分かり合おう
思い出したくなかった。
あの夜の事は…………決して思い出してはいけなかった。
聡が帰って、しばらく部屋に籠っていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「ミア…………聡が、鞄忘れて行ったぞ?届けてやれ。」
隆兄…………。
「勘違いするな。俺は最初から反対だ。ミアの相手が誰だろうと反対だ。タルト……うまかった。俺はこれで帰る。」
「隆兄!!」
私はドアを開けて、隆兄の後ろ姿に向かって言った。
「心配かけてごめんなさい……。あの…………あのね、あ、アケミさんの分もあるの!持って帰ってあげて!」
その後、隆兄にタルトの箱を渡して、聡の鞄を届けに、久しぶりに木本家に向かった。
すると…………家の前には、聡と…………あの人がいた。
「こんにちは。元カノさん。」
元カノ?こんの……メンヘラ女!
「あの、聡、これ。」
私は聡に鞄を渡そうとした。その瞬間…………思い出した。
あの夜、あの橋で…………こんな風に三人になった。
あの日、ゆたか君の家を出て、しばらく歩いたけど、タクシーは捕まらなかった。一旦駅に向かおうと、あの橋の上を通りかかったら、この二人にバッタリ会った。
「ミア!いた!良かった!」
私と聡が話をする前に、メンヘラさんは聡に言った。
「聡。彼女、借りるね」
「待っ……」
「一時間後に私の部屋に来て。」
その、聡の心配そうな顔を見て、私も少し不安になった。
でも、いい機会だからちゃんとして話をして、メンヘラさんともわかり合おう。そう思って、私はメンヘラさんについて行った。
そのマンションは古いマンションで、入り口に鍵もなく、ドアの前も屋外だった。
「あの、この前はごめんなさい。あんな失礼な事……。」
「もういいの。」
部屋のドアが開いて、中に入ると、突然蹴り飛ばされた。ヤバイ…………油断してた!
「痛っ……。」
「これでおあいこね。これでこの前の事は許してあげる。」
そう言ってメンヘラさんは、倒れている私の隣を通ってキッチンへ行くと、2つのコップにお酒を注いでテーブルに置いた。
「あの、私、未成年でお酒とかは……」
「少し付き合ってよ。お酒じゃなくていいから。」
メンヘラさんは、私とお酒を飲んでわかり合おうという話をした。
「ちゃんと話し合おう。そうすれば、聡につきまとうのもやめられるかも……。」
それで本当に止めてくれる?絶対に嘘だよね?
「いいじゃない。少しくらい。飲んだら死ぬ訳じゃないんだし。」
私にグラスを渡すと、メンヘラさんは私に持たせたコップに乾杯をして、自分だけ先に飲んだ。
「ほらね?別に毒なんか入ってないでしょ?」
そりゃ確かに。でも、酔ったら技かけられるかどうか…………技の精度が鈍ったら逃げられないよ。
「飲まない?じゃあ、交渉決裂ということで。」
待って!
「飲みます!」
飲んで死ぬ訳じゃない。少しだけ。御神酒みたいに少しだけのんで…………そう思って少しだけ飲んでみた。…………全然平気。ただのジュース?
なんだ……。からかわれたんだ!
「驚いた?本当にお酒かと思った?」
「なんだ~!」
「これで十分わかった。あなたが聡の事、本気だって事。」
なんだ…………私が本気かどうか試したんだ。メンヘラさんも人が悪い。意外とそうゆうお茶目な人なのかな?そうして、勧められるままに飲んでしまった。




