見える範囲
暖かい……。あれ?寝てた?まだ辺りは暗かった。今何時?
…………?ん?なんか……いつもと違うような……?あれ?ここ…………聡の部屋…………聡の部屋!?隣には、聡が寝ていた。え…………?えぇええええ!?
二人とも普通に服を着ていた。
その事がわかってひとまず落ち着いた。時間は12時をまわっていた。とりあえず、ママに連絡して、このままここに寝かせてもらおう。あ、でも制服のまま寝たらシワになるなぁ…………あ!
私は、聡が洗濯に出すつもりで置いてあったジャージを見つけた。これを借りよう。うわぁ~!聡の匂いだぁ~!何だか…………聡に抱き締められてるみたいで…………ドキドキする。
着替えてベッドに戻ると、隣に寝ている聡を見ると…………綺麗な寝顔だった。キス…………してもいいかな?おとぎ話で王子がキスしたくなる気持ちがわかる。それな。マジそれな。
すると、聡の目が開いて、目が合った。
「え?あ……。え?えぇええええ!?」
「聡、声大きい。もう12時だから。」
「あ、そっか。ってそっかじゃない!!何でミアジャージ?え?嘘、まさか…………初めてが記憶ないパターンあるの?ねえ?あるの?」
聡はパニくっていた。
「聡、落ち着こう。一緒に寝たぐらいじゃ、子供は産まれない。」
「この状況で、よく平然とそうゆう事が言えるね?その神経が羨ましいよ……。」
失礼な!落ち着かせようとして、本当の事言ったまでなのに……。
「え~!一緒に寝ちゃダメ~?今から帰るのダルいし。」
「ダメだよ!ミアがそんな女の子だとは思わなかったよ!」
「最初からこんな女だよ?聡、私のどこを見てたの?」
お互い…………どこを見てたんだろうね。
「どこをって…………僕が見える範囲まで……。」
見える範囲まで……。その答えは、妙に府に落ちた。
「私も。私も聡の狭ーい所しか見て無かった。ごめんね。」
「ねぇ、ミア、ミアは……僕にもっとミアの、見えない所まで見せてくれるつもりある?」
それ…………どうゆう意味?
「愛理ちゃんから聞いちゃったんだけど…………産みのお母さんがいるって話。」
「そう……。」
「祐也さんや雅也さんがお兄さんじゃないなら、ミアに価値がないなんて事ないから。そんな事で、嫌いになったりしないから。」
…………わかってるよ。そんな事……。わかってる。それでも、一度飲み込んだ言葉は…………なかなか言い出せない。
涙が…………出た。
私を見た聡は、優しく優しく…………まるで大事な壊れ物を扱うみたいに、優しく抱き締めてくれた。
「キス…………してもいい?」
「それ、今僕が言おうとしてた。エスパー?」
そう言って笑って、優しいキスをした。
「ちょっと…………ちょっとここでインターバル置こう。ミア、今すぐにベッドから降りないと取り返しがつかないよ!?」
聡はテンパっていた。でも、私は…………なんだか安心したら眠くなってきた。テンパった聡を置いて、そのまま寝た。
朝起きたら、聡がスラダンを全巻読破していた。
漫画、私より好きだね。




