覚悟はない
とうとう夏休みも終わりに差し掛かっていた。私は聡と、木本家のリビングで一緒に宿題をしていた。
「聡はいいよね~運動も勉強もできて。気配りもできる。」
まぁ、その気配りもう少し発揮して欲しいけど……。
「努力したからね。小学生の頃、好きな子が僕の事、王子様みたいだね。王子様って好きだなって言うから、王子様になろうと決心したんだ。」
「へぇ~!そうなんだ~!」
「…………。」
え?どうした?何故黙る?
「…………何でもない。それが、今になって王子様は薄ら寒いって言われるんだから…………やってられないよ……。」
「仕方がないよ、人は千差万別。まぁ、私も別に王子様な感じがイヤって訳じゃないんだよ?ただね、自分にまだ覚悟がないんだ。」
「…………覚悟?」
そう、何を犠牲にしても、聡といたい!という覚悟はない。
「聡を…………独り占めする覚悟。自分のものにする、代償を支払う覚悟が……まだない。」
「じゃあ、その覚悟が決まったら教えて。」
「は?どうして?」
聡は小悪魔スマイルで言った。
「そうしたら、遠慮しないで落としにかかれるから。」
いやいや、私…………もう既に落とされてますから。
「あ、学校では付き合ってる事は内緒ね。愛理以外には誰にも言わないで。」
「ええ~!どうして?」
「女子トイレでシメられるから。」
以前は話しかけた所を見つかっただけで注意を受けた。
「じゃあ…………僕がずっと側にいるよ!側にいて守るから!」
「…………女子トイレまで?」
「フロア中の女子全員の承諾を取って、一緒に入るよ!」
ちょっと聡!天然か!?こいつ、天然のボケなのか!?
「ちょっと待って!それおかしーでしょ!?」
聡なら普通に承諾されそうだけど!いや、だからって聡の事、変態にしたい訳じゃないよ!
「あーあ、夏休みが終わらなきゃいいのにね。ずっと、夏休みならいいのに。」
私は頭私抱えた。ただでさえ宿題の山に苦しんでるのに…………新学期が思いやられる……。




