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転生吸血鬼は自由に生きたい  作者: かきごおり
2章 異世界といえば冒険者だよね
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我慢は大事

依頼を受けた私達は港へ向かった

ロンギスの東には海が広がっており、ちょっとした港も存在している

ロンギスの壁が高かったというのもあるのだろうが、今まで一切気付いていなかった

改めて、私の目の節穴さが露見したようだ


港に近付くにつれ、風に潮の匂いが混ざってくる

「何か変な匂いがします」

やはり、ウルは鼻がいいのか、未経験の強烈な匂いに顔をしかめている

「その内慣れるわよ」

私も潮の匂いというのを思い出しながら、歩を進める

実は記憶喪失の私だが、潮の匂いには覚えがある

失った記憶とそれ以外の記憶の差異が気になるところだ


ちなみに今回は道中、魔物はできるだけ避け、まっすぐに港に向かうことにしている

これがゲームだったら、ついでにレベル上げをしようと自ら戦いを挑むところだが、現実ではそうもいかない

何らかの問題が起こって出港に間に合わなければ、依頼は失敗するし、逃走もできなくなる

時間的余裕もあまり無いので、寄り道は禁止だ


幸い、私たちは問題無く平原を抜けることができた

ロンギスから歩くこと体感三十分

港に着くと、私たちは揃って感嘆の声を上げる


「おぉ!これはこれは」

「はー、すごいですねー」

「ほぁぁ……」

各々向いている方向は違っている

それでも、抱いた感想に大差は無いだろう


私が最初に見たのは、港に停泊している巨大な船

黒を基調とした船体に、いくつもの銀色の線が走っている

大きさも豪華客船ほどは無いが、大型漁船くらいはあり十分大きい

形は、私が見たことあるような普通の船と変わらないが、帆が張っており、海賊船に近い

大砲も付いており、その威容は正に黒船だ

江戸の人々もこんなふうに驚いたのだろう


しかし、動力は風なのだろうか?

ここが異世界ということもあり、魔力で動く船のような気がしてならない

多分、水に潜ってスクリューの有無でも確かめれば分かるだろう

でも、海で泳ぐと身体がベトベトになるので、入りたくない

船員に訊くのが一番早いのは分かっている

だが、私は軽度のコミュ症なので却下だ


すると、ウルが私に話しかけてくる

「凄いですね!レナ様!あんな大きな物がどうして水に浮くんでしょう?」

興奮したように軽く飛び跳ねながら、私の服を掴んでくる

ウルはそこに驚いたのかー

私はウルの可愛さに驚いたよ

尻尾もブンブンと揺れていて、非常に分かりやすい

オオカミもイヌ科なので、生態は近いものがあるのだろう


すると、ラナも口を開く

「……レナ様、あれを倒したいです」

あれ?

何か急におかしなこと言い出したぞ?

突然の宣言に返すべき言葉が見つからない

「いいですね!やりましょう!」

何故かそこにウルも便乗する

流石に戦闘狂二人の面倒は見切れないのだが

「あれは戦うものじゃないからねー」

軽く流して、何も聞かなかったことにする

さあ、依頼人の所に行くぞ


依頼人は太ったおじさんで、様々な装飾品を身に纏っており、お金が好きそうな見た目をしている

第一印象は悪徳商人であり、誰かを騙して金を儲けていそうだ

完全に偏見である


「ふん、お前らが護衛の冒険者か」

私たちを見下した、偉そうな態度で品定めをする様にジロジロと見てくる

はっきり言って気持ち悪い

私も改めよう


少しして満足したのか、顔を持ち上げ、しかし偉そうな態度は崩さずに告げる

「もし何かヘマをしたら奴隷にして売ってやるからな」

何だコイツ

イライラするわー

しかし私は大人だ

そこは我慢しよう

この程度、私が今まで相対してきた愚か者共に比べれば、序の口である


しかし、ふと嫌な予感がして、ちらりと僅かに視線を横に動かすと、ウルは我慢の限界のようで、歯を食いしばり、握った拳を振り上げかけている

非常に不味い

だが、ここで注意するわけにもいかず、堪えてくれることを祈るしかできない

「しっかり守ってくれよ」

そう吐き捨て、依頼人は船の中へと去っていった


「何なんですかアイツ!何様だと思っているんですか!」

姿が見えなくなった途端にウルは声を荒げる

今にも暴れ出しそうなくらいで、よく耐えたと褒めようとした言葉が出せないような状態になってしまっていた


「まあまあ落ち着いて、報酬は貰えるから」

頑張って説得すると、ウルは段々と落ち着きを取り戻してくる

それでも不満そうな表情は消えなかったが


それにしてもラナは静かだったなー

そう思い、ラナの方を見ると、眠そうにウトウトと顔を上下させていた

器用だなーと思いつつ、この状況でよく寝れるなと感心した

ああ、そういえば私と一緒に徹夜でレベル上げしてたからなー

子供はよく寝なきゃ

寝る子は育つ

夜は二人を寝かせた方がいいな


今後の方針を少し変更し、これからの予定を確かめる

長い船旅が始まりそうだが、二人は大丈夫だろうか

取り敢えず、酔い止めを二つ用意して、収納袋の中に仕舞う

備えあれば嬉しいなということだ


……こんな調子で大丈夫だろうか?


そんな不安を胸に、私たちは不安定な船の上に乗り込んだ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 名前を出すのはびみょーなラインですが、自分も「転生吸血鬼さんはお昼寝がしたい」という作品から吸血鬼が好きになって、同じような作品ないかな〜と思い、まだ全然序盤ですが読み始めた所存です。もう…
[良い点] 吸血鬼主人公ていう設定が好きです! 美少女っていうのもとてもいいです! とても私がほしい小説の条件とあっていて嬉しいです! 連載頑張ってください♪ [気になる点] 吸血鬼なんだから造った…
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