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火事
鈴音視点です
「…けほっ」
煙が辺りを包み込み、息がしづらくなる。
消しても消しても火は容赦無く家を燃やす。
私一人じゃ消化出来なくて…
ススだらけの手を見つめる。役立たずの腕を握りしめる。
こんな事しても無駄なのはわかっている。でも…自分の無力さに嘆きたくなったのだ。
もう一回死ぬのかな…もう逃げ場はない。
赤が辺りを包み込み、逃すまいとゴウゴウ燃える。
勢いは増し、水を掛けようが砂を掛けようが消える気配はない。
「…ははっ。」
結局自分は《出来損ない》だったな…死ぬ前に人の役に立ちたかったのに…立てなかった。
救いたかったのに救えなかった。
やっぱり自分は無力だ。何も出来ないいらない子…
最後にこの村…助けたかったな…
火、消えてくれないかなぁ…私の命を代償に鎮火してくれないかな…
そんないい話あったら良かったのに。
人生、そう甘くない。
…最後に見えたのは光る自分の両手だった。
遅くなりましたぁ!!!
すいません!(スライディング土下座)