ピンチ
えーと…………どうしよう……。
「とりあえず、カラスが鳴いたから帰りましょうか?」
「カラスなんてどこにもいないけど……?」
ですよね~!…………まずい。そう易々とは返してもらえなさそうだ……!
「私には……聡君しかいないの……。だからお願い。聡君から離れて……。」
「いや……あの……聡は何て言ってるんですか?」
「聡君は……私の事愛してくれてる。」
やべぇ…………話通じないかも。
「それ、聡の意見は無視って事ですよね?あなたが良ければそれでいいって事ですよね?」
「その方が聡君のためだもの。私には聡君が必要なの。聡君にも私が必要なの。」
それって……依存する対象が必要なんじゃない?
きっと、この人は弱い人なんだ。自分が与える事を知らない、愛に飢えた人……。可哀想……。
そんな事を思っていたら、白い腕が目の前にすっと伸びて来た。
首…………苦しい!
パニクった!まさか、首を絞めて来るとは思わなかった!私は力一杯その白い腕を掴んだ。
「痛いっ!」
「げほっ……ごほっ……ごほっ……」
あー苦しかった。握力だけは強くて良かった。私は近くのジャングルジムに登って逃げた。そのパニエが入ったスカートじゃ登って来れないだろうから。
さて…………どうしたものか……。今までピンチの時ってどうしてたっけ?隆兄に連絡……ダメだ。聡が殺される。聡には…………来て欲しくないし……。祐兄と雅兄はモラルないから平気で女の子殴りそうだしなぁ……。愛理は戦力外だし……。警察は大袈裟だし……。
あ、そうか!そうするしかないか。こんなに早く封印を解くことになるなんて…………ごめんなさい隆兄。大切に育ててもらったのに、こんなアバズレで…………お嫁に行けない覚悟で、今ここから飛び降ります。
警察沙汰を覚悟して、私はジャングルジムから女の子に飛んだ。運悪く、私の膝が女の子の顔面を殴打した。
「あ、ごめん。今のは不意討ち!ボマイェしちゃった!あ~!鼻血!!大丈夫……?」
いや、ここまでは事故。事故だから!
女の子は物凄い顔で私に襲いかかって来た。
「ぎゃ~!」
どうしよう…………どうしよう…………めっちゃ怖い!!聡、どうしよう!私どうしたらいい…………?




