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転生吸血鬼は自由に生きたい  作者: かきごおり
1章 転生とは(哲学)
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時には覚悟をきめることも大事

主人公が頭の中でしゃべっているとき本人は百面相しています(身振り手振りをつけて少し大げさに)

想像力を働かせてみてください


ああ

クソがー

負けイベじゃねぇかよー


オオカミの威圧感で身体が上手く動かないのが分かる

トラなどの捕食者は、唸ることで相手の脳だか筋肉だかに影響を及ぼして動きを封じるらしいが、俺の身体は物理的な圧力によって止められているような感覚だ

うろ覚えなので、実際はどうなのか分からないが

分からないなら黙ってろ?

もっともだ


「こんな所に人間が来るとは珍しい」

悪態をついていると、突然渋い男の声が響く

発生源は明らかに目の前のオオカミ


しゃべったー!

狼がしゃべったー!

魔物だから、不思議ではあるが不自然ではない?

異世界という言葉は全てを解決する

というか人間と間違えられてない?


「まあいい、今ここで狩ればすむこと」

オオカミは殺意を剥き出しに低く唸る


何もよかねーよ!

こっちの都合も考えろ!

まあ、勝てる気しないが

それに、お仲間を大量に殺してるんだよなぁ

正当防衛とはいえ、殺してるんだよなぁ

見逃して貰えたりはしないだろうなぁ


俺の心の叫びが聞こえているはずもなく、オオカミは続けて言葉を発する

「それにしても、なぜ厄介事がこう立て続けに起こるだろうか」

俺に向けたものというより独り言じみたそれは、妙に人間臭く、苦労しているのが伺えた


しかし厄介事って?

俺と後何?

いや、俺は厄介事にも入らないか?

気になるけど、考えている場合じゃないのは確かだ


オオカミは緩んだ気を瞬時に引き締めて、再び吠える

「ではいくぞ!ニンゲン!」


オオカミが四本の足で地面を蹴り、土と草が舞う

気付けばオオカミは目の前に迫っていて、今も車のような速さで突っ込んできている

光があまり届かない暗い森の中でも、白磁の輝きを放つ爪が僅かに振り上げられる


俺は反射的に横に跳び、オオカミの進路から抜ける

すれ違い際に振り抜かれた爪は宙を切ったが、その風圧が鎌鼬となって、地面に茂る草の背丈を均一に揃える


うわっ!

あぶね!

いきなり突っ込んでくるとか良くないよ!

開始の合図聞こえた?フェアプレイ精神の欠片もねぇな


息をつく間などなく、オオカミは俺からつかず離れずの距離でUターンし、今度は飛びかかってくる

咄嗟に身体を伏せると、頭上を何かが横切る音が聞こえてくる


さて

どうやったら勝てる?

正面から行っても勝てないぞ

ただ、小細工を用意する時間も余裕も無い

考えろー考えろー


《スキル思考加速を獲得しました》


その時、仕組んだようなタイミングで、新しいスキルの獲得を告げる声が脳内に響く

同時にオオカミの動きが若干遅くなる

実際には遅くなったように感じているのだろう

ナイス!

物凄く有り難い!

ただ気が散る!


理不尽な文句を吐きつつ、オオカミに意識を集中させる

オオカミはまたターンし、私に向かって飛びかかる

どうするこのままではジリ貧だ

だが、策は無い

同じ反応をしていては読まれて殺られる

今を凌がなければ次はない、か…


半分諦めて、オオカミと正面から向き合う

意識を更に集中させ、理想の動きを想像する

そして、オオカミの動きに合わせて、想像をなぞるように身体を動かす

「ふっ」

オオカミの力の流れを手助けするように、半身になりながら手を添え、飛びかかってくるオオカミを受け流す


オオカミに傷は与えられていないだろうが、着地の瞬間にオオカミがよろめく

初めてやったのに成功した!

すげえなスキル!

すげえな吸血鬼!

前世だったら絶対に成功してなかった

今成功したのだって奇跡に近いと思う



「なかなかやるなニンゲン。だがこれはどうだ!」


オオカミが叫ぶと、オオカミの威圧感が増大し、その全身から白銀のオーラが立ち昇る

うおっ

なんか出た

これも魔力なのか?

それとも強化系のスキルかな?

どっちにしろヤバい気配がする

原理とか気にしてる場合じゃない


オオカミは四肢に力を込め、身を縮め、力を溜める

これはまずい

大技が飛んでくる

今向かって行っても間に合わない

恐らく、回避も不可能

こうなったら覚悟をきめて相手のスピードを利用し、正面から殴る!

それしかねぇ

脳筋?

ゴリ押し?

知ったことか!

それが正攻法の悪趣味な仕様なのが現実ってもんだ


オオカミの僅かな動きも見逃すまいと、集中を極限まで高め、拳を構える

息を吸う隙すら無い


長いようで短い時間が過ぎ、オオカミの身体が動く

刹那、瞬間移動したかのように、白銀の残光を引いて眼前にオオカミが現れる

俺は考えることすらせず、反射的に拳を振り抜く


ドガッという音が鳴り、衝撃が腕に伝わる

「がっ…」

遅れて激しい痛みが走り、うめき声が漏れる


ああー!

クソ痛てー!

これは折れたのでは?

折れたことないので分からんが



結論から言うとギリ折れてなかった

そして勝った



《スキル格闘のレベルが上がりました》

《スキル物理耐性を獲得しました》

《スキル自己回復を獲得しました》

《レベルが上がりました》


興奮から思わず、痛みを感じる右腕を突き上げる

その痛みもさほど気にならない

堪えきれない衝動のまま、それを吐き出すように叫ぶ


「しゃぁあ!」

勝ったぜ!

……ああ疲れた



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