訊けない
帰りは、聡と帰った。ちゃんと謝って、あの日の事を聞いてみようと思った。
でも…………聡は少し怒っていた。
「今朝はどうして先に登校したの?ちゃんと待っててよ。」
「だって…………ごめん。」
私は少し気まずくて下を向いた。
「ハ……ハックショイ!」
「あははははは!え…………今のくしゃみ?ワッショイって言ったよね?」
聡、そこ爆笑?
「悪かったね……。女子らしく、クシュン……。なんて、くしゃみじゃなくて。」
髪を切ったら、首もとが寒い……。この寒さじゃ、オッサンくしゃみも出るよ。
すると、聡がマフラーを貸してくれた。
「わぁ!暖かい!聡、ありがとう!」
聡の匂いがする。うわぁ~これ、ドキドキする。
「でも、これ…………使えない。」
「え……?どうして?どこかチクチクする?」
「このマフラー、ドキドキする。使えない。」
聡は嬉しそうな顔していた。
「止めて、こっち見ないで。」
「いいじゃん。見せてよ。」
今度は小悪魔な顔して、マフラーで隠した顔を見ようとしてくる。
「マフラーでドキドキしてたら変態だよ。」
「あははははは!それじゃ、ミアの髪型変わってドキドキしてる僕も変態だね。」
「何それ?」
聡は両手で私の頭を優しく包んで言った。
「ちゃんと顔を見せてよ。…………髪、可愛いね。」
うおっ!王子スマイルっ!完全ノックアウト~!!ヤバいよ…………その笑顔はヤバいよ!心臓が破裂しっちゃうよ!
違う。本当は…………聡にそう言って欲しかった。可愛いね。って言ってもらいたかった。お姫様ではないし、好きだと言われてないけど…………私の事を見て欲しかった。
そこは私も女なんだな……。今まで、こんな自分に全然気がつかなかった。
その事に精一杯で…………何も訊けなかった。
あの日私に何が起こったのか、今どうゆう状況なのか……。ちゃんと…………訊けなかった。




