遠足
遠足当日。案の定…………
「あれ?ミア!偶然だね~!」
ひぃいいいい!ですよね~!ですよね~!じゃないよ!
案の定、遠足の山には二人の兄がいた。
「だ~か~ら~!ついて来るなって言ったよね?ねぇ?私、高校生なんだ?わかる?」
兄だけじゃなく、たっちゃんまで……彼女がいるからって丸め込まれやがって!予想はしてたけど、こいつらマジでありえない……!!
「先生~!山下さん、お兄さんが来てます。」
自分で先生に報告すんな!!
「お~!先生~!久しぶり~!」
担任の先生は祐兄の担任だった先生。だから私より祐兄の事をよく知ってる。
「お~!祐也~!働いてるか~?」
「ぐはぁっ!先生それ禁句!」
祐兄、何先生と和んでんの!?
あ、ヤバイ!気づけば、雅兄がいない!私が見つけた時にはもう、雅兄は女子の輪に入っていた。
「俺、ミアの兄、連絡先教えてよ~!」
「クラスメイトをナンパすんな!!」
もう、もう!帰れーーー!!とはこんな所で大声は出せず……。
「帰ってもらえませんかね?」
そう言って二人から離れて他人のふりをした。お兄ちゃんは好きだけど、これはやり過ぎだ。これはダメだ。どうする?どうしたらいい?
「山下さん、先生が四人揃ったら登るようにって。」
「師匠~!忍法を!忍法を教えてください!」
「いや、だから忍法って何?」
兄が今すぐここからいなくなる呪文を……ルーラを……あ、それ私がいなくなっちゃう!
「山下さん落ち着いてよ。行きはとりあえず四人で登って、帰りは毎年バラバラでもいいみたいだから、お兄さんと帰りなよ。」
「いや、兄といたい訳じゃないから。」
「え?そうなの?」
あれ?もしかして、シスコンって話聞いてた?
「帰りはバラバラでって……どうしてそんな事知ってるの?」
「姉が……ここの卒業生だから。」
「木本君お姉さんいるんだ……。」
知らなかった。確か妹はいるとは聞いた事があるけど……。
私達がスタートする頃には、ほとんどの人達が登り初めていた。
「みんな、待たせてごめ~ん!」
「どうした?ミア?ああ、あれね。じゃあ、私も。」
「僕達もやろうか?」
みんなは1列に並んだ。
「何するの?」
木本君が不思議そうに聞いた。
「スタートは姿勢を正して、両足揃えて。よし、スタート。」
「ミアの魔法なんだよな?」
「それを言うなら、おまじないだろ?」
「これはね、自分のジンクスみたいなもので、何かを始める時は姿勢を正して両足揃えて、スタートする。そうすれば、上手く行くってやつなの。」
「じゃあ、俺もやるよ。」
田中君がそう言って一緒に並んだ。
みんなは1人列から外れた木本君を見た。それに気づいた木本君は列に加わった。
「姿勢を正して、両足揃えて」
「遠足が上手く行きますように。」
「よし、スタート!」
そう言って、みんなでスタートした。