ダイヤモンド
「お前誰?」
「田中…………髪型変わっただけだぞ?認識できないか?」
「あ、山下か!あんまりちゃんと顔見たこと無かったわ。」
おい田中!お前本当に私に興味ねーな!
そこへ、吉岡さんが登校してきた。よし、来た!
「吉岡さんおはよ~!」
私の全力の笑顔に、吉岡さんは引き気味で挨拶した。
「お、おはようございます…………。」
よし、来い!!『髪切った?』来い!!ざわ……ざわ……
「…………。」
…………!!ない!?ないの!?『髪切った?』ないの?本当に!?嘘でしょ?
ま、まぁ、落ち着こう。これも想定内。まだ、手札はある!!
「吉岡さん、アレンジ上手だよね。私、髪切りすぎちゃって……簡単なヘアアレンジとかって知ってる?」
どうだ!?質問で投げれば必ず返ってくるはず!!
「ちょ、ちょっと…………」
?ちょっとって何?ちょっとってどうゆう意味…………!?まだだ…………まだ食らいつく!!
「吉岡さん、綺麗な髪だね。美容院どこ行ってるの?」
「綺麗じゃないよ。家の近所で切ってるだけ…………」
か、完敗だ……。
ここで『近所ってどこ?』と訊く鉄のハートは無かった。近所ってどこって訊いたら、家どこ?って訊いてるみたいじゃん!突然家の場所なんか訊いたら、ストーカー?もしくは、押し入るぞコラァ!って思われるじゃん!
「学校からも近い所だから、わかりやすい所だと……思う。」
え…………?
「それ、学校の北側?」
「そう……ナチュラルな雰囲気のお店。名前、soraだったと思う。」
嘘…………
「そこ知ってる~!前から気になってたんだ~!家その辺?」
「うん。北側。」
「そうなんだ~!うち南側~」
正解はこっちか~!!シンプルにどこ住んでるの?で、良かったのか…………髪、切ったのに……。
「あの、髪…………悪くないと思うよ。」
はぁあああ~!!吉岡さんの一言が甘く感じる!!マジ神!!救われた!!
「おはよ~!」
そこへ愛理が登校してきた。
「ミア!その髪どうしたの!?」
そ、そんなに驚く!?
「ちょっと来て!」
愛理に廊下に連れて行かれた。
「その髪何!?失恋して木本の事ふっきれたみたいに見られるよ?」
そ、そっちか~!!そうだった…………私、自殺未遂メンヘラ女だった…………!忘れてた!『髪切った~?』とか軽く訊ける感じじゃなかった!!
「まぁ、ショート悪くないよ?むしろ、ミアは顔出してた方がいいよ。パーマとかかけてみたら?」
「ありがと!学校の近くの美容院行ってみる!」
やっぱり愛理は変わらない。変わらず、私のダイヤモンドだ。




