スキルがある時点でチートだよね
気持ち悪い、何故だ
もう一度袋の中を覗いてみるが、真っ暗で何も見えない
目眩が酷くなるだけだ
立ち上がろうと腕に力を入れても、力が変な方向にかかって立ち上がれない
ここまで酔ったのは初めてだ
袋の中に入っているもの
これ魔力か?
何故だか分からんがこれが魔力だという確信がある
普通に考えたら、毒としか思えないけど
吸血鬼になった影響だろうか
今はそういうことにしておこう
難しい謎ほど燃えるってもんだ
やれそうな事も一通り終わったし、スキルを創ってみるか
目標はあるに越したことはない
他にできることは、宛もなく危険な森の中を彷徨うのと、延々と独り言を言うことくらいしかない
片方は自殺行為、もう片方は虚しくなるという実質自殺行為
死にたくなる
さて、思い立ったが吉日
まず、異世界で御馴染みの『鑑定』を創ってみよう
やり方も何も分からないが、試してみないと始まらない
誰もいない場所ですら失敗を恐れていたら話にならない
取り敢えず、自分の中の『鑑定』という概念を思い浮かべる
そして、魔力と思われる何かを自分の手の中に集中させるように意識する
そうすれば、自ずと脳内に言うべき言葉が浮かんでくる
「能力創造」
俺の手の中で魔力の塊が増幅し減少していく
一瞬として同じ形を保つことはなく、あらゆる形に変化していく
そこに俺の望む力へと変化させるように、魔力の塊の変化を誘導する
それは氷が水となり水蒸気となるように、少しずつ抽象的な、概念的なものに変化していく
力の根源とでも言うかのような存在になったとき、それが心臓に染み込むような感覚を得る
それは身体の中でも小さな変化を続け、漸く一つの定まった形に至る
《鑑定を創造しました》
《魔力操作のレベルが上がりました》
《魔力感知のレベルが上がりました》
すると、どこからか声が聞こえてくる
反射的に周囲を見回すが、やはり誰もいない
あるのは草木と爪痕だけだ
だが、厨二病の俺はそれが何か大体予想がついた
何とは言わないが、お約束と言えばそうだ
こういうのには重大な謎が隠されていたりするものだが、今気にしてもどうにもならない
一つ分かったのは、俺は自由ではないということだ
メタ考察は置いておいて、内容の方に触れよう
どうやら、スキルは使えば使うほどレベルが上がるようになっているらしい
単純でいい
やる気も出る
結果は上手くいったが魔力の操作がクソムズい
かなりのロスがあったし時間も結構かかった
どれだけ難しいかと言うと、ガチ陰キャが一日で陽キャに変わるくらい難しい
これに恥という要素が無いのはいいところだ
にしても、物凄い量の魔力を使うなぁ
これが普通なのかもしれないが、吸血鬼の感覚は多いと言っている
気のせいかもしれないが、周囲の空気が若干薄くなったような気がする
まだ魔力は袋の中に沢山あるから他にも創ってみるか
本当なら取っておきたいが、ここは出し惜しみしていられるような場所じゃないし、いざというときにスキルを創る余裕はない
では何を創るか
一番大事なのは身の安全だ
化け物に会ったとき、生き延びられるように『隠密』とかいいんじゃないか?
遭遇率も低くなる
戦うこと前提で考えるよりも、避けること前提で考えた方が安全だ
「能力創造」
《隠密を創造しました》
《魔力操作のレベルが上がりました》
《魔力感知のレベルが上がりました》
さっきよりは早く低コストでつくれた気がするな
どんぐりの背比べだろうけど
一億が九千九百万になったようなものだ
恐らく『隠密』よりも『鑑定』の方が格が上だったのだろう
あと魔力関係のスキルのレベルが上がったのもあるだろう
自分の腕が上がったとは思えないし
二回で変わるほどの才能は無いし
う〜ん
あと一つくらいは創れそうだな
袋の中身を見て、そう考える
吐き気も無くなってきた
よし、最後に不意打ちを防ぐためのスキルを創るか
先手必勝
逃げるが勝ち
「能力創造」
《気配感知を創造しました》
《魔力感知のレベルが上がりました》
これで魔力は尽きた
やることねぇ〜