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転生吸血鬼は自由に生きたい  作者: かきごおり
4章 悪とは常に相対的なもの
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ヒマつぶしは用意しておこう

私たちは現在、王都の城壁の前にいる

検問待ちだ

王都の警備は当然厳しく、一回一回にかける時間も長くなる

つまりはまだ待たされるということだ


思い返すと道中で色々な話をした

何日も馬車で揺られ続けるというのに、話と護衛くらいしかやる事が無いのだから必然的にそうなる

つまりは暇だった


まあそのお陰で、私とキャルシーさんの距離は縮まったと思う

色々なことを話したし、聞いた

割合としては八:二くらい

勿論、話すのが二だ


ロンギスであった事

キャルシーさんが元Bランク冒険者だった事

王都がどんな所なのか

ギルドマスターの事

私たちの事(結構はぐらかした)

この大陸の事などなど


特にギルドマスターの事とキャルシーさんの事が驚きだった

数年前まで、キャルシーさんは王都で冒険者をしていたらしい

斥候をしていたそうだ

育ったのも王都なので地理には詳しいとか


ギルドマスターは最初は丁寧な話し方だったが、キャルシーさんが乱入してきたところから結構砕けた話し方になっていた

あれが素で、丁寧に話しているのはギルドマスターとしての作法やら礼儀らしい

冒険者にそんなもの必要なのかと思ったが、貴族が依頼をする事もあるらしく、身につけておかないと色々文句を言われるそうだ

人間も獣人も力を持つと歪むらしい


しかし、丁寧な話し方のギルドマスターは、はっきり言って少々気持ち悪かった

だって、強面で虎の獣人の人が丁寧な話し方をするのだ

普通に話していた方がいいと思う

ちなみに、タイラガはギルドマスターの甥らしい

タイラガの進化形がギルドマスターと言う感じだ

あと、ギルドマスターの名前はトラゾーと言うらしい

私はギルドマスターの親のネーミングセンスを疑った



そうこうしていると、私たちの番が来ていた

鎧に身を包んだ獣人が手招きしている

「それじゃあ行ってくるから、レナちゃんたちはここで待っててね」

キャルシーさんはそう言うと、馬車から降りて兵士の元に向かう

何でも、人間と獣人の間には色々といざこざがあるらしく、私が乗っていると知られると面倒なことになるらしい

なので、私は垂幕の隙間からこっそりと覗くしかない


「……まだですか?」

すると、ウルが辟易した様子で話しかけてくる

「後もう少し」

「分かりました…」

恐らく、この旅で一番精神が参っているのはウルだ

ウルにとって、激しく揺れる馬車の中でひたすらじっとしているのは、苦痛でしかないのだろう


私は外の魔物に魔法を当てる練習をしていたから、ある程度は暇を紛らわせたし、ラナに関しては一日中爆睡していた

結果的にウルが放置される形になってしまったのも大きいだろう

少し馬車旅中の自分の行動を反省した


外の観察に戻ると、キャルシーさんが警備の人と話していた

遠目からだが、楽しげに談笑している様子で雰囲気は明るい

どうやら知り合いのようだ

顔が広いというのも、本当のことなのかもしれない


暫くすると、キャルシーさんが馬車の中に戻ってくる

「通っていいって。やっと王都に到着だよ!」

キャルシーさんがそう言った瞬間、ぱっとウルの表情が明るくなる

「ほんとですか!?」

「ほんとほんと!こっから先は私の庭みたいなものよ!」

王都を自分の庭というのは、普通に不敬罪とかに当てはまりそうだ


そんなことを考えもしたが、私だって普通に嬉しい

やっと暇な時間が終わるのだ

喜ぶなという方が難しい


馬車は動き出し、王都を囲う分厚い防壁を潜り抜けていく

そこから先には、大小様々な建物が立ち並んでいた

今まで通ってきた、大草原や森林などとは別世界だ

私は遂に王都に到着したのである

これで退屈とはオサラバだ!

イエーイ!


好奇心に駆られ、再び垂幕の隙間から外の景色を覗き見るが、思っていたより人が多く、慌てて顔を引っ込める

勢いのあまり、垂幕がはためき、差し込んできた日光が私の手を軽く焼く


「ん?何か変な匂いしない?」

「ほんとですね。外からですかね?」

流石獣人

嗅覚が鋭い


慌てて誤魔化したが、そう何度も通用しないだろう


浮かれていたのも束の間、周囲が危険だらけであることを思い出す

よくよく考えれば、獣人の都市など、危険地帯もいいところだ

二つ返事で引き受けたはいいが、相当不味い状況だ


私は自分の浅慮を今更呪った

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