何も変わらない
私は帰るなり、自分のベッドに倒れ込んで泣いてた。
「お帰り~!ミア~?」
雅兄と遊ぶ元気ない……。
「おーい!祐兄!やっぱりミアが撃沈した~!」
「やっぱりな~!ミア、お前が結婚しろって言ったんだろ~?何アケミ見てショック受けてんだ~?」
ちっげーーーーし!!
「まあ、ミアはどう頑張ってもアケミには勝てないもんな~!」
「ちょっと祐兄!!」
「お前には聡がいるだろ?隆はアケミにくれてやれよ~!」
アケミさんを呼び捨てすんな!!腹立つ~!人が落ち込んでる時に!
私はムカついて、リビングにやって来ると、たまたま寝ていた雅兄にサソリ固めをかけた。
「は?何で俺?痛い!痛い!痛い!」
「そこに寝てたから!」
「雅、ミアはギブって言うまでやめないぞ~?」
そこへ着替え終わったママが来た。ママ…………
「ミアと雅也、何やってるの?」
「ミアが雅に八つ当たり。」
「あぁ、そう。」
そう言ってママはソファーに座ってテレビを見始めた。
「いや、誰かこれ止めろよ!」
「雅、見事なサソリ固めだからもう少しかけられてろよ。」
「へ~!これ、サソリ固めって名前なんだ~!」
「何感心してんの母さん!」
いつもと変わらない…………。これは、隆兄が店長に嘘をつかせてまで守りたかった家族の日常。私が黙っていれば…………知らないふりをしていれば…………これが壊れる事はない。何も変わらない。
「ミア!ギブ!ギブ!あ、そうだ!婚約祝い!どうだった?」
「あ…………!忘れて来ちゃった!」
そこへ、隆兄が血相を変えて帰って来た。
「ミア!ミアは帰ってるか?!」
私はちょうど、雅兄のサソリ固めを解いている所だった。
「このまま、テキサスクローバーホールドやってもいい?」
「何で許可取るんだよ?絶対ヤダよ。」
「隆兄お帰り~!もう帰って来たの?アケミさんは?」
隆兄は私が忘れた結婚祝いを持っていた。
「これ……店の人が忘れ物だって……。」
「あ、渡すの忘れて帰っちゃった!それ、私からの結婚祝い!」
「いや、まだ婚約祝いだろ?」
隆兄はプレゼントの箱をしばらく見つめて一言だけ言った。
「…………ありがとう。」
「こちらこそだよ!隆兄、ありがとう。」
何も…………変わらない。




