実況
それは…………修羅場だった。
離れた所で見ていて、声は聞き取れないけど、愛理が言うには修羅場らしい。
「あ、今のこけし!?」
「は?こけし?」
「技の名前。」
声が聞こえないと、どうゆう状況か全然わからない。
「はあ?今の技だと思ってやってないでしょ?あれ、女の方が抱きつこうとしてたんだよ?あ、今度は顔に触ろうとしてる。」
「出た~!地獄突き!」
「だから、たまたまでしょ?たまたまに名前つけるのやめて!」
「え~!」
だってなんかもう…………つまんないし。
「ミア、あんたさ、彼氏とメンヘラの修羅場を実況するって、どんな心境?」
「別に実況してないよ?実況ってもっと、精神異常のプリンセス、メンヘラ女~!対するは、孤高のマゾヒスト、変態王子~!とかそうゆう…………」
愛理が後ろ後ろと指を指していた。後ろを振り向くと……
「あ…………。」
後ろに、聡と女の子が立っていた。
「その入場コール?失礼だよね?」
「ひぃいいいいい!!」
ヤベッ!バレた!
い、いけない!ここは彼女らしく…………
「聡…………そちら、どなた?」
私は格好つけて、さらっと髪を耳にかけながら言った。
「えーと、こちら…………」
「聡君の恋人……?かな?」
え?変人の間違いだろ?あ、いけない。顔に出ちゃいそう。
「聡君、こちらは……?」
この人凄い衣装着てる……。ビラビラし過ぎじゃない?睫毛重そぉ…………一体何歳なんだろう……。
「学校の友達だよ……。」
あ…………友達…………。仕方がないよね…………精神的に不安定な人に彼女ですとは言えないよね……。
「もう行こう!愛理!」
何だか堪らなくなって、私は愛理の腕を掴んでその場から逃げた。こんな二人のやり取り聞いて、こっちまで嫌な気持ちになる事ないよね。しばらく歩いて、人気のない公園まで来た。
「ここまでくれば大丈夫だよね……」
ふと、隣を見ると…………愛理?
じゃない!!
間違えて…………メンヘラの方…………連れて来ちゃった!!あわわわわわ…………!!




