聡のマフラー
席を…………代わった。
隣の吉岡さんと仲良くなって、交代して欲しいと言われ、断りきれず交代してしまった。その事に聡は不機嫌だった。
休み時間に目の前にやって来て、ノートに一言書いて行った。
『筆談でもいいから話したかったのに』
それは…………ごめん。
ここ最近、薄々思っていたけど…………吉岡さん…………聡の事が好き?それは……聡の方をあまり見ないようにしてるから。それはきっと……聡を見てドキドキしちゃうからだよね?その気持ちわかるよ……。わかるけど…………
昨日のあれは決定的過ぎて少しショックだった。
昨日、帰りにマフラーを教室に忘れて、取りに戻った。
そのマフラー…………と、声をかけようとした。でも、その言葉を飲み込んだ。吉岡さんが…………聡のマフラーを抱き締めて、匂いをかいでいたから……。
愛理にその事を話した。
「それは、友達ポジションから獲物を横取りするハイエナタイプね~!」
ハイエナて……。
「ミア、あんた何席代わってんの?それ相手の思うツボ!!」
「それは…………そうなんだけど…………」
「ああもう、ミアの悪いクセだよ?そうやって八方美人になろうとする所!」
うう…………わかってるよ!でも、せっかく吉岡さんと仲良くなったし……。聡も普通に話してるし……。
「もうすぐバレンタインだから、吉岡に持っていかれないように、必死でチョコ作りなよ~?」
バレンタイン?正直…………バレンタインは好きじゃない。それは……毎年、お兄ちゃん達にチョコのタルトを作るというお勤めがある。兄妹で女1人のもはや義務だ。この日だけは、タルトがあれば兄達は上機嫌だった。
でも一般的には……
「バレンタインって、お菓子会社の販促活動に基づいて、女子が女子とお菓子作るイベントだよね?」
「いや、それが、カップルにはまだ有効なイベントなのだよ。」
「そうなの!?」
でも…………私達カップルじゃないし……。
「どうせ毎年兄貴達に作るんでしょ?だったら聡の分なんて、どうって事ないでしょ?」
「それはそうだけど…………」
料理は嫌いじゃないけど、お菓子作りは苦手なんだよね……。ゆたか君のお弁当の事があって……何だか嫌だなぁ……。
「あ、もしかして、ゆるたかのお弁当の事思い出してる?」
さすが愛理。何でもお見通し。
「だったら、一緒に食べればいいじゃん。」
…………そっか!一緒に食べれる物?ケーキ?聡は甘党で何でも食べるからなぁ……。何作ろう。
一緒にケーキを食べて、色々話ができるといいな……。




