別れた後
何だか…………信じられなかった。今でも、信じられない。
『ミアの望みが叶ったね。ナミちゃんがお姉さんになった。』
『聡こそ。祐兄がお兄ちゃんになったね。』
そう……。だから…………私達が結婚する必要はなくなった。
聡と別れたなんて…………まだ、信じられない。
でも、意外と別れた後の方が、私達の関係は良好だった。
私達は友達として、毎日のように一緒にテスト勉強をしていた。
「ダメだ~!絶対に無理!これ、赤点免れる気がしない。答え全然合わない。」
「どれ?」
一緒にテスト勉強と言っても、私が一方的に教えてもらっていた。聡は運動も勉強もできる。腐っても王子だ。あ、別に腐ってもないか。
「うわ……聡の説明、めっちゃ眠くなる。しばらくしたら起こして。じゃ。」
そう言ってテーブルの上に伏せて寝た。
「ミア~!起きろ~!こら!男と二人きりで寝たりするな!!」
え…………でも聡だし。
「今、聡だしって思ったでしょ?」
何でバレてんの?エスパー?
「バレるよ!エスパーじゃなくてもわかるよ!」
聡は少し黙って、小さな声で言った。
「起きないと…………キス…………するよ?」
はぁ?…………すれば?
「すれば?とか思ってる?そこはさ、私達、そんな関係じゃないでしょ?キスは好きな相手とじゃなきゃ!とか…………」
いや、別に嫌いで別れた訳じゃないし。
「そんな幻想抱いてんじゃねーよ!とか思ってる?」
そこは読めないんだ……。
「それとも、される前に技かけようと思ってる…………?」
思ってないし。聡、少し喜んでんじゃん。
「喜んでないよ!全然……全然……ただ、ミアがこっちを向いてくれるようになったのが…………嬉しいんだ。」
聡は甘い笑顔でそう言った。
そういえば…………聡は前に言っていた。
『ミア、こっちを向いて!僕はこっちだよ!』
今思えば…………確かに、聡の何を見てたんだろう……。こんなに素敵な王子様が近くにいたのに…………まるで、そこにあるのにみつからない、四つ葉のクローバーみたいだ。特別なはずの4枚目の葉を…………見逃していた。こうやって、私は幸せを逃していくんだろうか……。
そう思って、私は眠りについた。聡が何だかわーわー言ってたけど、めんどくさい。眠い。寝よ。




