第12話:変な胸中③
目線を下ろしまして足元です。
変わってしまったのか、選んで変わられたのか。そこは分かりませんが、たぬき姿の朝宮さまがいらっしゃいます。
どうにも、不満たっぷりのご様子です。朝宮さまは私を見上げて吠えられました。
「ちょ、ちょっと本当に何だったの!? 本当、よくわからないんだけど!?」
そりゃそうでしょうねって、納得の不満の声でした。私もちょっと以上に不親切でしたよね。ただ、説明してしまうと朝宮さまが尻込みされそうでしたので、こんな強引な運びとなりましたが。
ともあれ、今説明するのには何の問題もありません。私は朝宮さまに一度頭を下げさせていただきます。
「説明も無しにすみませんでした。朝宮さまが女中殿と仲良くされたいとのことでしたので。つい」
「つ、ついじゃないでしょ!! これじゃあ、女中さんに話しかけざるを得なくなったじゃないか!! うむなんて言っちゃったしさ!!」
「ご不満でしょうか?」
「バレる危険が増すでしょ!? 僕は本当、バレて嫌われたく無いのに!!」
その不満の叫びに、私はなんと言いますかこう……けっこうな罪悪感を味わったりしました。
良かれと思っての思わずの行動ではありましたが、かなり勇み足でしたよね。まったくもって無理やりでしたし。
私は出来る限りの深さで頭を下げさせていただくことになります。
「えー、本当にすみませんでした。私には露見してしまう危険性はそれほどでは無いように思えまして。それぐらいでしたら、仲良くされた方が良いのかと」
「……良いって、え? それは僕にとって良いって話?」
小首をかしげながらの朝宮さまでした。ふぅむ。ここで頷くのも恩着せがましいと言うか言い訳がましいと言うべきか。ただ、そうとしか言いようがありませんので。
「女中殿を避けることを心労に感じておられるようでしたので。私もいれば、露見した時に何とか出来ると思い……お許し下さい」
頭を下げ続けながら、私はなんとも後悔の思いで一杯でした。
なーんでこんなことをしてしまったのか。それはまぁ、朝宮さまに必要とされた時に覚えた妙な感じが原因でしょうけどね。
何かして差し上げたくなったのです。
朝宮さまのために、この方のためになる何かを。
しかし、それは大きく失敗だったようですが。朝宮さまはまじまじと私を見つめておられます。小娘が妙なことをほざきおって的なことを考えておられるのですかねぇ。
そして不意にでした。
「あ」
なんて朝宮さまは口にされました。
「し、しまったっ! ぼ、僕としたことがすっかりっ!」
そして、そんな叫び声を挙げられまして。その場でぐるぐるされたかと思えば、すごい勢いで近くのヤブに飛び込まれました。
……えーと?
顔を上げた私はけっこうポカンでした。大失敗を犯してしまった。そんな理解で良いのでしょうか?




