朝ご飯
今朝の朝ご飯は、ママと二人きりだった。
私を産んだ人って…………どんな人だろう……。パパの不倫相手……。ママを見て、ふと思う。ママはどうして……隆兄の拾って来た私を、育てようと思ったんだろう……。今思えば、ママの両親、つまりはお祖父ちゃんとお祖母ちゃんには、昔から会う機会があまりなかった。
「ねぇ、ママはブルゾン真咲子とか言われて嫌じゃない?」
「あはははは!祐也ね?言いたい奴には言わせとけばいいんだよ!」
自分はママゆずりの性格だと思ってた。ママの、サバサバした性格が好きだ。びしっとスーツを着こなして、キリッとしたメイク、みぞおちに刺さりそうな、尖ったハイヒールがカッコいい!そう思っていた。
お兄ちゃん達は、ブルゾン真咲子じゃん!あ、ママの名前は真咲子。そう言っていたけど…………私はブルゾン真咲子が理想。
「それに、言われてるうちが華だしね~!」
「華?」
「悪口って興味があるって事でしょ?興味持たれない方が悲しいね。」
そう言えば…………ゆたか君もそんなような事を言っていた。
「あたしは、周りがそう望むなら、精一杯答えたいって思うよ?応援されて元気をもらって、そうやって、なりたい自分になれる。ずっとそのままでいいって言われたら……もしかしたら今頃…………あんた達とは一緒に暮らせなかったかもしれない。」
「ママ……。」
そっか…………多少のプレッシャーも必要なんだ。必要とされてるとか、期待されてるって、確かに時には元気づけられるかも。
「ママはあんた達にケツを叩かれて、勇気づけられて、たまに癒されて、ここまでなんとかやって来れたんだよ。」
そう言ってママはとっても幸せそうな顔をして笑っていた。
「ミアは彼氏ができたらママそっちのけだもんね~!」
「そんな事ないもん!私、結婚しないもん!」
「えー!行き遅れは困るよ~!まぁ、もう家に隆はいないけど、ママはずっといるから。あんまり寂しがらないんだよ?」
私は…………思わず涙が出た。
「やだ、言ってるそばから泣くの~?」
「泣いてないもん。これ鼻水だもん。映像ではキラキラに映るんだもん。」
「あははは!それ牛乳~?」
いつもと変わらないようで、変わってた。そう……この家にはもう、隆兄はいない。
「知ってる?一年間に消費される牛乳の量」
「来るぞ来るぞ~!?」
「35億!!」
それでもママは明るかった。今思えば、ママは…………いつも明るかった。
ママは…………どんな私でいて欲しいのかな?
聡は…………どんな私が好きなんだろう?
どんな私でいれば、みんな幸せなんだろう。




