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転生吸血鬼は自由に生きたい  作者: かきごおり
4章 悪とは常に相対的なもの
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誰でも真面目に見える時がある(かもしれない)

「大丈夫?大変だったね〜」

模擬戦が終わり、キャルシーさんが楽しげに話しかけてくる

至って気楽なようで非常に腹が立つ

「大変だったね〜じゃないですよ!気付いてましたよね!」

私は声を荒げて抗議した

フードが取れないようにしたり、加減したりと大変だったのだ


場所が室内だからまだいいものの、仮に外だったら確実に火傷がいくつかできる

私に一体いくつハンデを背負わせれば気が済むのだろうか

頑張って人数不利を覆したのだからそれで十分だろう?

そんなに人の苦しむ姿が見たいか!


内心が荒れに荒れようと、キャルシーさんはどこ吹く風で視線を逸らす

私が睨んでも気付かないフリをされて終わりだ


「それにしてもよくこの人数に勝てたねー。流石に負けるんじゃないかって思ってたんだけど」

そこら中に転がった冒険者たちを見て、キャルシーさんが驚きが混じった声で呟く

「なら尚更助けて下さいよ。私がどれだけ苦労したと?」

そこまで息は上がっていないが、決して楽だったわけじゃない

体力と強さはイコールじゃないのは当然だ


一旦冷静になって考えてほしい

吸血鬼とはいえ、まだ年端もゆかないか弱い少女を大の大人が取り囲んで一斉攻撃だぞ?

正気の沙汰じゃない

倫理観を側溝にでも落としてきてしまったのだろうか


それに、人間じゃないというところは獣人も同じだ

その髄力と体力は人間を優に超えるだろう

その分、魔力は低いのかもしれないが、私は今回魔法を使っていない

まあ、身体強化はしたのだが、獣人もそれくらいは無意識にしているらしい

つまり、条件は同じなのだ


そもそも私が何をしたというわけでもないのに、寄ってたかって攻撃しやがって

恥を知れ

子供に現実を教えると言えどもやり方があるだろう

服も破れた箇所があるし

せめて爪は切ってほしい


ちなみに、服はパーカーからローブに変えた

もちろん色は黒だ

同志諸君には説明は不要だろう

黒ローブのローブとは、若干デザインが違う

というか、デザインなんてものは無い

黒ローブのローブは柄が少しあったが、私のは無い

理由は簡単

私にそんな才能は無いからだ


私は絵を描くのが苦手だ

特に人物画

あれは無理

私に描けるのは棒人間くらいだ

まあ、柄の必要性も感じないけどね

服なんて無地で十分

目立たないに越したことはない(負け惜しみ)


「でも、絡んでくる奴はいなくなったでしょ。結果オーライじゃない」

それはそうだが、そういう問題じゃない

私が言うからいいのであって、キャルシーさんが言うべきではないと思う


私がいつか仕返しすることをを胸に誓ったところで、犬の獣人のお姉さんがやってきた

犬の獣人のお姉さんはウルとは結構違っていて、全体的な輪郭がウルよりも若干丸みを帯びている

わかりやすいのは耳の形とかだろうか

犬と狼は似たようで違うらしい

そしてギルドマスターの秘書らしい

なぜなら、胸元に手作り感満載の名札が付いていたからだ

そこには、明らかに手書きの文字で秘書と書かれていた


「用意が出来ました」

秘書さんはそんな子供っぽい名札とは真逆の、無表情かつ直立不動の美しい姿勢で私たちを呼んだ

いかにもな完璧秘書であり、余計に名札が不自然で浮く

まあ何かしら事情があるのだろうが、そんなことを気にしている場合じゃない


私とキャルシーさんは秘書さんに連れられ、ギルドマスターの執務室に向かった

道中の廊下は簡素な普通のものだったが、所々に凹みや爪跡、更には黒ずんだ血の染みなんかもあった

どこもかしこも物騒な世界だ

より吸血鬼とバレるわけにはいかなくなったわけだ


執務室に着くと、ギルドマスターが長椅子に座って待っていた

キャルシーさんは手慣れた様子で机を挟んでギルドマスターの反対側に座る

私も慌ててキャルシーさんの隣に座る


ギルドマスターはライオンの獣人のようで威圧感が凄い

軽く観察しただけでも小さな傷がいくつも見つかり、歴戦の雰囲気を醸し出している

狙った獲物は逃さない

そんな意志を感じる鋭い目つきで、私たちを待ち構えていた

気分はさながら断頭台だ


静寂を打ち破り、キャルシーさんが黒ローブの件の説明を始める

その内容は端的に纏められていて、横から口を出す隙が無い

ギルドマスターはそれを目を瞑りながら黙って聞いていた

その様子はまるで巨像で、微動だにしない立ち振舞が威圧感を強めていた


しかしこの威圧感の前で普通に話せるキャルシーさんが凄いと思う

こういう時は真面目に見えるな〜

仕事のできる女という雰囲気を感じる

普段の素行からは考えられない


キャルシーさんが話し終わると、ギルドマスターが俯いたまま震えだした

何か気に障る事があったのだろうか

もしやバレた?

ここから良い方向に事態が展開される可能性あるか?

私は少し身構え、いつでも逃げ出せるように足元に力を込めた


「会いたかったぞ〜!」

すると、ギルドマスターが満面の笑みで机を飛び越え、キャルシーさんに飛びかかった


私の思考は停止した


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