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転生吸血鬼は自由に生きたい  作者: かきごおり
3章 獣人の国=ケモナー天国
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頼まれ事って断りにくいよね

翌日



私はギルドのテーブルの上に突っ伏していた

暫くの間は、何をするにも気力が起きそうもない

だって疲れたんだもん!


昨夜は大変だった

街が燃えたから住民を救助して回り

その原因の黒ローブを倒し

やっと終わったと思ったら、消火の手伝い

建物の残骸の除去

黒ローブの死体の回収と焼却

ついでに、街の掃除をやった


多すぎない!?

全部やる必要は無かったので自分のせいでもある

だけど、やる事があるとやりたくなってしまうのだ

他の人が働いてるところで抜けると気まずいじゃん?


私が心の中で文句を言っていると、ギルドマスターが私の方に歩いてきた

通り過ぎてくれと願うが、案の定私の横で足音が止まる

「君と話したい事があるので、お…、いや、私と一緒にきてくれないか?」

何の話だろう?

私、またなんかやらかした?

うーん

心当たりが多すぎる

「はぁ、分かりました」

断れるはずも無く、私はギルドマスターに付いていった


着いた場所は応接室だった

私にとっては説教部屋だ

嫌な予感しかしない

本当にまたお説教だったりしないよね?


すると、ギルドマスターが話を始めた

「先に言っておくが、今からする話は他言無用だ。いいね?」

ギルドマスターが確認をとってくる

「はい」

私は頷く

この時点で、お説教ではないことがほぼほぼ確定したので、私は静かに胸を撫で下ろした

そうして話が始まった


「単刀直入に言おう。君に王都に行ってほしい」

ギルドマスターが言う

「それは、なぜですか?」

私は困惑する

その理由が分からない上、不必要な長距離移動はしたくない

それに、私は獣人の皆さんを完全に信用しているわけじゃない


「これは黒ローブの一味を、ごうも…、ゴホンッ、尋問して手に入れた情報なのだが」

今、何か恐ろしい言葉が聞こえた気がしたのだが……

多分、気の所為だ

きっとそうに違いない


「黒ローブの仲間が王都にもいるらしい」

神妙な面持ちでギルドマスターが言う

……それは、不味いのでは?

つまり、王都でもこの騒ぎを起こそうとしているということでしょ?


「幸い、まだ行動を起こしていないそうなので、君にはその事を王都のギルドマスターに伝えてほしい」

それはまた難しい依頼だな〜

どの辺りがかというと、他人と会話しなければいけないところだ


「それをして、何か私に利点があるんですか?手紙でも良くないですか?」

そう、そもそもこの依頼を私が受ける理由は無いのだ

私はそんな大変な依頼をタダで受けるほど甘くない

人との会話は極力避けたいし、目立ちたくもない


「この依頼を達成すれば沢山の報酬だけでなく、ランク昇格にかなり近づくぞ。それに、王都はここより人間嫌いが多いが、この依頼をこなせばある程度の信用が得られる。取り敢えず、道端で突然襲われるなんてことは無くなる」

それって、普通は襲われるってこと?

物騒すぎない?


手紙だと途中で妨害される可能性もあるし、正しく伝わらないかもしれない。恥ずかしながら、文字を書くのは苦手なんだ…。損をさせるつもりは無い。王都に行くつもりがあるなら受けた方がいい」

ギルドマスターが依頼を受ける事を、めっちゃ勧めてくる

非常に断り辛い

第一、こういうのは断ったら後が怖い

元から選択肢は無いのと同じだ


「はぁ…、分かりました。受けましょう……」

私は渋々首肯し、溜息をつく

「そうか!それは良かった!」

ギルドマスターは嬉しそうだった


「念の為、手紙と紹介状も用意した。持っていってくれ」

ギルドマスターが懐から取り出した封筒を受け取り、袋に仕舞う

これで門前払いを食らうことは無いだろうが、そもそも門前まで辿り着けるかは怪しいところだ

私のコミュ力を舐めないでほしい


「あ、そうだ」

要件は済んだだろう

そう思って立ち上がろうとしたところをギルドマスターに止められる

「何ですか?」

「すまない。感謝の言葉を伝え忘れるところだった」


そう言うと、ギルドマスターは突然、深々と頭を下げた

「この街を守ることに協力してくれたこと、心より感謝する。人間の君にとっては、決して居心地の良い場所ではなかっただろう。それにも関わらず、危険な争いに身を投じてくれたこと。感謝してもしきれない。この恩は必ず返そう」

思ったよりもちゃんと感謝されて、若干戸惑う私

「いや、別にそんなに気にしなくても……。私がやりたかったからやっただけですし…」

「それでも、君のお陰で多くの命が救われた。受け取ってくれないと私が困る」

「……そうですか。なら受け取っておきましょう」

どうしてこう面倒なことになったんだろう

私のせいか?

私のせいか…


これで今度こそ話は終わりだろうと、静かに腰を挙げる

そのまま扉に向かおうとしたところで、覚えのある気配が近付いてくるのが分かった

念の為、数歩下がって扉から距離を取ると、ギルドマスターが不思議そうに顎に手を当てる


「どうし……」

「ちょっと待った!」


バンッ


その時、ドアが壊れるくらいの勢いで開かれ、誰かの叫び声が階下の酒場まで響き渡った


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