようと鉄槌を構えようとする。そうすると足元が油で不安定になった影響で少しふらつく。そこを中衛戦士達が槍で足元を攻撃してさらにバランスを崩す。畳みかけるように前衛戦士達が盾を構えて体当たりをする。バランスを失った巨人はドォォォンと大きな音を立てて転倒した。
「みんな下がって!」
「アンナちゃん!ヨロシク!」
「はーい!」
油まみれの巨人はアンナの炎の矢で炎上する。すると甲冑の中の亡霊が甲冑から逃げ出そうともがき、兜を外した。その隙間から射手が火矢で追加炎上させる。たまらなくなった亡霊たちがどんどん甲冑から逃げ出す。
今がチャンス! 俺は甲冑の護りを失った亡霊たちを全てターンアンデッドで浄化していった。主人を失った甲冑はバラバラになり、油は燃え尽き、あたりは静寂を取り戻していった。
――勝利!
地下20階ボス討伐を成し遂げたぞ! 俺たちはお互いの健闘を称え合い、しばしの勝利の余韻に浸った。
全てが終わったらアレスや他の戦士たちの死体を弔ってやろう。だがその前にやることがある。
それは宝物庫の前に座っていた。負の感情を抱き、ずっと俺達のことを見つめていた。この現世に未練を残し散っていった戦士の亡霊を開放しなくてはならない。




