旦那さまはたぬきさんでした〜虐げられた妾の娘は、たぬきの夫に幸せを見るか?〜
久松 咲江は妾の娘だった。
飽きられた妾、その娘だった。久松家は帝都有数の名家であったが、当然そんな咲江に血筋相応の待遇は望めなかった。そしてそれは、妾である母の死と共に悪化の一途を辿る。
義理の姉である本妻の娘、久美子に玩具としてたわむれに弄ばれる毎日。
ただ、咲江は何も気にしてはいなかった。
受け入れるだけなのだ。
それが母の教えだった。望まず奪われるように妾にされ、子を作らされ、飽きられ、他に生きる術もなければ久松を頼るしかなかった母の教えだ。
全てを文句も無く受け入れる。それが自分たちのような者が幸せに生きる唯一の方法なのだと。
そうして咲江は十八の年を迎えることになった。
相変わらずの弄ばれる日々を送っていたのだが、そんな彼女に突如縁談が舞い込む。
彼女の幸せを願ってのものではない。義理の姉のたわれむの一環だった。相手は咲江よりも二回り以上年上であれば、ろくな評判の聞こえてこない悪漢であった。
しかし、受け入れるだけだった。
咲江は淡々と嫁ぎ先に出向くことになる。そして、大きく首をかしげることになった。促されて、足を踏み入れた座敷間。そこには嫁ぎ相手である悪漢がいるはずだった。だが、咲江が目にしたのはクリクリとした黒目のたぬきの姿だった。
それは不思議なたぬきだった。
そのたぬきは、言葉をあやつり、人に化け、妙に気が小さく、そして……彼女に優しかった。
飽きられた妾、その娘だった。久松家は帝都有数の名家であったが、当然そんな咲江に血筋相応の待遇は望めなかった。そしてそれは、妾である母の死と共に悪化の一途を辿る。
義理の姉である本妻の娘、久美子に玩具としてたわむれに弄ばれる毎日。
ただ、咲江は何も気にしてはいなかった。
受け入れるだけなのだ。
それが母の教えだった。望まず奪われるように妾にされ、子を作らされ、飽きられ、他に生きる術もなければ久松を頼るしかなかった母の教えだ。
全てを文句も無く受け入れる。それが自分たちのような者が幸せに生きる唯一の方法なのだと。
そうして咲江は十八の年を迎えることになった。
相変わらずの弄ばれる日々を送っていたのだが、そんな彼女に突如縁談が舞い込む。
彼女の幸せを願ってのものではない。義理の姉のたわれむの一環だった。相手は咲江よりも二回り以上年上であれば、ろくな評判の聞こえてこない悪漢であった。
しかし、受け入れるだけだった。
咲江は淡々と嫁ぎ先に出向くことになる。そして、大きく首をかしげることになった。促されて、足を踏み入れた座敷間。そこには嫁ぎ相手である悪漢がいるはずだった。だが、咲江が目にしたのはクリクリとした黒目のたぬきの姿だった。
それは不思議なたぬきだった。
そのたぬきは、言葉をあやつり、人に化け、妙に気が小さく、そして……彼女に優しかった。
序章:夢の中のたぬきさん
2020/12/30 17:12
(改)
第1話:久松家と私
2020/12/31 20:09
(改)
第2話:いざ嫁入り①
2021/01/01 10:06
(改)
第3話:いざ嫁入り②
2021/01/02 21:04
(改)
第4話:……たぬ……き?
2021/01/03 21:18
(改)
第5話:あれの翌朝
2021/01/04 17:11
(改)
第6話:たぬきさんとの再会①
2021/01/05 21:21
(改)
第7話:たぬきさんとの再会②
2021/01/06 21:22
(改)
第8話:尋問のお時間です
2021/01/07 21:07
(改)
第9話:たぬきさんの告白
2021/01/08 20:14
(改)
第10話:変な胸中①
2021/05/22 07:16
第11話:変な胸中②
2021/05/22 08:17
第12話:変な胸中③
2021/05/22 09:15
(改)
第13話:失敗の結果①
2021/05/22 10:19
第14話:失敗の結果②
2021/05/22 14:22
第15話:平穏はひと時のもの
2021/05/22 18:37
第16話:お義姉さまと私①
2021/05/22 18:47
第17話:お義姉さまと私②
2021/05/23 06:22
第18話:朝宮さまと私
2021/05/23 07:12
第19話:私の生き方
2021/05/23 07:41
終話:私の選ぶ道
2021/05/23 08:10