プロローグ
王国グランディーテ、冒険者たちが多く熱気が溢れる国だった。今から15年前歴代最強とされるパーティーがあった。そのパーティーは魔王討伐に乗り出し、向かって行った。誰もが倒せると思っていた。そのパーティーは戻ってきた時には半分になっていた。全員が暗い顔をして帰ってきた。様々な人に何があったのかと、聞かれた。生き残ったもの達は一言告げた。
「勝てなかった」
魔王の力は圧倒的だった。そのため半数がやられた。最強とされるパーティーが負けたと聞き、みな魔王を恐れた。挑むものもいなかった。
その五年後、青い髪の少年が産まれた。名前はユウ。天職は「薬学士」戦闘にはめっきり向いていない職業だった。父と母は冒険者だった。戦闘職ではないことに悲しんだが、良かったとも思った。冒険者は危ない仕事だ。いつ死ぬかも分からない。そんな危険に息子を行かせてはならない。そう思っていた。少年が五歳の時、両親は亡くなった。モンスターにやられたそうだ。少年は悲しんだ。辛かった。両親の親も兄弟も冒険者で、亡くなっていたため、引き取り手はいなかった。そのため、孤児院に預けられた。孤児院に入ったばかりの頃、お話を聞かされた。5年前に魔王と戦った冒険者たちの話だった。その話を聞き感動した。親は冒険者として死んでしまった。だが、かっこよかった。憧れた。だから…自分もなりたい、そう思った。
魔王に敗れたパーティーの副リーダーをしていた魔剣士は亡くなった。だが、その五年後また意識が戻った。だが、それは人間としてでは無い。「魔王の息子」としてだった。名前はクロード。魔王の子の三男である。自分のことを知った時、その男は悲しんだ。なぜ自分たちを倒した相手の息子にならなくてはいけないのかと。だが、喜んだ。チャンスでもあった。この体を使えば倒せるかもしれない、そう思った。
5年後、男は魔王城にある書庫で魔導書を漁っていた。そこで大量の魔法を覚えた。霧魔法や植物魔法、転移魔法、変身魔法。今まで覚えなかった魔法を沢山覚えた。変身魔法でこっそり魔王城を出て、グランディーテに戻ってみる事にした。今の状況を知るためだった。城下町は未だに冒険者たちの熱気で溢れかえっていた。久しぶりの城下町を歩いていると人だかりが目に付いた。行っていみると少し老いた男が子供たちに話を聞かせていた。それは紛れもなく昔の自分がいたパーティーの話だった。その話を聞いて、思った。また冒険者になりたいと。
2人は同じ時、冒険者になりたいと強く願った。1人は冒険者に不向きな薬学士。もう1人は魔王の息子になった元冒険者。
2人は冒険者にはなれないような状況だった。だが、諦めなかった。自らの夢を掴むために…。
5年後の10歳の時、ユウは冒険者を志望するもの達が通う学校に入る事にした。孤児院の人に話したがそっけのない返事で
「いいんじゃない?」
と言われた。とにかく入る事にした。
学校の先生に忠告された。
「あなたは非戦闘職ですが、本当に入るのですか?あなたをいじめる人は必ずいるはずです。それでも、入りますか?」
非戦闘職が冒険者学校に通うのだ、いじめられる可能性もあるだろう。それでも入る事を決意した。しかし、待っていたのは辛い日々だった。
「ユウく〜ん、戦闘職でもないお前がなんでこんな所にきてるのかな〜?」
「ふふふ…。やめなよ可哀想でしょ…。ワハハハハハハハハハハ」
「こんな所にいないで早く親のところに帰りなよー。あ、親なんていないんだっけ?」
「かわいそー。親もいないし、職にも恵まれないし、学校にも居場所がないなんてね〜」
こんな事を言われ続ける日々だった。それでも我慢する事は出来た。だが、12になる頃、暴力を振るうようになってきた。
「オラッオラッ、痛いか〜?」
「抵抗してみろよ陰キャ薬学士さ〜ん」
非戦闘職、それだけでいじめられ、殴られ、先生にも無視された。助けてくれなかった。
孤児院でも嫌われていた。毎日のように、酷い目にあっていた。
「チッ…なんでそんなに汚れてくんだよ毎回毎回よ~仕事が増えんだろーが」
と言われ、殴られた。毎日増えていくのは楽しい思い出でもなく、青黒いアザだった。
もう、耐えきれなかった。学校を辞めて、孤児院からも離れ、山に篭もる事にした。その山はポーションなどの材料になる物が沢山あるとして、薬学士たちの間では『神山』と呼ばれるほどだった。まともに生きられるかなんて分からない。モンスターだっているに決まっている。それでも俺は行きたかった。薬学士としての逆転を、新しい人生を歩むために…