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転生吸血鬼は自由に生きたい  作者: かきごおり
2章 異世界といえば冒険者だよね
43/420

仲間っていいよね そのニ

何も無い暗闇

距離も時間も存在しない

あるのは私という意識だけ

私は手を伸ばした

無意識に、条件反射のように



勢い良く瞼が開かれ、眩い光が私の目を焼く

顔をしかめつつ、視線を動かすとそこにあったのは……


「ぐっ!痛っ!よくもやりましたね!」

頭を小さな竜に噛まれているウルだった


「……え?」

どういう状況?


私は混乱した



「あっ、レナ様!」

不意にウルと目が合うと、腕に噛み付いた子竜を取ることも忘れて、私に駆け寄ってくる

まだ身体に力が入り切らないのを感じつつも、上半身を起こすと、そこにウルが飛び付いてくる

「うっ」

急な衝撃に耐え切れず、私の身体は倒れ、硬い地面に側頭部を打つ


「レナ様ぁ!心配したんですよ!」

ウルは叫びながら、私の腕に額を擦り付ける

ウルはいつにも増して感情的で、泣き出しそうにも怒っているようにも見えた

半覚醒状態の頭に、ウルの体温と重さと髪の感触が伝わってくるが、情の欠片も無い私は重いなぁとしか思わない

それを自覚して苦笑しつつ、私はウルを押し退ける


「……重いから一旦離れてくれない?」

しかし、どれだけ力を込めても、ウルはビクともしない

力で負けていることに軽く落ち込むと、ウルが顔を上げる

「嫌です。まだ足りません」

「……何が」

私の問いに、ウルは私の目を真っ直ぐに見ながら言う

「…それっぽいあれです」


うーん分からん

謎に真剣な表情で言われると追求しづらいのだが

代名詞を使わないでくれ


そんな私の訴えを他所に、ウルは再び顔を私の腕に落とす

何が楽しいのかと困惑していると、ウルの腕に引っ付いていた子竜が飛び、ウルの背中に乗る

ウルの腕に残る歯型から視線を戻すと、子竜と目が合う

何かを訴えかけてくるような視線を向けられ、何も分からない私は非常に居た堪れなくなった


すると、背中の上の子竜を邪魔に思ったのか、ウルが背中を揺らし始める

子竜も落ちてたまるかと、足に力を込めてウルの背中を掴む

いくら子供とはいえ、竜の爪というのは鋭いもので、ウルの背中にそれが食い込む


「痛い!痛い!痛い!早く降りろっ!」

ウルが更に背中を揺らすが、それを耐えようと子竜も掴む力を強める

痛みでウルが動けなくなるまでそれが続いた

不毛な争いである



暫くして、場が落ち着いたのを確認してから、私はウルに訊く

「私が寝てた間、何があった?」

ウルは記憶を漁るように視線を上に向けつつ、口を開く

「えーと、それはですね……」



ウルの話によると


私が倒れた後、二人で森の木陰まで運んだ

ウルは私が起きるのを待っていたが、途中で子竜が飽きてしまった

暫く、周りをフラフラと飛んでいたが、疲れてウルの頭に乗って寝だした

寝言を言い出したかと思うと、ウルの頭に噛み付いた

怒って起こすと、今度は腕に噛み付かれた

ということらしい

なんとも微笑ましい


ちなみに私は一時間位倒れていたそうだ

長いのか遅いのか微妙なところだが、気絶していたことに変わりはない


「ほんと、この竜、何様のつもりなんですかね。痛いんですけど」

ウルが珍しく腹を立てた様子で、頭の上に移動した子竜に文句を言う

しかし、子竜は何のことか分かっていない様子で、ウルの頭を頭でつつく

ウルはうっとおしげに頭を振るが、再び爪に力を込められ、痛みに呻く

ウルには悪いが和むからそのままで居てほしい


すると、子竜がウルの頭から離れ、私の前に着地する

またじっと見つめられるので、私は精一杯視線を合わせる

それが陰キャの限界だ


結局耐えられず、何かを考え込む素振りをして子竜から視線を外す

どうせだから子竜の名前を考えておこうと、本気で何かを考え始めた


ドラゴンだからなー

あと、女の子らしいし

ドラ?

流石にひどい

ドラミ?

それは猫型ロボット

ドラエ?

それも半分くらい猫型ロボット


う〜ん

思い付かん

こういうときは適当に思い付いたやつが一番良かったりする

いでよ名案!


……あー

そうだ!

「あなたの名前はドラグラーナよ、よろしくね」

勢いで決めた名前を子竜に告げる

子竜改めドラグラーナはその瞬間目を見開き、空中に飛び上がった



《個体名:ドラグラーナが眷属になりました》


脳内に聞き慣れてきた声が響く

ドラグラーナは長いから普段はラナでいいか

適当に浸けた名前に利便性など無い


「そうだ、スキルもあげなきゃ」

そのことに思い至り、私は元の感覚を取り戻しつつある身体を動かして、スキルを創る

二度目となれば、多少は慣れてくるもので、最初ほどの時間をかけることなく、二つの力が私の手の中に生まれる

お陰で意識も完全に覚醒し、正常に判断を下せるようになった


本当に良いのかと少し考えてから、私はラナに『鑑定偽装』と『人化』をあげた

無くて困ることはあっても、あって困ることは無いだろうという考えと、仮にも他人の一生をかけた誓いなのだから、できる限りのことはやろうという考えからだ

しかし、それによって沢山あったはずの魔力は底を付いていた

残念ではあるが、後悔はしていない

それこそが重要なのだ


すると、ラナから強い光が放たれる

早速人化を使ったらしい


刺々しかった輪郭が変化し、丸みを帯びていき、段々と人形に近付いていく



光が収まったとき、現れたのは、赤みがかった黒色のツインテールの髪と美しい黄金の目を持つ美少女だった

頭からは、まだ小さな竜の角が二本生えている

年齢や身長はウルと同じくらいかな

恐らく、世間では竜人判定される見た目だ

竜人なるものが存在しているかは知らないが


それにしても黒率高くない?

三人黒髪はこの世界だと怪しい集団に他ならない

その上、基本的に皆さん有彩色の髪なので、目立つ

黒は不吉の象徴だと、誰かが呟いていた記憶もある

この世界で見た黒髪の人は、営業スマイルの受付嬢さんくらいだ


「……これが私?」

ラナは大きく変化した自分の体や顔に手を当てる

突然の変化に少々混乱しているようだ

まあ、時期に慣れるでしょ

経験者のウルもいるしね

最初は大変らしいけど、そこはウルに丸投げだ



ここで余裕が出てきた私はある事に気がついた

それは自分の状態である


身体全体にちゃんと力が入らない

しかも、手足があらぬ方向に向いてたりする

更に所々こんがり焼けている

気づいたことで痛みが急にやって来る


つまり

全身複雑骨折

全身大火傷

もしかしたら、打撲と出血も


ちなみにこの世界の医療は、基本的に水洗と包帯と魔法で構成されている

大狂騒のときの冒険者の皆さんは、それはもう痛々しい様子だった

魔法は偉大だが、それに頼り切ると、他が発展しないわけだ



はぁ…

今日は痛みに耐えながらこの森で過ごす事になりそうだなー


私は力無く天を見上げた



テレテレテッテッテー

ラナが仲間になった

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