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そして俺も田野もイマイチ若者のハロウィンに馴染めず、ウロウロ中世の剣士の格好したおっさんが2人散歩しているだけになっていた。
「若いなー、来るんじゃあなかったのかもな...」
田野がそう言うと、俺も
「こうなると痛いおっさんだな」
と苦笑いした。
そうして行き場なくウロウロと渋谷の隅を歩いていると、魔女のコスプレをしたオババに声をかけられた。
「あんた達、せっかくハロウィンに来たのに全然楽しめてないでしょ! 大体見た目が変な格好して剣を持った不審者なんだよね〜、いっちょ魔法のドリンクの力を借りてみないかい?」
魔女のコスプレオババはそう言った。 俺も田野も確かに現状楽しめておらず、酒の力でも借りようかというところではあった。
俺は
「お魔女さん、そのドリンクは一杯いくらだ?」
と尋ねた。
するとお魔女さんは
「これはねー、今回はタダ! その代わりに世界を救ったら、そのときの分け前をあたしに頂戴」
と言った。
ずいぶん魔女になり切ってるなぁと思いながら
「では飲んで世界を救ってきまーす」
と言い田野はそのドリンクを飲んだ。 そして俺もそれを飲んだ。 渋くなったワインの様な味がして、飲み終わると少しずつ意識が遠のいていくのが何となく分かった。
そんな俺たちの表情を確認すると、魔女のオババは
「それでは良い旅を、分け前待ってるわよ」
と言い残してハロウィンの人混みの中に消えて行った。
俺の気はとにかく遠くなるばかりだった。