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3人の兄

配られたプリントには、新入生歓迎遠足と書いてあった。先生はもう1枚のプリントを配りながら言った。

「男女四人で班を作るように~」


自然な流れ……?で、私達は愛理と田中君と木本君で四人組になった。先生の説明を聞いていると、愛理が話しかけて来た。

「ここは、ゆるたかに手作り弁当でしょ?」

「やだよ!何人分作んなきゃいけないと思ってんの?」

「は……?ゆるたかに何人分食わす気なの?」


私は回って来た遠足のしおりを後ろに渡しながら言った。

「違うよ!遠足でお弁当作るってって言ったら、お兄ちゃん達が欲しがるから!」

「あー相変わらずシスコンだな山下兄弟……」

上から隆也、祐也、雅也の3人の兄は、自他共に認めるシスコンだった。

「お母さんと、隆兄はお仕事だし、いつも作ってるからいいんだけど、雅兄は大学の学食で食べればいいでしょ?」


うちは去年やっと離婚が成立して、母一人子四人で暮らしている。離婚と言っても、物心着いた時にはもう、ほとんど父は家にいなかったし、父親代わりは3人の兄がいたから、割りと何不自由なく育った。

「え?弁当いつも3人分作ってんの?」

愛理は驚いてたけど……うちはお母さんが働いてる分、家事を分担しないといけない。


「祐兄に至っては、家にいるからお弁当いらないと思うの。」

「真ん中の兄ちゃん何やってるんだっけ?」

「え?あれだよ!ほら、今流行りのニートだよ!」

真ん中の兄は大学卒業した後、働いてない。バイトもしてるように思えないし…………

「流行ってないから。そんなに笑顔で言う事じゃないからね?」

「それ、お母さんにも言われた~!笑顔でニートって言いふらさないで~って。ダメなの?」

「ダメだから。」

私は自由でいいと思ってたけど、世間的にはダメらしい……。


「なんか、ニートだからみんなに責められて可哀想でついつい甘やかしちゃうんだよね。」

「あんたもなかなかブラコンだな……ミアはダメ男と結婚するタイプだね。」

「大丈夫大丈夫!簡単だよ!お兄ちゃん達とは違うタイプの人と結婚すればいいんだし!」

「それ、愛情の中に憎しみが垣間見えるな。」


先生は当日遅刻しないように言った。特に、いつも遅刻の二人。それ、私と木本君だよね?

「えーと、集合は8時だから……遠足の日は5時半起きして……」

「5時ぃ?」

「だって、朝苦手だし、遅刻できないし、5人分のお弁当作るし……あ、前日に仕込んでもうちょい寝れるかな?」

手際が良くないから、お弁当作りには時間がかかる。朝起きるのは苦手だけど、早めに起きて遠足は遅刻は免れないと……。


「弁当屋か!」

「弁当屋?あれ?山下ん家弁当屋だっけ?じゃあ俺の弁当も……」

愛理は田中君に念押ししていた。

「違うし!田中、あんたは絶対自分で弁当持って来なよ?」

いや、普通持って来るでしょ。

「たっちゃんに雅也を学食に誘えって言っとこうか?」


愛理が付き合ってる年上の彼は、一番下の雅兄の友達で、雅兄と同じ大学に通っている。

「ありがと~!でも、自分だけないのは雅兄いじけるから」

「兄を甘やかすな!」

そうゆう訳で、遠足は忙しくなりそうな予感……。


「あ、愛理、1つたっちゃんにお願いしていい?」

「何?」

「遠足当日は絶対!絶対に雅也を捕まえておいて!あと、祐也に誘われても絶対来るな!って言って。」

遅刻より何より……それだけが心配。


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