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転生吸血鬼は自由に生きたい  作者: かきごおり
2章 異世界といえば冒険者だよね
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人の噂というものは本人の知らないところで立つ

門の近くまで戻ってきた私たちが見たのは、大量の虫型の魔物の死骸と勝利を喜び合う冒険者たちの姿だった

全身を緑や黄色に染めた男たちが、虫の死骸の奥で抱き合ったり、肩を組んだりしている

見ているだけで気分が悪くなっていくのを感じながら、私たちはこっそりロンギスの中に戻った


脱走したのがバレていないことを祈りながら、早足で元いた小汚い部屋に向かった

幸い、冒険者たちも疲れていたのか、道中で声をかけられたり、視線を向けられることは無かった


記憶を頼りに元の場所まで戻り、窓から中の様子をこっそり確認する

中は無人で、私たちが出て行ったときの中の様子は変わっていない

誰も出入りしていないと判断した私は、鍵がかかっていない窓を開け、ウルと中に転がり込んだ


戻ってすぐ、姿勢を整える前にいくつもの足音が扉の向こうから聞こえくる

私もウルも慌てて元の場所、体勢に戻ると扉が開かれ、冒険者の皆さんがゾロゾロと部屋の中にや入って来る


「嬢ちゃん、起きたか。調子はどうだい」

強面だけど実は優しいおじさんが聞いてくる

「はい、おかげさまで」

「そうか、それは良かった」

おじさんは嬉しそうに笑顔を浮かべる

普段は酒ばかり飲んでいるが良い人だ

しかし、今は酒の臭いではなく、血の匂いを纏っている


「それにしても何故皆さんお揃いで?」

私は素直な疑問を口に出す

自然に口は動いたが、脱走がバレたのではないかという緊張で、心臓の鼓動はは五月蝿く感じるほど早く、大きくなっていた

「それはこの戦いの功労者に挨拶に来たのさ」

笑顔でおじさんが言うと、周囲の冒険者も同調して頷く

まさか抜け出してムカデ倒したのばれた?

私……終わった?


「そ、それはどういうことですか?」

身体に力を込め、逃走の準備をしつつも、僅かな希望を信じて質問をする

おじさんは不思議そうにしつつも、変わらない様子で答えた

「ん?ああ、嬢ちゃんは覚えて無いかもしれないが、嬢ちゃんが倒した黒い魔物、あれがあの後もう一体やってきて、それはそれは苦戦したんだよ。だから、もう一体がまだ生きていたら不味かったなと言う話になって、その一体を倒してくれた功労者の元に皆で来たのさ」

なんだ

そういうことか…

安堵で漏れそうになる息を堪え、納得したというふうに頷いた


「それにしてもあの時の嬢ちゃんは恐ろしかったなあ〜」

「ああ、魔物を容赦なくボコボコにする姿は酷く恐ろしかった」

「むしろ魔物が可哀想だった」

「そういやあの後、嬢ちゃんは皆に結構怖がられてたな。倒れたのに誰も近寄ろうとしなかった」

「それはお前も同じだろ?」

私の話題で盛り上がる冒険者たち

何やら色々あったらしい

取り敢えず、静かにしてほしい


「火事場の馬鹿力なんじゃないかーとか、あれはもう多重人格だとか色々言われてたな」

「俺は憑依を推すぜ。実は嬢ちゃんの身体には、かの闇の竜王が封印されてるんだよ」

「ふっ、童話の見過ぎだ」


私そっちのけで盛り上がる謎考察会

好き放題言って、しかもどれも間違ってる

せめて私がいない所でやってほしい

周りへの気遣いは社会人には必須だぞ!

こいつら見た目は反社寄りだけど


「まあ、とにかく何事も無いようで良かったよ」

おじさんが場を纒める

それから、思い出したように手を叩く

「ああ、それに嬢ちゃんのランクが上がるらしい。功労者には相応の報酬が無いとな。しかし、あの時とそっくりだな…」

おじさんの言葉に私は驚く

え、マジ?

やったー!

階級が上がれば、色々な待遇が良くなるのが世の常だ

素直に嬉しい


「それにしても嬢ちゃん、そんな面だったんだな〜」

「ああ、俺も驚いたよ」

ん?

何か私の顔が変なのだろうか

ジロジロと強面の男たちが顔を除いてくるものだから、圧が凄い


「これからギルドで祝勝会をするから気が向いたら来てくれよな!」

「待ってるぜ」

冒険者たちの圧を耐え凌ぐと、私の気持ちを察してくれたのか冒険者たちは私から離れていった

そして、そう言い残して冒険者たちは部屋から出ていった

緊張が抜け、溜息共に諸々の疲れがどっと押し寄せてきた


「レナ様、祝勝会って何ですか?」

すると、ウルが横から質問をしてくる

冒険者たちがいたときは隅で静かにしていたウルが少し恨めしい

だが、それとこれは別なので質問には答える

「何かに勝った時にする宴会よ」

「宴会が良く分からないですけど、楽しそうですね!」

「じゃあ、後で行く?」

「はい!ありがとうございます!」


私も未成年だから、宴会何かやった事無いしね

宴会に初参加しに行こう!

楽しげな宴会の様子を想像して、期待に胸を膨らませる

ただ、会社の接待的な宴会は遠慮したい

当たりの宴会であることを祈りながら、部屋を出る準備を二人で進めるのだった

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